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第30話:【地下ダンジョン突入】学園の地下迷宮を「観光アトラクション」に改築してみた件




「――で、全校生徒を巻き込んだ居酒屋アンケートテストの次は、よりによって『学園地下の禁断ダンジョン探索実習』かぁ……」



天井の穴から降り注ぐ微量の雨を、ろいでが適当に張った謎のモザイクバグで弾きつつ、不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、これから突入するおどろおどろしい石造りの大門の前で、深い深ーーい溜息をついていた。



筆記テストをリスナーアンケートで無理やり「全員合格(④ろいでちゃんの残り汁一択)」に書き換え、鬼の教頭すらも狂信者に仕立て上げた前回の事件から数日。


平穏な学校生活など最初から存在しない神魔統合学園において、次に待ち受けていたのは、学園の地下深くに広がる魔物だらけの危険地帯『封印の魔導迷宮ダンジョン』での実地訓練であった。

本来ここは、歴戦の勇者や選ばれしエリート生徒しか足を踏み入れてはならない、一歩間違えれば即死不可避のガチなデスゾーンである。


しかし、現在の学園はすでに「ろいでの個人チャンネルの巨大スタジオ」と化している。



▶:『おっ、地下ダンジョン回キターーー!』


▶:『魔王(公式):我が新王ろいでが初見殺しのトラップをどう対処するのか見ものだな』


▶:『りーくん、今回はちゃんと生還できるの?』


▶:『ゼノスくん&セレスティアちゃんのモデレーターコンビも同行するのか?』



スマホのチャット欄には、ダンジョン探索という定番のワクワクイベントに興奮する数千万人の野次馬たちのコメントが、滝のように流れ落ちていた。


そんなダンジョンの入口で、モデレーターの腕章をきっちりと装着したセレスティアとゼノスが、それぞれの武器を手にピシッと直立不動で控えていた。



「ろいで様! この先のダンジョンには、太古の凶悪な魔獣や致死性の毒沼が待ち受けておりますわ! 私どもが先陣を切って、すべての危険を排除してまいります!」



「そうです! ろいで様の一歩たりとも汚らせぬよう、この迷宮ごと焼き払う覚悟で挑みます!」



「いや、君たち、すっかり忠犬……じゃなかった、優秀なモデレーターになりきってる……」



リデーレが冷や汗を流しながら二人の圧に一歩後ずさる。

生徒会会長と魔界生徒会長候補が、今やすっかり「ろいで推しの過激派モデレーター」にジョブチェンジしているこの光景、どう考えても教育現場として完全にバグっている。


当のろいでは、ダボダボの萌え袖パーカーのポケットに両手を突っ込み、足元の198円のビニールスリッパを「キュッ」と鳴らしながら、ダンジョンの暗い入り口をのぞき込んだ。



「んー、なんか暗くてジメジメしてて、アトラクションとしては全然映えないねここ」



「アトラクションじゃないよ! 海獣王の封印が眠るガチの危険地帯なの! なんでテーマパークみたいな感想が出てくるんだよ!」



「大丈夫。UIアップデートして、ちょっと観光地っぽくしとくから」



ろいでがスマホの画面をシュッとスワイプし、空中にポップアップさせた【神権バグUI】を軽やかに操作した。


瞬間――。


ダンジョン全体を包み込んでいたおどろおどろしい呪いの気配が、パァン、と軽い電子音とともに書き換えられた。



【神権:神回ゴッド・ストリーム】を発動。



私の視界がデジタルノイズでピンク色に明滅し、学園地下の「封印の魔導迷宮」が瞬時に別のオブジェクトへ変換されていく。



【オブジェクト:封印の魔導迷宮(危険度S)】



【実行アクション:侵入者の精神を蝕み、凶悪な魔獣で命を奪う】



【変更後実行アクション:「ド派手なネオンが輝くアミューズメントパーク(お化け屋敷・ジェットコースター完備)」に強制ブラウザ変換】



「――なっ……!? ダンジョンの気配が一瞬で消え去った……だと……!?」



ゼノスが驚愕の声を上げ、セレスティアも手に持っていたレイピアを取り落としそうになる。


それもそのはず、先ほどまでドス黒い瘴気を放っていた地下迷宮の入口は、眩いネオンサインがチカチカと点滅し、なぜか「Welcome to ろいでランド!」と書かれた巨大な電光掲示板がお出迎えするテーマパークのエントランスへと変貌を遂げていたのだから。


中からは、ゴシック調のホラー音楽ではなく、ノリノリのEDMと「キャー!」という楽しげな絶叫(と、魔物の悲鳴)が聞こえてくる。



▶:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


▶:『ダンジョンが秒でネオンテキーラランドになってて草』


▶:『モンスターたちもアトラクションのスタッフに改造されてそう』


▶:『りーくん、チケット代いくら?』



スマホのチャット欄は、この予想の斜め上を行く大改築に大歓声を上げていた。



「ちょ、ろいでちゃん! ダンジョンを勝手にレジャー施設にリノベーションするな! ここは学園の地下の禁足地だぞ! 中にいる古代の海獣王とかどうすんだよ!」



「あ、中にいたタコ足の化け物? なんかイカ焼きの屋台の店長に任命しといたから大丈夫」



「勝手に海獣王を屋台の店員にするな!!」



リデーレが絶叫していると、ネオンに彩られたダンジョンのゲートから、かつて恐れられた伝説の地下海獣王(タコ足姿の凶悪な魔獣)が、なぜか「いらっしゃいませーー!」とハチマキを巻いた姿で串焼きを持ってトボトボと歩いて出てきた。



「くっ……ろいで様の配信を盛り上げるため……この私が美味いイカ焼きを焼くしか……!」



「うわっ……海獣王まで完全に教育されてる……っ!僕の歌姫マイ・ディーバ怖すぎる……」



ゼノスとセレスティアは、「さすがろいで様、海獣王の人材活用まで完璧です!」と目をハートにして拍手を送っている。


もはやツッコミを入れる気力すらなかった。



「ほら、りーくんも立ってないで、あそこのジェットコースター乗るよ。最前列ね」



「やだ! 絶対に生きて帰れない絶叫マシンみたいな見た目してるから乗らない!」



「拒否権はないですわ、リデーレ様。ろいで様のご命令には絶対服従ですのよ!」



「セレスティアまで笑顔で怖いこと言うな!!」



ゼノスとセレスティアに両腕をがっしりと掴まれたリデーレは、「助けてくれーーっ!」という悲痛な叫び声を上げながら、ネオンピンクのジェットコースターへと強制的に放り込まれた。


ろいでは、スマホを自分に向けて、目が死にかけているリデーレを華麗にスルーし、明るくカメラに向かって微笑みかける。



「えー、というわけで、今日の配信は学園地下のネオンダンジョンからお届けしまーす。みんな、スパチャの準備はいい?」



▶:『いけー! 絶叫コースター実況待機!』


▶:『りーくんの顔芸コレクション増やすな』


▶:『チャンネル登録者数3,000万人突破記念の神回確定やんけ!』



チャット欄の【視聴者熱狂度(MP)】は最高潮に達し、学園の地下深くは、世界中のネット民が熱狂する最高のライブステージへと完全に染め上げられたのだった。



――狂乱のダンジョン配信ツアー、いよいよ発車オーライ!



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】31話を【14:50】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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