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第24話:【初授業】イキってる大天使の教授、本当はパリピになりたかった




「――で、雨漏りする青空教室の次は、よりによって『古代魔導実習』の授業ですかぁ……」



天井が盛大に吹き飛び、無情にも雨が降り注ぐ(現在はろいでが適当に張った謎のモザイクバグで雨を弾いている)特設教室。



その教卓の前で、りーくん――改め【表現と芸能の神リデーレ】は、濡れ鼠を免れたマントの裾をパタパタとはたきながら、深い溜息をついていた。


昨日の魔力測定爆破事件で学園のインフラの3%ほどを消し飛ばしたにもかかわらず、なぜか「特待生だから」という謎の理屈で普通に授業に出席させられている理不尽。


しかも、今日の担当教授は天界でも指折りのエリート主義者である大天使ルキウスだった。


教壇に立つルキウスは、純白のスーツに身を包み、背中の美しい六枚羽を優雅に揺らしながら、冷ややかな笑みを浮かべている。



「昨日、我が学園の誇る水晶玉を粉砕した不届き者め。今日お前たちが受けるのは、我が天界が誇る最高峰の『古代神聖魔法陣』の構築実習だ」



ルキウスはフンと鼻を鳴らし、教室の中央にそびえ立つ複雑怪奇な幾何学模様の巨大な魔法陣を指さした。


それは、数千年の歴史を持つ神聖不可侵の領域であり、定められた呪文と完璧な魔力コントロールができなければ、文字通り精神が焼き切れるというガチの危険な実習である。



▶:『あ、イキり天使キターーー!』


▶:『ルキウスお兄様、顔だけはいいから許す』


▶:『ろいでちゃん、この魔法陣をどうバグらせるか見ものだな』


▶:『ルキウス「下等な人間に魔法の基礎を教えてやる」の顔で草』



スマホのチャット欄は、すでに授業のカリキュラムそっちのけで「次のバグ演出」を期待する野次馬たちで埋め尽くされている。


同接数は今日も絶好調で、すでに3,000万人を突破していた。


ルキウスは、ろいでとその横で冷や汗をかくリデーレを侮蔑の視線で見下ろしながら、高らかに言い放った。



「いいか? この魔法陣はな、神々の言語を正しく解釈し、高潔なる精神で構築して初めて起動する。貴様らのような、スリッパを引きずる低俗な人間や、見た目がやかましい謎の不審者には一生かかっても扱いこなせない代物だ。せいぜい、基礎の基礎のそのまた土台から、この私に這いつくばって教えを乞うがいい!」



▶:『ルキウス様、ツッコミが的確すぎて草』


▶:『見た目に言及すんな』


▶:『りーくんのファッションセンスへの風評被害』


▶:『魔王(公式):あの鳥頭、後で一発シメとくか?』



チャット欄の魔王(公式)からの物騒なスパチャに、リデーレは「やめろ、余計なフラグを立てるな!」と心の中で激しくツッコミを入れた。


しかし、当のろいでは、そんなルキウスの尊大な言葉を完全にBGMとして聞き流しながら、足元の青いビニールスリッパを「キュッ」と鳴らして教壇に歩み寄る。



「ねぇ、先生。この魔法陣、なんか線が多くてごちゃごちゃしてない? もうちょっとこう、スッキリさせられないの?」



「なっ……!? 無知な下等生物め! これは神聖なる幾何学の極みなのだ! 貴様ごときの浅知恵で弄れるようなものでは――」



「あ、UIのバージョン古いからアプデしとくね」



ルキウスの言葉を遮るように、ろいではスマホの画面をシュッとスワイプし、空中にポップアップさせた【神権バグUI】を操作した。



瞬間――。



教室全体を包み込んでいた神聖かつ厳かな黄金色の魔導陣が、パァン、と軽い音を立てて弾けた。

いや、消滅したのではない。


ろいでの手によって、強制的に「現代の配信向けUI(ネオンピンク仕様)」に書き換えられてしまったのだ。



「――なっ!? 私の構築した古代魔法陣が、勝手に……変形だと……!?」



ルキウスが絶句し、背中の六枚羽をバサバサと乱雑に揺らす。


教室の床に広がっていたのは、もはや神聖な魔法陣などではなく、ドギツイネオンピンク色のグリッド線と、なぜか空中に浮かび上がる巨大な「チャンネル登録ボタン」だった。



▶:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


▶:『ネオンピンクの魔法陣とかいう暴力』


▶:『自動追撃バグ魔法、発動不可避』


▶:『ルキウス教官、顔が真っ青で草』




「ちょ、ろいでちゃん! 君また勝手に学園の施設を配信スタジオに改築してない!? ここ学校だよ!? ダンジョンでもアミューズメントパークでもないんだよ!?」



リデーレが必死に叫ぶが、もう止められない。


ろいでは、スマホに向かって「はーい、音響テストしまーす」と呑気に声を張り上げた。


すると、書き換えられたネオンピンクの古代魔法陣から、突如として重低音のEDMミュージックが爆音で鳴り響き始めた。


教室の壁や天井から、無数のサイリウムライトのような光の弾丸(自動追撃バグ魔法)がぽんぽこと射出され、エリート生徒たちの頭上を乱反射しながら飛び回り始める。



「きゃっ!? なんですのこれ、光が勝手に追っかけてくる……!」



「うわあっ、体が勝手にリズムに合わせちゃうぞ!? ノリノリになっちまう魔法だこれ……!」



天使の生徒も悪魔の生徒も、飛んできた光の弾丸(自動追撃バグ)に当たった瞬間、なぜかその場でキレッキレのダンスを踊り出すしかな身体になってしまう。


教壇のルキウスにいたっては、自らが進んで華麗なステップを踏みながら「おれは……私は本当はこういうパリピ系に憧れていたんだぁあああッ!」と謎の涙を流し始めていた。



▶:『ルキウス教官、キレッキレで草』


▶:『自動追撃バグ魔法、エリートを全員ダンサーに改造する凶悪スキルで草』


▶:『りーくんも踊りなよ!』



「踊るかぁ! ていうか教室が完全に野外フェスのクラブステージになってるじゃん!!」



リデーレが頭を抱えて絶叫する中、ろいではネオンピンクの光に包まれた教壇の中央で、ポテトチップスを片手に満足げに頷いていた。



「うん、さっきより数倍おしゃれになったね。学費払ってるんだから、これくらいのエンタメ機能は標準搭載しとくべき」



「誰もそんな機能求めてない!! ここはエリート育成機関であって、君の個人チャンネルのスタジオじゃないの!!」



天井からは雨漏りの代わりにキラキラした紙吹雪が降り注ぎ、天使も悪魔も、そしてイキり散らしていた大天使ルキウスすらもが、ネオンピンクの光の中で完全に飼いならされていく。



――こうして、初授業は、古代魔法陣の完全ハッキングと全校生徒のダンサー化という、救いようのない大騒動のまま幕を閉じたのだった。



▶:『おつろいでー!』


▶:『初授業、大成功(大惨事)』


▶:『ルキウスお兄様のキレッキレのステップ、保存した』



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】25話を【14:20】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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