第19話:【サーバー防衛】容量が足りない?そうだ国宝を使おう
『システム崩壊まで、あと10分……。ねえろいでちゃん、本当にどうするつもりなんだい!? 地球のエンジニアたちの悲鳴が、時空の狭間を越えて僕の元まで聞こえてきそうだよ!!』
ヘッドホンの中から、音量3%のりーくんが涙目で大騒ぎしている。
手元のスマホ画面に表示された開発者用の警告ウィンドウでは、真っ赤なカウントダウンが非情に刻一刻と数字を減らしていた。
【15,000,000】。
異世界全土の人間や魔族、そして地球のネットユーザーを巻き込んだ合計1500万人という空前絶後の同時視聴者数。
彼らが放つ膨大な「魔力データ」の奔流によって、地球の大手配信サイトのメインサーバーは、今まさに物理的な熱暴走で大爆発を起こしかけているのだ。
けれど、私はダボダボのパーカーの袖から細い指先を覗かせ、ニヤリと不敵に微笑んだ。
「サーバーの容量が足りないなら、増やせばいいだけでしょ? りーくん、この街のギルドの地下深くにある、あのバカでかい『神聖結晶』の座標に、私のハッキングの電波を繋いで」
『神聖結晶だって!? あれはこの国が始まって以来、何百年もの間、国全体の魔法結界を維持するための莫大な魔力を貯蔵している国家最高機密の超ド級エネルギー源だよ!? そんなものを一体何に使う気だい!?』
「何って、地球の配信サイトの『外付けハードディスク』。あるいは『クラウドサーバー』。容量は無限にありそうだし、ちょうどいいじゃん」
『国家の命運を握る神聖な結晶を、ただの配信サイトのデータ保存場所にするなーーー!!!』
チャット欄は、この異次元すぎる解決策に完全に狂い咲いていた。
▶:『異世界の国宝を外付けHDDにするライバーwww』
▶:『スケールが宇宙規模になってて草』
▶:『地球のエンジニア「なんかサーバーの容量が急に無限になったんだが」』
▶:『魔王(公式):……ほう、人間の国の神聖結晶をハッキングするか。面白い、我が魔王軍の演算能力も、必要とあらばデータとして提供してやろう』
「お、魔王様サンキュー! じゃあ魔王城の魔力もちょっとだけ『回線強化』のためにハッキングさせてもらうね! カタカタカタっと」
【神権:システムUI・外部デバイス強制同期】発動。
私の視界が鮮やかなネオンピンクのデジタルノイズで埋め尽くされ、街の地下に眠る巨大な神聖結晶、そして魔王城のコアのソースコードが瞬時に書き換えられていく。
【デバイス接続:異世界神聖結晶 & 魔王城メインコア】
【実行アクション:地球の配信サイトのサーバー領域と強制同期プロトコルを確立】
【処理内容:これより、1500万人のアクセスデータを異世界の魔力によって完全分散処理します】
――ピキィィィィンッ!!!
次の瞬間、私のスマホから、天を突くようなネオンピンクの光の柱が激しく立ち上った。
それと同時に、街の地下深くで何百年も静かに輝いていたはずの神聖結晶が「ピカッ!」と眩しく点滅し、地球のデジタルデータを処理するための『異世界最大のサーバーセンター』へと一瞬で改造されてしまった。
【システム:サーバーの拡張に成功しました。現在、通信環境は極めて良好です】
真っ赤に点滅していたカウントダウンが消え去り、画面には【通信速度:爆速】というマヌケなステータスが表示された。
地球のサーバーの熱暴走は完全に鎮火。
それどころか、異世界の神聖結晶のパワーが逆流したせいで、地球の配信サイトの画質が「24K(人間の目の限界超え)」という、オーバースペックすぎる超超高画質へと強制パワーアップを遂げていた。
「はい! サーバー防衛完了! 通信環境もバッチリ安定したから、これで1500万人と言わず、2000万人でも5000万人でも、いくらでもかかってきていいよ!」
私がカメラに向かって、もこもこの猫足スリッパをトントンと鳴らしてピースサインを作ると、画面の向こうの地球のリスナーも、視界のUIを見つめる異世界の住人たちも、全員が完全に開いた口が塞がらない状態で固まっていた。
▶:『サーバー問題がゴリ押しで解決して草』
▶:『画質が良すぎてろいでちゃんのパーカーの繊維まで見えるわww』
▶:『国宝をハッキングされた国王の顔が見てみたい』
▶:『同接がさらに加速して1600万人突破キターーー!!!』
「ふふ、これで配信のインフラは完璧だね!」
私が満足そうに微笑んだ、まさにその時だった。
ズズズ、ズガガガガッ!!!
ホテルのスイートルームの天井が、突如として激しく軋みをあげた。
それは、これまで戦ってきたエリート魔術師や四天王とは一線を画す、世界そのものの理が激怒しているかのような、圧倒的な『神のプレッシャー』だった。
空間がガラスのようにひび割れ、そこから眩いばかりの黄金の光が溢れ出す。
『……ついに、来てしまったか……』
ヘッドホンの中から、りーくんの、これまでに聞いたことがないほど震える声が聞こえた。
『ろいでちゃん……。2つの世界のシステムをバグらせすぎたせいで……この世界の秩序を司る『上位の管理者(世界の神)』が、君を完全に消去するために、直接この世界に降臨してきたんだ……!』
光の中から現れたのは、世界のルールそのものを体現する、巨大な神の目だった。
ついに世界そのものが、パーカー女子を「バグ」として本気で潰しにやってきたのだ。
(第19話・完 / 第20話につづく)
ご視聴ありがとうございました。
【このあとすぐ】20話を【10分後】に投稿します!
ぜひご視聴ください!




