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第20話:【最終決戦】世界の神「バグは消去する」ろいで「同接2000万人の力、舐めないでね?」



高級ホテルのスイートルームの天井が完全に消失し、そこから溢れ出した黄金の光が、部屋全体を神聖な空間へと塗り替えていく。


光の中心に浮かび上がったのは、この世界のルールそのものを体現する、巨大な黄金の『世界の神(システム管理者)』の目だった。


ただそこに存在するだけで、世界の物理法則が書き換わってしまうほどの圧倒的なプレッシャー。


神の目が、感情の消え失せた冷徹な声で、私の脳内に直接語りかけてくる。



『――異界のバグよ。これ以上の世界のシステムの改ざんは容認できん。貴様が構築した『配信』という名の不正プログラム、および繋がれた地球のサーバーごと、今この瞬間に完全消去デリートする』



ゴゴゴゴゴ……と、神の宣告と共に、私の足元から床がサラサラとデジタルデータの塵になって消え始め、スマホの画面もバグで激しく点滅しだした。


ドローンカメラの向こうのチャット欄は、これまでにないほどの速度とパニックで大荒れを極めている。



▶:『おいおいおいマジでラスボス(世界の神)出てきたぞ!!!』


▶:『配信がノイズだらけで見えなくなってきた!!!』


▶:『ろいでちゃんが足元から消えかかってる!? 嘘だろ!?』


▶:『スパチャ(500,000円):消えないでろいでちゃん!!! サーバー持ちこたえてくれ!!!』



『あああ! ろいでちゃん! もう終わりだ!あれはこの配信プラットフォーム(世界)を創った一番偉い「運営会社の社長」みたいな立場だよ!? 僕みたいな「芸能」っていう一つの弱小チャンネルを担当してる平社員の神様じゃ、逆らった瞬間にクビ(消滅)にされちゃうよぉぉぉ!! 』



ヘッドホンの中から、音量3%のりーくんが本日最大級の涙声で、神々の圧倒的な上下関係をシステムに例えて絶叫する。


しかし、肉体がデータに還元されて消えかかろうとも、私の口元は最高に楽しそうなドSスマイルのままだった。



「――ねえ、世界の神様。一つ勘違いしてるみたいだけど、消去されるのは私じゃなくて、そっちの古い『利用規約』の方だよ?」



私がニヤリと微笑んだ、まさにその瞬間だった。


ピキィィィン!!! と、私のスマホの画面が、かつてないほどのネオンピンクの爆発的な光を放った。


画面の右上に表示された同時視聴者数。


それは、地球のネットユーザー、異世界の人間、迅速に回線に繋がった全魔族を合わせた、驚異の【20,000,000】。


大台の2000万人を突破した瞬間だった。



「みんな! 私に最後の高評価ボタン(いいね)と、ありったけの『コメント(熱狂エネルギー)』をちょうだい!!」



私が空に向かって萌え袖の両手を掲げると、2000万人のリスナーから、地球の言語、エルフの古代文字、魔王軍のフォントが混ざり合った、超超超巨大な弾幕の嵐がチャット欄を埋め尽くした。



▶:『ろいでちゃん頑張れえええ!!!』


▶:『高評価連打ああああ!!!』


▶:『魔王(公式):世界の神(運営会社の社長)よ、我が新王ろいでの配信を邪魔するな! 全ての魔物よ、総員で高評価を押せい!!』



2000万人の圧倒的な熱狂データが、外付けハードディスク化した神聖結晶を経由して、私のバグ神権へと一極集中していく。


私のツインテールが、神の黄金の光を完全に掻き消すほどの、眩いネオンピンクの光を放って荒れ狂った。



【神権:視聴者総意・世界の利用規約書き換え(アップデート)】発動。



私の視界に、宇宙規模の巨大なピンクの開発者用ウィンドウがポップアップする。



【オブジェクト:世界の神(管理者権限)】



【ステータス:2000万人のリスナーからの『通報(スパム報告)』が集中しています】



【処理内容:多数の規約違反(配信妨害)が確認されたため、管理者のアカウントを一時的に『凍結(アカウントBAN)』します】



『な……何だと……っ!? 我が世界の理、最高位のシステム権限が……下俗な人間や魔族の『一斉通報』ごときで……ロックされていく……だと……っ!? 馬鹿な、あり得ん……ぐわあああああ!!!』



世界の神(運営会社の社長)が驚愕に目を剥いた、その瞬間だった。


巨大な目が、まるで電波の悪いテレビ画面のように激しくブレ始め、そのまま「シュンッ!」と、マヌケなデジタルノイズと共に空間から綺麗さっぱり消去〈BAN〉されてしまった。


