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第27話:【信者化完了】イキり悪魔ゼノス、ろいでの「お掃除係」にジョブチェンジ




「ふ、拭かせていただきます……! ろいで様の下僕として、この床をダイヤモンドより美しく磨き上げてみせます……っ!」



ネオンピンクの光が眩しく明滅するパリピ教室の中央。


先ほどまで「魔王の息子」「次期生徒会長候補」とイキり散らしていたゼノス・フォン・ブラッドレイは、現在進行形で高級なハンカチを握りしめ、床の汚れを涙目でゴシゴシと拭き掃除していた。


その背後では、ゼノスのお供としてやってきたエリート悪魔たちが、泡を吹いて気絶するか、恐怖でブルブルと震えながら蹲っている。



▶:『ゼノスくん、手際の良さが完全にプロのそれ』


▶:『ハンカチの使い方間違えてて草』


▶:『イキり悪魔改め、専属清掃員ゼノスくん』


▶:『ろいでちゃん、新しいペットの飼いならし上手すぎんか?』



スマホの画面越しに押し寄せるチャット欄のコメントは、もはやゼノスの変わり果てた姿に大爆笑の嵐を送っていた。



現在のチャンネル登録者数は3,000,112人を突破し、配信ランク『神公認ライバー(Lv.1)』からいつの間にか『神公認ライバー(Lv.5)』にレベルアップしたバフも相まって、ろいでの周囲には常に淡く輝く神聖なバリア(物理耐久値150の豆腐メンタルを保護する謎の無敵オーラ)が展開されている。


そんなカオスな光景を目の当たりにしながら、不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、この惨状に頭を抱えながら、深い溜息をついた。



「ちょっと、ろいでちゃん……。やりすぎだよ流石に。この子、一応魔界の次期トップ候補だよ? 後で魔王様から『うちの若手を壊すな』ってクレームの生配信が来るレベルの外交問題だぞ?」



リデーレが外套マントのクリップをカチャカチャと鳴らしながらツッコミを入れるが、当のゼノスの父親である魔王はーー



▶:『魔王(公式):構わぬぞ。何ならもっとお仕置きしてくれたって問題ない』



という始末である。


一方で、ろいでもダボダボの萌え袖パーカーのポケットに手を突っ込み、ドSな笑顔で首をかしげる。



「えー? だって、この人いきなり教室に入ってきて『光る端末をへし折る』とか物騒なこと言ったから、更生プログラムを適用しただけ。むしろ社会勉強になって喜んでると思うけど」



「どこが社会勉強だよ! 完全な洗脳(BAN&再教育)じゃないか!」



「きゅ、きゅぷ……! ろいで様のおっしゃる通りです! 私のような愚かな悪魔が、ろいで様の高貴なスリッパの音色を聞けただけで魂の洗濯になりました……! もっとお叱りください、ろいで様!」



床をピカピカに磨き上げたゼノスが、満面の笑み(目は死んでいる)でろいでの足元にすり寄ってきた。



ろいでは「あ、じゃあそこのゴミ箱取って」と適当に指示を出し、ゼノスは「はっ! 直ちに!」と俊敏に走り去っていく。



▶:『ゼノスくんの社畜適性が高すぎて草』


▶:『魔王の息子の末路がこれかぁ……』


▶:『りーくん、この調子で学園の生徒全員信者にしちゃおうぜ』


▶:『【神回】魔王の息子を秒で調教してみた件』



スマホのチャット欄の【視聴者熱狂度(MP)】は、あまりの盛り上がりに限界突破寸前まで跳ね上がっていた。


【神回〈ゴッド・ストリーム〉】のゲージが真っ赤に燃え上がり、教室の空気そのものが微かに震え始めている。



「……なんか、君の配信のせいで、この学園の生態系が根本から狂い始めてない?」



「気のせいじゃない? ほら、りーくんもそこのネオンピンクの魔法陣でステップ踏んでみなよ。キレッキレのダンス覚えられるから」



「誰が踊るかぁ! 僕はただの巻き込まれ事故枠の神様なんだよ! なんで現世に肉体まで実体化させられて、パリピ教室でパシらされてるんだよ!」



リデーレが頭を抱えて絶叫していると、教室の扉がバァン! と音を立てて勢いよく開かれた。



「――そこまでですわ、不審者さんっ!」



凛とした声とともに現れたのは、あの正門前で音量3%のミュート制裁を食らい、完全敗北を喫した生徒会会長セレスティアその人であった。


彼女は背中の純白の翼を怒りで大きく広げ、手には光り輝く神聖なレイピアをしっかりと構えている。


彼女の周囲には、学園の治安を守る風紀委員の天使たちがズラリと控えていた。



▶:『おっ、セレスティアちゃん再登場!』


▶:『リベンジマッチキターーー!』


▶:『今度はちゃんと声出るの?』


▶:『りーくん、大天使のキレ芸第2ラウンド始まるぞ』



チャット欄が一気に沸き立つ。


セレスティアは、ネオンピンクに染まった教室の惨状と、床掃除をしている次期魔界生徒会長のゼノスを見て、絶句した。



「なっ……!? ゼノス、貴女いったい何をしているのですか!? なぜあの下等な人間の足元で雑巾掛けなど……!?」



「セレスティア……。フッ、貴女も早く気づくべきです。ろいで様の御前では、天使も悪魔も関係ありません……さあ、貴女も早くスリッパにキスを――」



「正気ですかぁーーっ!? 脳みそまでバグに侵食されてますわよあの悪魔っ!」



セレスティアは恐怖に顔を引きつらせながらも、気を取り直してレイピアをろいでに向けた。



「昨日の今日で、我が学園のシステムをここまでメチャクチャにしておいて、無事で済むと思わないでくださいまし! 私がこの手で、貴方のそのふざけたバグを強制終了させてあげますわ!」



生徒会会長セレスティアの全魔力が解放され、教室全体に強烈な神聖プレッシャーが満ちていく。


しかし、ろいでは相変わらずポテトチップスをポリポリとかじりながら、スマホの画面をちらりと一瞥した。



「あ、みんな。なんかまた鳥の羽が生えた鶏肉さんがリベンジしにきたんだけど、どうする? レスバで沈める?」



▶:『いけー! ろいでちゃん!』


▶:『鶏肉さんに更生プログラムを適用しろ!』


▶:『セレスティアちゃん、顔真っ赤だぞ』


▶:『魔王(公式):我が新王よ、あの生意気な天使もついでにモデレーターにせよ』


チャット欄の暴走したコメントを見たろいでは、「んじゃ、さくっと終わらせよっか」と、不敵な笑みを浮かべたのだった。



▶:『セレスティアちゃんの運命やいかに』


▶:『りーくん、巻き込まれないように隅っこでマントかぶってろ!』



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】28話を【14:35】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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