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第31話:【地下深層】ネオンの迷宮でグルメフェスを開催してみた件




「きゃああああああっ!! 落ちる! 地球の裏側まで落ちるぅぅぅ――ッ!!!」



ネオンピンクに輝くレールを狂ったようなスピードで爆走する絶叫マシンの中で、不憫な神様(一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、両手で頭を抱えながら魂の抜けたような悲鳴を上げていた。



ジェットコースターの速さは軽くマッハ3を超えており、周囲の景色はもはやただの光の残像と化している。



▶:『りーくんの顔芸が毎秒更新されてて草』


▶:『このアトラクション、マッハがエグすぎて普通に死人が出るやつだろ』


▶:『ゼノスくんとセレスティアちゃんがサイリウム振って応援してて草』




スマホのチャット欄には、マッハ3で奈落の底へ急降下するリデーレを面白がるコメントが、秒間数万件のスピードで滝のように流れていた。


コースターの後部座席では、モデレーターの腕章をピシッと付けたゼノスとセレスティアが、恐怖で涙を流すリデーレを完全に無視し、眩いピンクのサイリウムを両手に持って「ろいで様、最高ーーーっ!!」とアイドル現場さながらのコールを叫んでいる。


当のろいでは、ダボダボの萌え袖パーカーのポケットに片手を突っ込み、もう片方の手で自撮り棒を持ったスマホを余裕の笑みで操作しながら、隣の席で涼しい顔をしていた。



「んー、やっぱり絶叫マシンはスピード感が足りないね。ちょっとレールのUI、マッハ5に書き換えとこ」



「これ以上スピード上げたら僕の精神が物理的に肉体からログアウトするからマジでやめて!! 神様としての尊厳がマッハで消えていくんだけど!!」



「大丈夫、りーくんの尊厳は最初からノーガードだよ」



「ひどい!!」



ろいでがスマホの画面をシュッとスワイプし、空中にポップアップさせた【神権バグUI】を軽やかにタップした瞬間、コースターは文字通りの「光速」へと突入した。


パァン、と耳をつんざくような電子音とともに、ジェットコースターのレールは地下迷宮の最深部――伝説の「神魔封印の間」へとダイレクトに突き刺さる。


【神権:神回ゴッド・ストリーム】を発動。



私の視界がデジタルノイズの激しい明滅とともに、学園地下の最深部を「巨大フードコート&ナイトクラブ」へと強制リライトしていく。



【オブジェクト:神魔封印の間(危険度SSS・古代の呪詛が渦巻く魔王の寝所)】



【実行アクション:侵入者の肉体を呪い殺し、永遠の苦しみを与える】



【変更後実行アクション:「24時間営業の爆音EDMフェス&食べ放題グルメ屋台街」に強制変換】



轟音とともにコースターが急停止し、重力の縛りから解放されたリデーレは、床に盛大にずっこけながらぐったりとへたり込んだ。



「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……ここは……どこだ……?」



リデーレが自慢の派手髪を整えながら顔を上げると、そこには先ほどまでの禍々しい石造りの祭壇の面影は微塵もなく、ド派手なレーザービームが飛び交い、ミラーボールが眩い光を放つ巨大なナイトクラブが広がっていた。


中央のDJブースでは、かつて世界を滅ぼしかけたはずの古代の強力な海獣王たちが、なぜか光るヘッドホンを装着し、ノリノリでDJをこなしている。


そしてその周囲には、学園の全校生徒(先日の居酒屋アンケートで脳を焼き尽くされた狂信者たち)が、ペンライトを片手に「フッフー!」と完璧なオタ芸を炸裂させていた。


さらに、その一角では先ほどろいでに「イカ焼きの屋台の店長」に任命されたタコ足の海獣王が、香ばしい醤油の匂いを漂わせながら「いか焼きいかがっすかぁーー! ろいで様のチャンネル登録もよろしくねーー!」と威勢のいい声を上げている。



▶:『うおおおおお! 完全にクラブと夏祭りが融合してる!』


▶:『海獣王のDJスキルが高すぎて草』


▶:『タコ足海獣王のイカ焼き、普通に美味そうなんだけど』


▶:『りーくん、ここでテキーラ一気飲みな』



スマホのチャット欄は、このあまりにもカオスすぎる地下深層の光景に、興奮のボルテージが最高潮に達していた。


現在のチャンネル登録者数は30,450,111人を突破し、『神公認ライバー(Lv.6)』にランクアップしたろいでの頭上に、小さな天使の輪のようなエラーリングがピコピコと点滅している。



「ろいで様! 丁度いいところに! このフードコートのVIP席を確保いたしましたわ!」



セレスティアが完璧な笑顔で、フリル付きのVIPソファ席へとろいでを案内する。


ゼノスもまた、黄金に輝く特製メニュー表を両手で差し出した。



「ろいで様、本日の地下深層グルメフェスでは、先ほどのタコ足海獣王のイカ焼きのほか、地獄のマグマで煮込んだ『地獄の激辛地産地消麻婆豆腐』や、飲むとステータスがバグる『エリクサーソーダ』を取り揃えております!」