眩しかった黄金の光は消え去り、ホテルのスイートルームには、いつもの美しい夜景と、最高画質(24K)で回り続けるドローンカメラだけが残された。



【システム:おめでとうございます! 配信妨害アカウントのBANに成功しました】



一瞬の静寂の後、チャット欄はもはや文字が発光して読めないレベルの大大爆草原へと変わった。



▶:『世界の運営会社の社長をスパム通報でBANするライバーwwwww』


▶:『2000万人の通報の暴力、最高神すら耐えられなくて草』


▶:『魔王軍と人間が協力して神をBANしててワロタww』


▶:『同接2200万人突破!!! 完全にこの世界のトップストリーマーだ!!!』



「はい! というわけで世界の神様との最終決戦(?)、大勝利でしたー! みんな、たくさんの通報とスパチャありがとね!」



私がカメラに向かって、満足そうにスリッパのままピースサインを作ると、画面には無数の「おつろいでー!」の文字が狂ったように流れ続ける。



『……アプリの僕が……神様(運営会社の社長)をBANしたライバーの共犯者に……。もうこれ、僕が神話の歴史をハッキングして書き換えてるのと一緒だよぉ……』



ヘッドホンの中からは、一般リスナー2000万人の一斉スパム通報のせいで、運営の社長本人のアカウント(最高神)が利用規約違反で自動凍結(BAN)されたのを目撃した、りーくんの完全に魂の抜けた呟きが聞こえた。


私はスマホの画面越しに、この世界の空――うっすらとネオンピンクのバグが残る天を見上げて、ふっと不敵なドSスマイルを浮かべた。



「ふふ……あーあ、消えちゃった。まさか本当に『世界の神様』がアカウントBANされるなんてね」



ダボダボのパーカーの袖口で鼻をくすぐりながら、猫足スリッパの先でトントンと地面を叩く。



「人間界の国王様からは指名手配されるし、世界の神様は消しちゃうし。……うん、私、この異世界でやれること全部やり切った気がする!」



チャット欄の同接数が【20,000,000】を維持したまま、リスナーたちの興奮したコメントが高速で流れていく。



▶:『やり切ったレベルじゃねえwww』


▶:『異世界の歴史どころか概念を破壊した女ww』


▶:『で、これからどうすんのろいでちゃん!?』



リスナーからの問いかけに、私はカメラに向かって、スリッパのまま片足を上げてバシッとピースサインを決めた。



「どうするかって? 決まってるじゃん! 私の配信はまだまだこれからだよ!」



スマホをポンッと手の上で弄びながら、いたずらっぽく目を細める。



「魔王様が学園に圧力かけてくれたおかげでさ〜、私、人間界の指名手配をスルーして、天界と魔界のエリートが集まる『神魔統合学園』に特待生として入学することになりましたー!」



▶:『は????? 神と悪魔の学園!?!?』


▶:『魔王様の職権乱用助かるww』


▶:『神を消した直後に天使と悪魔の学校に通うのマジで狂ってて最高ww』



「ふふ、天使の生徒たち、自分の神様を消したやつが転校してくるとか、絶対パニックになるでしょ? 悪魔の生徒たちも、スリッパ履いた人間に煽られてどんな顔するか楽しみだな〜」



私は画面の向こうにいる2000万人のリスナー(信者)たちに向かって、今日一番のドSな笑みを投げかけた。



「――ねえ、みんな。神様をBANしたパーカー女子が、今度は天使と悪魔のエリート学園をバグらせまくる姿、見たくない?」



▶:『見たい!!!!!!』


▶:『絶対見る!!!!!!』


▶:『全裸待機!!!!!!』



一瞬で画面を埋め尽くす熱狂のコメント欄を見届け、私は配信終了ボタンに指をかけた。



「それじゃあみんな、また次の配信でね! 天使も悪魔も、まとめて私のリスナーにしてあげる――おつろいでー!」



ーーピコン。



[ライブ配信が終了しました]



[次回配信予定:『神と悪魔のエリート学園にスリッパで登校してみた!』]



こうして、たった一人で世界の理をハッキングし尽くしたJKライバー・ろいでの『異世界配信無双』第一章は、最高のバズと共に幕を閉じた。


そして物語は――天界と魔界を巻き込む、さらなるお祭り騒ぎの第二章(学園編)へ!



(第20話・完 / 第一部【異世界バグ配信編】・完)

第1章プロローグは、全20話という短い話数で締めさせていただきます。

次回第2章21話は天使と悪魔が通う学園編です。

明日の【14:00】に投稿します

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