第22話:【魔力測定爆破】エリート学園の水晶玉、同接2,100万人の重みで粉砕される件
「――で、ろいでちゃん。なんで僕までこの『全校生徒強制参加の魔力測定』に並ばされてるの?」
天界と魔界の境界にそびえ立つ『神魔統合学園』の巨大講堂。
そのステージの中央にそびえ立つのは、歴代の天才天使や凶悪悪魔たちの魔力量を測定してきたという、学園名物の『神聖魔導水晶』であった。
人間の背丈を優に超えるその透明な大玉は、周囲に神秘的な青白い光を放ち、一歩近づくだけで肌がヒリつくほどの高密度な魔力を発散している。
その水晶の前に、ダボダボのパーカー姿でぽつんと立っているのが、我が道を行く配信者・ろいで。
そして、その数歩後ろで、なぜか生徒たちの視線に晒されながら冷や汗を流しているのが、物理実体化させられた不憫な神(※一応彼は表現と芸能の神です)リデーレである。
▶:『りーくん、完全に保護者同伴の不審者で草』
▶:『マントのクリップ外れてるぞ』
▶:『水晶さん、すでに嫌な予感しかしてなくて震えてる』
▶:『同接2,100万人をこのガラス玉にぶち込んだらどうなるんやろなぁ(ワクワク)』
▶:『地球サーバーの二の舞不可避』
スマホのチャット欄には、不穏を通り越して「爆破」を心待ちにする狂気的なコメントが並び立てられていた。
それもそのはず、今のろいでの配信枠の同接数は、初日補正も相まってすでに2,100万人を突破している。全宇宙・全次元の野次馬たちが、このエリート学園のイベントをかぶりついて見物にきている状態だ。
講堂の観覧席には、あの日の正門前で音量3%に絞られて完全敗北を喫した生徒会会長セレスティアの姿もあった。
彼女は純白の翼をピシッと折りたたみ、悔しそうに歯噛みしながらステージを睨みつけている。
『見てなさい下等人間……我が学園の水晶は、神魔の神髄を測る絶対の宝具ですわ! 貴方の底の浅い魔力など、一瞬で計測不能エラーを起こして恥をかくがいいですわ!』
(※セレスティアの脳内コメント、音声ミュート中のため顔芸のみでお届けしております)
ステージの脇では、担当教官である古株の魔界教授・バザルトが、腕を組んで冷ややかな笑みを浮かべていた。
「ふん。裏口入学だか何だか知らんが、人間ごときが我が学園の水晶に触れられるかな。精々、水晶が微動だにせず、全校生徒の前で赤っ恥をかくがいいわ!」
教授の意地の悪い視線を受けながら、ろいでは「ふぁあ……」と盛大にあくびをかまし、気だるげに右手を上げた。
「えーっと、これペタッと触ればいいの? なんか冷たそうなんだけど」
「あ、ろいでちゃん! ちょっと待て、なんかその水晶、嫌な音しはじめてない!? 嫌な汗かいてない!?あのガラス玉!?」
リデーレが冷や汗をダラダラと流しながら警告するが、時すでに遅し。
ろいでは、何の躊躇いもなく、そのペラペラの青いビニールスリッパをきゅっきゅっと引きずりながら、巨大水晶玉にぺとっと片手を触れた。
その瞬間――。
世界が、一瞬だけ「無音」になった。
▶:『……ん?』
▶:『なんか画面フリーズした?』
▶:『あ、これアカンやつや』
▶:『サーバーからピーって音が聞こえる』
配信のコメント欄がわずかにざわついた次の瞬間。
ろいでの背後から、スマホを通じてリアルタイムで接続されていた同接2,100万人の信仰(スパチャ&物欲・野次)の魔力が、文字通り「同期」した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
「なっ……!?」
魔界教授バザルトの顔色から、一瞬で血の気が引いた。
水晶玉が青白い光から、あり得ない「ドギツイネオンピンク色」に染まり上がる。
それだけではない。
水晶の内部で、世界中の視聴者から投げ込まれた億単位のスパチャデータが物理的なエネルギーに変換され、激しい奔流となって渦巻いていたのだ。
「ちょっ、まっ、バグってる! バグってるってこれ! 水晶のキャパシティ完全にオーバーしてるよ!!」
リデーレがこれでもかと目をかっぴらいて絶叫するが、ろいでは首をかしげたまま、スマホの画面に話しかける。
「あ、みんな、そんなに一気に魔力投げたらお腹いっぱいになっちゃう。ほどほどにしてね」
「ほどほどにできるかぁ! 君のリスナーの数と熱量を舐めるな! 水晶が『もう無理ですリセットしてください』って顔してるよ!」
ピキキキキキ……パキッ……!
神魔の歴史を刻んできた絶対無敵の巨大水晶玉に、おびただしい数の亀裂が入る。
それはまるでガラス細工のように脆く、盛大な破壊音を響かせながら、講堂全体を揺るがすほどの圧倒的波動を放ち始めた。
「ば、馬鹿な……!? あの古代魔導水晶が自壊しているだと……!? 一人の人間から発せられる魔力量が、学園の観測限界を突破したぁっ!?」
教授のバザルトが椅子から転げ落ち、観覧席にいた生徒たちも総立ちでパニックに陥る。
セレスティアに至っては、美貌を完全に歪め、「うそですわ!? あんなのただの青いスリッパの不審者ですわよ!?」と絶叫しながら自分の頭を抱えていた。
そして――次の瞬間。
ドオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!
最高潮に達したネオンピンクの魔力光が、講堂の天井を文字通り「吹き飛ばした」。
(つづく)
本日【14:00〜】21話〜32話を連続投稿します!
【このあとすぐ】23話を【14:10】頃に投稿します!
ぜひ見てください。




