第14話:【初コラボ】魔王軍四天王の「絶対服従の呪い」を「チャンネル登録ボタン」で上書きしてみた
高級ホテルのスイートルームに突如として現れた、魔王軍四天王の一角・ヴァルザード。
彼は至近距離から突きつけられたドローンカメラと、画面の向こうの「850万人」という謎の数字に一瞬だけ怯んだものの、すぐに大悪魔としての冷酷な笑みを取り戻した。
「……フン、貴様が何を企んでいるかは知らんが、我が前に立ったことをあの世で後悔するがいい。我が魔王軍に下らぬというのであれば、その精神ごと肉体を我が『支配の呪縛(絶対服従)』で隷属させてくれるわ!」
ヴァルザードが鋭い爪の先を私に向けると、彼の瞳がドス黒い紫色に妖しく光り輝いた。
それは、どれほど強靭な精神を持つ聖騎士であっても一瞬で自我を破壊され、魔王軍の忠実な操り人形に変えられてしまうという、世界最凶の精神汚染魔術。
ジジジ……と、私の視界の端々が黒いモヤで侵食され始める。
ドローンカメラの向こうのチャット欄が、一気に悲鳴のような速度で流れ出した。
▶:『アカンアカンアカン!!! 精神攻撃はハッキングできないだろ!!!』
▶:『ろいでちゃんの目がちょっとトロンとしてきてるぞ!?』
▶:『魔王軍ガチで容赦ねえええ!!!』
▶:『誰か警察、いや勇者呼んでえええ!!!』
『あああ! ろいでちゃん! ダメだ、その呪いを受け入れたら君はただの「マッスル魔女(魔王軍仕様)」になっちゃうよ! 僕の芸能の神権を全部防御に回すから、意識をしっかり持って――』
ヘッドホンから、音量3%のりーくんが必死の形相で脳内に直接叫んでくる。
しかし、視界がどれだけ黒く染まろうとも、私の口元は最高に楽しそうなドSスマイルを崩していなかった。
「――ねえ、ヴァルザードさん。その『絶対に逆らえない仕組み』って、要するにシステムの「自動契約」でしょ? だったらさ、私の配信の規約で上書きしちゃえばいいよね?」
私がニヤリと微笑んだ瞬間、同時視聴者数は驚異の880万人を突破。
私は空中に向かって、萌え袖の手で「人差し指でボタンをぽちっと押す」ジェスチャーを取った。
【神権:チャンネル登録・強制同期プロトコル】発動。
私の視界に、ネオンピンクの開発者用ウィンドウがパチパチと明滅しながらポップアップした。
【エラー:外部からの不正な「服従契約」を検知しました】
【処理内容:配信主の権限により、対象の契約内容を『チャンネル登録・有料メンバーシップ加入』に強制書き換えします】
「な……何だと……っ!? 我が絶対の呪縛が、なぜか途中で別の術式に吸い込まれて……クッ、頭が……頭が割れるように痛い……ッ!!」
ヴァルザードが突如として頭を抱え、ベッドの上でのたうち回り始めた。
彼の放った呪いのエネルギーは、すべて私の配信端末(神権)に吸い込まれ、逆にヴァルザード自身の精神データに「ろいでちゃんへのチャンネル登録(絶対服従)」という名の呪縛が逆流していったのだ。
【システム:魔王軍四天王ヴァルザードが、有料メンバーシップ『ろいでちゃんの忠実な奴隷プラン(月額金貨10枚)』に強制加入しました】
「う、ぐ……ッ!? 我が魂に、刻まれていく……!? 圧倒的な、ピンクのツインテールの輝きが……! 毎日、毎日、高評価を、押さねばならぬという、謎の使命感がぁぁぁ!!」
「はい、メンバーシップの登録ありがとー! 毎月の金貨10枚の引き落とし、よろしくね!」
私がお祝いの拍手をパチパチと鳴らすと、さっきまで悶絶していた世界最凶の大悪魔は、突如としてスンッ……と真顔になり、私の前で綺麗に正座をした。
その瞳からは邪悪な光が完全に消え去り、今や私のことを「全知全能の教祖様」でも見るかのような、キラキラとした純粋な目で見つめていた。
「……ろいで様。本日の配信も大変素晴らしゅうございます。私、すぐに魔王軍の拠点に戻り、全魔族にチャンネル登録と高評価を押すよう、命じてまいります」
「うん、有能。じゃあヴァルザードさん、お疲れ様でしたー。次の現場へ転送ね」
シュンッ!
私が指を鳴らすと、魔王軍の四天王はデジタルノイズと共に、いつものようにギルドのゴミ捨て場(の座標)へと強制ログアウトさせられていった。
おそらくそこから大急ぎで魔王城へ帰って、魔王軍全員に神権の端末を配る作業に入るのだろう。
あとに残された高級ホテルのスイートルームで、チャット欄は完全に大バグを起こしたかのように狂い咲いていた。
▶:『四天王が有料メンバーシップになってて草』
▶:『月額金貨10枚で魔王軍を配下にするライバーwww』
▶:『魔王軍、これから毎日「おはろいでー!」ってコメントしなきゃいけないのワロタww』
▶:『同接ついに900万人突破キターーー!!!』
「ふふ、これで魔王軍も私の大事な『登録者』だね!」
私がカメラに向かって、満足そうにピースサインを作ると、ヘッドホンの中からりーくんの、完全に魂の抜けた呟きが聞こえた。
『……もう嫌だ……。魔王軍が全員ピンクのペンライトを振って、君のライブでコールを入れる未来しか見えないよ……。神様、もう実家に帰りたい……』
こうして、魔王軍すらも一瞬でファン(物理的洗脳)に変えてしまったパーカー女子の快進撃は、いよいよ世界そのものを揺るがす「超特大イベント」へと発展していくのだった。
(つづく)
【このあと10分後】に15話を投稿します!