「お、麻婆豆腐いいね。それとエリクサーソーダ大盛りで」



「かしこまりました! すぐにご用意させますわ!」



「ちょっと待って君たち! ここは学園の地下だよ! なんで海獣王を巻き込んで大々的に屋台を開いてんの! ていうか生徒たち、授業はどうした授業は!」



「りーくん、うるさい。口チャックの代わりに、この『激辛地獄麻婆豆腐』を一口あげるね」



「いらない! 絶対に常人の胃袋を破壊する色してるから絶対に口に入れたくない!」



ろいでがスプーンにたっぷりとすくったマグマ色の麻婆豆腐を、不憫な神様の口元へと容赦なくグイッと差し出す。


「んーーっ!」と必死に顔を背けるリデーレと、それをニコニコしながら追い回すろいでのシュールな攻防が、カメラの特等席でしっかりと数千万人の視聴者に生配信されていた。



▶:『りーくん、いいから阿修羅の如く食え』


▶:『これもう完全に人気バラエティ番組の罰ゲームコーナーじゃん』


▶:『ゼノスくん、りーくんの口に無理やり突っ込んでやれ』



視聴者からの容赦ないスパチャとコメントが、画面を埋め尽くすように飛び交う。


その時だった。


ナイトクラブの天井を突き破るかのような凄まじい地鳴りとともに、学園の地下最深部を揺るがす強力な魔力が突如として吹き荒れた。



『――ククク……我の眠りを妨げ、下劣な遊園地へと変えた愚か者どもは、どこのどいつだ……?』

重苦しい声とともに、フロアの空気が一瞬で凍りつく。



ネオンの光がパチパチと明滅し、DJブースの海獣王たちが「ひっ……! きた……!」と青ざめて震え出した。


そこにあらわれたのは、学園の地下迷宮の最深部に数千年間封印されていたという、本物の『初代学園長・絶望の魔神ルシファー(本物)』の姿だった。


漆黒の翼を広げ、全身から冷徹な殺気を放つその魔神は、眼前のカオスな光景を見て、あまりの衝撃に絶句していた。



「なっ……なんだここは……! 我の厳粛なる封印の間が……なぜミラーボールが回り、なぜ人間どもが踊り狂っている……!?」



魔神ルシファーが怒りに震えながら巨大な魔力を解放し、周囲のテーブルを吹き飛ばす。



ガチの強敵の登場に、さすがのゼノスとセレスティアも「……っ! 桁違いの魔力です……! 今までの魔獣とは格が違う……!」と冷や汗を流した。


しかし、当のろいでは、スマホの画面をチラッと見て、面倒くさそうにため息をついた。



「あーあ、せっかくのライブ配信なのに、なんか空気読めない中二病のコスプレおじさんが入ってきたね」



「コスプレおじさん言うな! 学園の歴史の教科書に載ってるガチの伝説の魔神だぞ!!」



「よし、ちょっとコメント欄のアンケート機能で、このおじさんの処遇決めよっか」



ろいでちゃんが指先で軽やかにUIを操作すると、全校生徒および数千万人の視聴者の視界に、強制的なポップアップアンケートが突如として出現した。



【緊急アンケート:地下深層に乱入してきた中二病の魔神(本物)をどうする?】



① そのまま追い出してお留守番させる


② フードコートの「激辛麻婆豆腐の宣伝大使(客引き)」に任命する


③ ろいでちゃんのチャンネルの専属編集スタッフ(社畜)にする



▶:『迷うまでもなく③一択だろwww』


▶:『伝説の魔神を編集の社畜にするの鬼畜すぎて草』


▶:『徹夜で動画編集させようぜ! パソコン貸してやれ!』



チャット欄の投票率は、開始わずか0.1秒で【③(専属編集スタッフ)】が99.9%を叩き出した。



瞬間――。



【ユーザー投票の結果により、オブジェクト「魔神ルシファー」のジョブが「社畜・動画編集者(Lv.1)」に強制転職されました。】



「なっ……!? なんだこの不可思議な拘束力は……!? 我の体から魔力が抜けて……代わりに動画編集ツールの操作方法が脳内に直接流れ込んでくる……ッ!?」



魔神ルシファーは絶叫しながら膝をつき、背中に背負っていた漆黒の翼がみるみるうちにシュンと縮こまり、代わりに手にはゲーミングPCとエナジードリンクの缶が握らされた。



「ねぇ、新入り。今日の配信の切り抜き動画、夜の12時までに3本作っといてね。サムネは派手なやつで頼むわ」



「ば、馬鹿な……我は魔神ぞ……! なぜ我が生徒を恐怖に陥れる存在から、徹夜必至のブラック企業の底辺編集マンに……!?」



「文句言うなら次の動画のカット数増やすよ?」



「……かしこまりました。極上のサムネを作らせていただきます……!」



伝説の魔神ルシファーは、完全に精神を屈服させられ、涙を流しながらその場で猛烈なスピードで動画編集を始めたのだった。



「……すごすぎてもはや何も言えない……」



リデーレはぐったりとソファに倒れ込み、遠い目をしながら天井のミラーボールを見上げた。



▶:『伝説の魔神すら社畜にするろいで様パネェ!』


▶:『最高に頭の悪い神回ありがとう!』



視聴者の熱狂は止まることを知らず、学園の地下迷宮は、世界で最もイカれた一大エンターテインメント空間として、今日も盛大にバグり続けているのだった。



――狂乱の地下ダンジョン配信、これにて大団円!(?)



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】32話を【14:55】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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