第34話:【夏休み突入】神魔学園の海を「巨大プール&超高額スパチャビーチ」に変形させてみた
「――で、宇宙からの大気圏再突入でグラウンドにクレーターを作った翌日から、待望の『夏休み』ですかぁ……」
頭に痛々しい包帯を巻き、まだ微かに摩擦熱の焦げ臭さを漂わせながら、不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、眩しい太陽が照りつける学園のプライベートビーチで深い深ーーい溜息をついていた。
前回の「宇宙規模デスデス大運動会」で全校生徒を宇宙に打ち上げ、チャンネル登録者数は怒涛の3,900万人を突破。
地球に激突して瀕死の重傷を負ったリデーレだったが、神様の超回復力(と、ろいでがスパチャの投げ銭で発動させた【ギフティング・ヒール】のエラー回復)によって、なんとか一命を取り留めていた。
そして今日から、神魔統合学園は待望の夏休み期間へと突入した。
目の前に広がるのは、本来であれば学園が所有する静寂で厳かなプライベートビーチ……のはずだった。
▶:『夏休み編キターーー!』
▶:『水着回!? ろいでちゃんの萌え袖水着が見れるのか!?』
▶:『りーくん、頭の包帯痛そうで草』
▶:『セレスティアちゃんとゼノスくん、当然のようにビーチにもついてきてて草』
スマホのチャット欄には、夏休みという絶好のイベントに大はしゃぎする数千万人のリスナーたちのコメントが、怒涛の勢いで押し寄せている。
波打ち際では、モデレーターの腕章を付けたゼノスとセレスティアが、水着の上に監視員用のビブスを着用し、ビーチパラソルの横でビシッと直立不動の姿勢をとっていた。
「ろいで様! ビーチ周辺の海域の危険生物(巨大クラーケンや深海悪魔)は、すでに我々の手で全滅させ、生簀へ隔離いたしましたわ!」
「ろいで様が快適に海を満喫できるよう、砂浜の温度も魔法で常に24度に保たれております! どうぞ心ゆくまでお寛ぎください!」
「君たちたち、すっかり優秀なビーチのライフセーバーになり切ってるね……」
リデーレが外套……ではなく、派手なアロハシャツの首元をパタパタと扇ぎながら冷や汗を流す。
生徒会会長と元魔界生徒会長候補が、今やろいでの「専属ビーチスタッフ」として完璧な仕事をしすぎている。
当のろいではというと、いつものダボダボの萌え袖パーカー……の「夏仕様(やや薄手・萌え袖はキープ)」を羽織り、足元は変わらず198円のスリッパで砂浜を踏みしめていた。
「んー、海は綺麗でいいんだけど、普通の海水浴場ってなんか地味だよね」
「地味でいいんだよ! 海なんて波と戯れてスイカ割りしてジュース飲んでればそれで十分なんだよ!」
「大丈夫。UIアップデートして、もっとバグったテーマパークっぽくしとくから」
「だから普通に遊ばせろって言ってるだろ!!」
リデーレの絶叫をBGMに、ろいではスマホの画面をシュッとスワイプし、空中にポップアップさせた【神権バグUI】を小気味よくタップした。
瞬間――。
カンカン照りの太陽の下、眩いネオンピンクの光の粒子が海全体を覆い尽くし、世界が一瞬で書き換えられた。
【神権:神回】を発動。
私の視界が激しいデータグリッチとともに、静かなプライベートビーチを「巨大ウォーターワールド&スパチャで波が起きるテーマパーク」へとリライトしていく。
【オブジェクト:学園プライベートビーチ】
【実行アクション:生徒たちが海水浴を楽しむための静かな海域】
【変更後実行アクション:「リスナーのスパチャ金額に応じて津波や流れるプールが発生する、超体験型ウォーターテーマパーク」に強制ブラウザ変換】
「――なっ……!? 海が……海が巨大な流れるプールに変形していく……!?」
リデーレが目を見開く。
先ほどまで静かだった波打ち際は、一瞬にして光るネオンの壁で囲まれた巨大なサークルプールへと姿を変え、中央には超ド級の巨大ウォータースライダーが出現した。
さらに、上空には巨大なホログラム画面が浮かび上がり、『現在のスパチャ総額:高波レベル1(平和)』という文字が怪しく点灯している。
▶:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』
▶:『スパチャで波の高さが変わる神システム草』
▶:『投げ銭で神様を流せるってマ!?』
▶:『スパチャ10万投げたら津波起きるんか!?』
チャット欄のリスナーたちが、システムを理解した瞬間に大歓喜。
一瞬にして画面を埋め尽くす赤スパ(最高額スパチャ)の嵐が吹き荒れた。
チャリーン! チャリーン! チャリーン!
『【赤スパ連投】スパチャ総額が10,000,000円を突破しました! 高波レベルが「メガツナミ(津波)」に昇格します!』
「――は?」
リデーレが間抜けな声を上げた直後、海の彼方からマンション10階分に相当するネオンピンクの巨大な大津波が、「ゴォォォォォォ―――ッ!!」と音を立てて押し寄せてきた。
「ギャアアアアアアッ!? スパチャで本物の津波が来ちゃったじゃんかぁぁぁーーッ!!」
「あ、みんなスパチャありがとー。りーくん、波乗り(サーフィン)の準備してね」
「サーフィンで乗り切れるレベルの波じゃないだろこれぇぇぇーーッ!!」
ドカーン! と、巨大なピンクの津波がビーチ全体を飲み込み、浮き輪にしがみついていたリデーレと全校生徒たちは、一瞬で上空数百メートルの彼方へと巻き上げられた。
しかし、ろいでの【ギフティング・ヒール】と【神聖バリア】のおかげで誰一人ダメージは受けず、単に「超絶刺激的なジェットコースタープール」として大空中をダイナミックに浮遊している状態である。
「きゃあああああ! 楽しいですろいで様ー!」
「ろいで様のお恵みの波……最高にハイになりますわ!」
ゼノスとセレスティアは、大津波の頂点で優雅に浮き輪に乗ってサイリウムを振っている。完全に頭のネジが飛び散っていた。
一方、ろいでは特製の「浮遊ビーチチェア」の上で優雅にアイスをかじりながら、自撮り棒を持ったスマホに向かってアイスクリームを頬張った。
「えー、夏休み初日は、リスナーのスパチャで作る大津波プールからお届けしてまーす。みんな、もっと波高くしたい?」
▶:『スパチャ連撃追加ぁぁぁ!!』
▶:『りーくんを宇宙まで波で押し上げろ!』
▶:『チャンネル登録者数4,000万人突破!ペースぐんぐん上がってて草』
チャット欄の熱狂は止まることを知らず、莫大な投げ銭によって海の波動はさらに激しさを増していく。
水しぶきと爆音、そしてリデーレの「助けてくれぇぇぇーーッ!」という絶叫が夏空に高く響き渡る中、ろいでちゃんのカオスすぎる夏休みの1日目は、最高の盛り上がりとともにスタートを切ったのだった。
――次回、夏休み編第2弾!「学園の怪談・肝試しをホラー映画の撮影現場にしてみた件」へ続く!
(つづく)
本日、【21:00〜】33話〜38話を連続公開します!
【このあとすぐ】35話を【21:25】頃に投稿します!
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モチベが急降下して常に涙目です……




