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第28話:【大天使リベンジ】大天使を狂信者にしてみた




「昨日の今日で、我が学園のシステムをここまでメチャクチャにしておいて、無事で済むと思わないでくださいまし! 私がこの手で、貴方のそのふざけた配信を強制終了させてあげますわ!」



ネオンピンクの光が明滅するパリピ教室の中央。


生徒会会長セレスティアは、背中の純白の翼を怒りで大きく広げ、手にした黄金のレイピアから眩い神聖光を放ちながら、ろいでへと鋭く切っ先を突きつけた。


その後方では、学園の風紀委員を務める天使たちがずらりと並び、厳戒態勢でこの「不審者配信者」の包囲網を敷いている。


昨日の正門前での完全敗北(音量3%ミュート事件)の雪辱を果たさんと、セレスティアの気合は最高潮に達していた。



▶:『おっ、セレスティアちゃんのリベンジマッチキターーー!』


▶:『今度こそ声は出せるのか!?』


▶:『りーくん、観戦用のポップコーンの準備はいいか?』


▶:『ゼノスくん、床掃除の手を止めて応援席にまわってて草』



スマホの画面越しに押し寄せるチャット欄は、すっかりお祭りムード。


チャンネル登録者数3,000万人を誇るろいでの周囲には、淡く光る神聖バリアがふんわりと展開され、セレスティアの放つプレッシャーをまるで蚊の羽音のように弾き返していた。


不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は大量の冷や汗を流して頭を抱える。



「ねぇ、ろいでちゃん……! 相手は学園主席のトップエリートだよ! 流石に今回は本気のガチ戦闘になるんじゃない!? 僕のこの虚弱な物理肉体(パシフィック枠)に流れ弾が当たったら一発で消滅するんだけど!」



「えー? りーくん、そんなに心配しなくても、この鳥肉さん、昨日より顔の赤みがマシになってるから大丈夫」



「どこを見てるんだよ! 怒りで沸点突破して血管キレかけてるよ!!」



リデーレの絶叫の通り、セレスティアの美貌は怒りと羞恥心で真っ赤に染まっていた。


彼女は昨日の屈辱をバネにして、天界の最高秘法である『言霊防壁ことだまぼうへき』を自身に何重にも張り巡らせている。


これさえあれば、あの謎の「音量3%ミュート(音声改変バグ)」すらも防げるはずだ――セレスティアはそう確信していた。



「無駄ですわ! 貴方のそのふざけたチート魔術も、私の展開した言霊防壁の前では無力……! さあ、覚悟なさい、下等人間っ!」



セレスティアがレイピアを振り下ろし、教室全体を揺るがすほどの巨大な光の十字架をろいでに向けて放った。


――その瞬間。


ろいでは、ダボダボの萌え袖パーカーのポケットから片手を出し、スマホの画面をのんびりとスワイプした。



【神権:神回ゴッド・ストリーム】を発動。



私の視界がデジタルノイズでピンク色に明滅し、大天使セレスティアに張り巡らされた『言霊防壁』が瞬時に書き換えられていく。



【オブジェクト:言霊防壁】



【実行アクション:あらゆる精神魔法を無効化する】



【変更後実行アクション:「言霊防壁」をスルーし、チャット欄の直近のコメント100件を直接精神に流し込む】



「は……? なんですの、それ――っ!?」



セレスティアが放った光の十字架は、ろいでの神聖バリアに触れた瞬間、シャボン玉のようにパァンと音を立てて消え去った。


それどころか、セレスティアの脳内に、世界中のネット民から送られてきた大量のチャットコメントが、直接ダイレクトに流し込まれ始めたのだ。



▶:『セレスティアちゃん、顔真っ赤で草』


▶:『ツンデレの教科書みたいなリアクションあざっす!』


▶:『鶏肉さん、昨日の今日でまた負けイベント引いちゃったね』


▶:『スパチャ1万投げたらセレスティアちゃんに土下座してもらえる?』



「ひっ……!? な、なんですかこれ……!? 頭の中に直接……大勢の声が……っ!」



セレスティアは、あまりの情報の洪水と、リスナーたちからの容赦ないイジリ(レスバ)の直撃を受け、その場で頭を抱えてよろめいた。


防壁を張ろうが何をしようが、精神の根幹である「配信のチャット欄」を直接脳内にハッキングされてしまっては、エリートとしてのプライドもクソもあったもんじゃない。



「き、聞いていませんわ……! こんなの戦いではありませんわ! ただの公開処刑ですわよ……っ!」



「あ、耐性低いねこの鶏肉さん。じゃあトドメにこれ押しとこっか」



ろいでがスマホの画面をポチッとタップする。


すると、セレスティアの足元に、先ほどゼノスが使っていたものと同じ【公式信者モデレーター(パシフィック枠)契約書】のホログラムが盛大に展開された。



「え……? なんですの、この光る紙は……?」



「あ、それサインすると、明日から学園の食堂で毎日一番美味しいプリンが食べられる代わりに、私の配信のモデレーターとしてコメントの荒らし削除係をやることになる契約書」



「そんなの絶対にお断りですわ――っ!!」



拒絶しようと叫んだセレスティアだったが、脳内に響く3,000万人分のリスナーたちの「サインしろ」「ハンコ押せ」「プリン食べたいアピール」の圧力が凄まじすぎて、彼女の理性の糸がプツリと音を立てて切れた。



「くっ……! プリン……いえ、ろいで様の配信の秩序を守るためなら……私、モデレーターの席に就かせていただきますわ……っ!!」



パァン! と眩い光が弾け、セレスティアはその場で直立不動の姿勢をとり、美しく優雅な敬礼ポーズをビシッと決めた。


背中の純白の翼が、なぜか嬉しそうにパタパタと小刻みに揺れている。



「「「セレスティア様まで秒で堕ちたァーーッ!?!?」」」



後ろで控えていた風紀委員の天使たちは、学園の誇る二大巨頭(生徒会会長と魔界の次期トップ)が揃いも揃ってろいでの信者(パシフィック枠)に成り下がった光景を目の当たりにし、武器を取り落としてその場に崩れ落ちた。



▶:『セレスティアちゃん、完全陥落おめでとーー!』


▶:『ツンデレから熱狂的モデレーターへの華麗なジョブチェンジ』


▶:『りーくん、これで学園の主要キャラは全員ろいでちゃんの手のひらの上だな』



スマホのチャット欄は、この日一番の歓声と莫大なスパチャの嵐で埋め尽くされた。


【視聴者熱狂度(MP)】は完全にカンストし、ろいでの配信ランクがアップする直前の眩いオーラが教室全体を包み込む。


不憫な神様ことリデーレは遠い目をして天を仰いだ。



「……もうダメだ。この学園、完全にろいでちゃんの個人チャンネルのスタジオに改築されてる。僕の肉体も、いつの間にかレギュラー出演者として固定されちゃってるし……」



「りーくん、そんなネガティブなこと言ってないで、次のステージいこっか。なんか地下に新しいダンジョンあるらしいよ」



「勝手に学園の地下施設を観光地扱いするな!!」



こうして、生徒会会長セレスティアをも巻き込んだ狂乱は、ろいでの圧倒的な無双状態のまま、次なるステージへと突き進んでいくのだった。


――次回、定期テスト&配信ハッキング編へ突入!



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】29話を【14:40】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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