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第23話:【天井崩壊】青空の下で響く、スリッパと大歓声のファンファーレ



「きゃああああああっ!?」



「屋根が! 我が学園自慢のステンドグラスの天井がぁ――っ!!」



凄まじい爆風と、耳をつんざくような衝撃波。


そして七色に光り輝く魔力の奔流に巻き込まれ、エリート生徒たちと教授陣は一斉にステージの端へと吹き飛ばされた。


天井から降り注ぐ大量の瓦礫とガラス片が雨あられと舞い散り、講堂内は悲鳴と怒号が入り交じる地獄絵図と化す。


そんな阿鼻叫喚の只中、盛大に青空が広がった講堂の中央には、巻き上がる埃まみれになりながらも、相変わらずダボダボのパーカーの裾を気だるげに揺らすろいでが、ぽつんと一人だけ立っていた。


彼女の足元には、先ほどまで学園の誇りだったはずの巨大水晶玉が、見る影もなく粉々に砕け散り、キラキラと輝くただのガラスの破片となって散らばっている。


そしてそのすぐ隣では、物理実体化のせいでモロに爆風の直撃を食らった不憫な見た目がうるさい神様(※一応彼は表現と芸能の神さまです)リデーレが、全身ススまみれの真っ黒な顔で床に盛大に突っ伏していた。



「……僕、今日入学式だよね……? なんで初日から青空教室で更迭されかけてるの……? 魂だけじゃなくて肉体まで消滅しかけたんだけど……」



「りーくん、お疲れ。なんか水晶さん、張り切りすぎて盛大にお亡くなりになっちゃったね」



「君のせいだよ!! 誰が過剰なくらい魔力ブチ込んだと思ってんの!!」



▶:『おつろいでー!』


▶:『天井破壊RTA、世界記録更新おめでとう!』


▶:『水晶くん、生まれてきてくれてありがとう』


▶:『エリート学園、入学初日から半壊で草』


▶:『魔王(公式):我が新王ろいでさすがだな』


▶:『りーくんの煤まみれの顔が今日のハイライトすぎる』


▶:『炭鉱から出てきたばかりの労働者じゃん』



スマホの画面越しに押し寄せるチャット欄は、天井が吹き飛んで青空が覗いていることなど一切気にせず、むしろ「最高に面白い見世物を見せてもらった」と言わばかりのお祭り騒ぎ。


同接数は爆発的な勢いで右肩上がりに伸び続け、すでに2,200万人を軽々と突破していた。全宇宙のネット民が、この理不尽すぎる学園テロ(?)の目撃者となっている。


そんな地獄絵図のステージ上、崩壊した天井の瓦礫をかき分けながら、怒りに震える一つの影が立ち上がった。



「き、貴様らぁ……! 我が学園の至宝を粉々に粉砕し、あまつさえ歴史あるステンドグラスの天井まで吹き飛ばすとは……許さぬ、絶対に許さぬぞぉおおおっ!!」



顔を真っ赤に染め上げ、血管を浮き彫りにした教授のバザルトが、怒髪天を突く勢いで巨大な魔導杖を突きつけてきた。


しかし、ろいではそんな教員の絶叫を華麗にスルーし、足元のビニールスリッパで、床に転がる水晶の破片を「コツン」と退屈そうに蹴飛ばす。



「あ、教授、お疲れ様。なんかね、この水晶ちょっと耐久性が足りないと思うの。次はもっとこう、ハードコアな耐衝撃性のある素材に変えたほうがいいよ。あ、あと屋根の修理代と瓦礫の撤去費用は、リスナーのスパチャの収益から引いといて」



「誰が学費や修理代をそんなふざけたシステムから補填するかぁ!! 貴様は即座に退学だ! 停学どころか、魔界の深層地下牢に二度と太陽の光が見られないよう永久幽閉してくれるわ!!」



バザルト教授が、教職員総出の超大型処罰呪文を発動させようと両手を大きく振り上げたその瞬間――。


ろいでは、何食わぬ顔でスマホの画面をシュッとスワイプし、新たな【神権】を容赦なく起動させた。



『【お知らせ】モデレーター権限により、教員の怒りゲージを強制的に「おやすみモード(強制睡眠)」に書き換えます』



「は……? なんだそれ、急に凄まじい眠気が……zzz」



バザルト教授は、抗う暇すら与えられず、白目を剥いたままその場にバタリと硬直して倒れ込み、大いびきをかいてぐっすりと熟睡を始めた。


周囲で固唾をのんで見守っていた天使や悪魔の生徒たちも、「えっ、教授が秒で寝落ちしたぞ!?」「なに今の魔法……いや、概念そのものを書き換えるバグ魔術かよ……!?」と、恐怖に顔を引きつらせて一歩、二歩と後ろに下がる。



▶:『教授、本日もお勤めご苦労様です!』


▶:『秒で寝落ちしてて草』


▶:『これがろいでちゃんスタイルの完全無欠な処罰回避術』


▶:『魔王(公式):我が新王ろいでに無礼を働くなバサルト。貴様、後で覚えておくがいい』


▶:『教授、ご愁傷さま。』


▶:『生きて帰れよ』


▶:『セレスティアちゃん、また顔が真っ青になってるぞ』



言われて、観覧席の隅でふるふふるへと震えていた生徒会会長セレスティアへと視線が集まる。


彼女は恐怖と理不尽さのあまり、もはやツッコミを入れる気力すら失い、ただただ口をパクパクさせる人形と化していた。



「よし、じゃあ今日のホームルームも強制終了したことだし、学食行っていい?」


「勝手に終わらせるな! ていうか、この半壊して青空が丸見えになった学園の責任を一体どう取る気だよ! 明日からどうやって授業受けるんだよ、青空の下で青空算数でもやるのか!? 雨が降ったらどうすんだよ!」



絶叫するリデーレの頭上に、絶妙なタイミングで「ポツリ」と一粒の冷たい雨粒が落ちてきた。


ゴロゴロと遠くで雷鳴が轟き、青空だったはずの天井から、無情にも本降りの雨が降り注ぎ始める。



――第二章・学園入学編の初日は、こうしてエリート学園の物理的インフラを完全破壊し、全校生徒にトラウマを植え付けた状態で、盛大かつ最悪な幕を開けたのだった。



▶:『おつろいでー!』


▶:『青空教室(物理)スタート!』


▶:『りーくん、雨に打たれて風邪ひかないように外套マントで頭隠せ!』



(つづく)

本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!

【このあとすぐ】24話を【14:15】頃に投稿します!

ぜひ見てください。

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