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第35話:【夏休み中編】学園の怪談・肝試しを「ハリウッド級ホラー映画の撮影現場(リアルデスゲーム)」にシフトチェンジしてみた




「――で? 昼間は高波レベルメガ津波で海から吹き飛ばされた挙句、夜は夜で『夏の風物詩だから』って理由で真夜中の校舎に呼び出されたわけですかぁ……」



頭の包帯の上に今度は小さな湿布を貼り、手にショボいペンライトを持った不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、暗闇に包まれた神魔統合学園の旧校舎前で、生気を失った目で呟いていた。


時刻は深夜零時。


街灯もなく、静まり返った木造の旧校舎は、いかにも「何かが出そう」な不気味なオーラを放っている。


昼間の大津波プール配信の余波により、チャンネル登録者数は驚異の4,000万人を突破。


コメント欄には、真夜中の恐怖配信を心待ちにする数千万人のリスナーたちが集結していた。



▶:『夜の部キターーー!』


▶:『夏の定番・真夜中の肝試し回!』


▶:『りーくんの腰が引けてて草』


▶:『セレスティアちゃんとゼノスくん、闇と同化してて怖いんだがww』



闇の中から、カサカサと怪しい音を立てて現れたのは、これまた審判服から一転して「黒いフードと怪しいお札」を身に纏ったセレスティアとゼノスだった。



「ふふふ……ろいで様、旧校舎内に潜む古の怨念や悪霊どもの除霊……ではなく『恐怖度判定の罠』の設置、すべて完了いたしましたわ!」



「今回のルールは簡単! 旧校舎の最奥にある音楽室へ到達し、置いてある『ろいで様お手製アクスタ』を持ち帰るのみ! ただし、途中で恐怖のあまり失神した者は『一生霊媒体質バグ』が付与されます!」



「ルールがもう呪いそのものじゃないか!! なんで肝試しで人生狂わされなきゃいけないんだよ!!」



リデーレが絶叫するが、狂信者モデレーターふたりは「ろいで様のためなら、己の精神など粉砕されても本望!」と嬉々として暗闇へ消えていった。


当のろいではというと、いつものダボダボの萌え袖パーカーのフードを深く被り、198円のスリッパを「キュッ……キュッ……」と鳴らしながら、懐中電灯の光で自分の下顎を照らして「うめき声の真似」をしていた。



「んー、うめき声出してみたけど、なんかこの旧校舎のオバケたち、地味で怖くないんだよね」



「地味でいいんだよ! 肝試しなんて理科室の人間骨格模型が動いたり、音楽室のベートーベンが睨んでくるくらいで十分心臓止まるんだから!」



「大丈夫。UI書き換えて、ハリウッド映画レベルの極上ホラー体験にプロデュースしとくから」



「だからお願いだから普通にビビらせてくれよぉぉぉーーッ!!」



リデーレの哀号を完全無視し、ろいではスマホの画面を軽やかにスワイプ。空中に浮かぶ【神権バグUI】をタップした。


瞬間――。


旧校舎全体が激しいノイズと赤黒いグリッチ光に包まれ、空間そのものが異界へと書き換えられた。



【神権:神回ゴッド・ストリーム】を発動。



私の視界が激しいデータグリッチとともに、古い木造校舎を「ハリウッド級ホラー映画の撮影現場(演出が本気で殺しに来るタイプ)」へとリライトしていく。



【オブジェクト:神魔統合学園・旧校舎】



【実行アクション:生徒たちが夜の校舎で肝試しを楽しむ】



【変更後実行アクション:「映画のNG=即死レベルの超大作ホラー撮影現場(視聴者のスパチャでジャンプスケアと怪異が増殖)」に強制ブラウザ変換】



ズズズズ……と地鳴りが轟き、廊下の木目からは血のような赤ペンキが滲み出し、天井からは不気味なカチンコを持った「巨大なノイズ怪獣」が降りてきた。


さらに上空のホログラム画面には、『監督:ろいで/総製作費:視聴者のスパチャ/NG回数:0回』という文字が血文字で浮かび上がる。



▶:『【神回確約】急にサバイバルホラーとハリウッド映画が混ざったwww』


▶:『スパチャ投げたらCGじゃなくて本物の怪異が沸く仕組み草』


▶:『りーくん、後ろ! 後ろ見ろ!!』


▶:『魔王(公式)(赤スパ:1,00,000$): ほう。久しぶりに来てみれば中々に面白いことをしているな。我が新王ろいで


魔王だけでなくチャット欄のリスナーたちがシステムを察知し、即座に赤スパ(高額スパチャ)を連投した。



チャリーン! チャリーン! チャリーン!



『【赤スパ連投】スパチャ総額が20,000,000円を突破! 特殊効果「チェーンソーを持った身長3メートルの巨大怨霊」が廊下に召喚されます!』



「――は?」



リデーレが振り返った瞬間、ギコギコギコ!! と爆音を立ててエンジンが回転する巨大なチェーンソーを掲げた、漆黒の巨大怨霊が廊下の奥から猛スピードでダッシュしてきた。



「ギャアアアアアアッ!? 演出のレベルが『オカルト』じゃなくて『クリーチャーホラー』になっちゃってるじゃんかぁぁぁーーッ!!これ絶対魔王が戦犯だろぉぉおッ!」



「あ、みんなスパチャありがとー。あ!魔王様も久しぶり!みんな赤スパありがとー!りーくん、NG出したら撮り直しだから、ちゃんとリアクション取ってね」



「命がかかってるときにリアクション芸求めんなぁぁぁーーッ!!」



リデーレは悲鳴を上げながら、猛追してくるチェーンソー怨霊から逃げるべく、バグった廊下を全速力でダッシュした。


しかし、旧校舎のトラップはそれだけでは終わらない。


ろいでがスマホを軽くタップすると、廊下の壁から次々と「怪談の具現化」が飛び出してきた。



【神権バグ発動:音楽室の肖像画が全員「実写のヘビメタバンド」になって爆音演奏を開始します】



ズドジャン!! ギギャギャギャ――ン!!



「うるさーーーいッ!? 肖像画が重低音のメタル演奏し始めたんだけど!? 恐怖どこ行ったんだよ!!」



「わぁ、ノリノリで楽しそうだね」



ろいでは浮遊するカメラ付きドローンを引き連れ、爆音のヘヴィメタルが響き渡る廊下を、ポテトチップスをパリパリとつまみながらのんびりと歩いていた。


その足元では、なぜか先ほどのリデーレを追っていたチェーンソー怨霊が、ろいでの萌え袖から零れ落ちたポテトチップスの袋に気づき、「あ、これ噂の期間限定の味……うまっ……」と、完全に毒気を抜かれて壁際でお座りしてポテチを貪り始めていた。



「怨霊まで手懐けるなよ!! なんでこの学園の怪異はみんな胃袋掴まれたら即落ちすんだよ!!」



「さすがろいで様、怪異の調教手腕も神の領域ですわ!」



「ろいで映画監督の指揮のもと、最高のホラー映像が撮れております!」



セレスティアとゼノスがどこからか持ってきた映画用カメラを構え、チェーンソー怨霊と戯れるろいでと、その後ろで音楽室のへビメタ肖像画に追われて発狂しているリデーレの姿をバッチリとフルHDで収めている。



▶:『りーくんの悲鳴がへビメタのシャウトとハモってて草』


▶:『これもうホラーじゃなくてギャグコメディ映画だろww』



チャット欄は本日最高潮の盛り上がりを見せ、登録者数はついにの4,500万人の大台を突破。画面中が「祝・4,500万人!」のスタンプと莫大なスパチャで埋め尽くされた。


目的地である最奥の音楽室に辿り着いた頃には、リデーレはへビメタ肖像画と怪異たちに揉みくちゃにされ、自慢の派手な髪の毛を逆立てた状態で床にへたり込んでいた。



「もう……もう嫌だ……僕、神様なのに……なんで毎度毎度こんな目に……」



ろいでは、音楽室のピアノの上に置いてあった「自分のちびキャラアクスタ」をちょこんと拾い上げると、カメラに向かってピースサインを作った。



「というわけで、夏休み肝試しホラー映画撮影、無事にクランクアップでーす。みんな、スパチャと4,500万人登録ありがとね。それじゃあ――おつろいでー!」



パァン! と、怪談の怨霊たちが一斉にクラッカーを鳴らし、バグった旧校舎にド派手な「【神回クランクアップ】」のピンク文字が打ち上げられた。


リデーレの「誰か僕の精神を供養してくれーーッ!」という絶叫を背景に、神魔学園の夜は賑やかに更けていったのだった。



――次回、夏休み編恐怖の枕投げ!



(つづく)

本日、【21:00〜】33話〜38話を連続公開します!

【このあとすぐ】36話を【21:35】頃に投稿します!

誰か優しい方!一人でもいいのでこの作品に

評価やブクマをつけてくれたら嬉しいです!

モチベが急降下して常に涙目です……

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