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第12話:【英雄撃破】S級冒険者の「絶対切断の大剣」を「低評価〈バッドボタン〉」でへし折ってみた




「――フン、虚勢を張るのもそこまでだ、小娘が!!」



S級冒険者・バルドの咆哮と共に、彼が引き抜いた大剣が、太陽の光を浴びて邪悪なまでの漆黒の輝きを放った。


これこそが、どんな高位の魔法障壁をも豆腐のように切り裂き、あらゆる術式を強制解除するという国宝級の魔剣『絶対切断マジック・イレイザー』。


バルドが地を蹴った瞬間、その巨躯からは想像もつかない速度で、私の首筋めがけて一閃が放たれた。



キィィィィン――ッ!!!



大剣が空気を切り裂く風圧だけで、広場の石畳がバキバキとひび割れていく。


ドローンカメラの映像越しに、リスナーたちの悲鳴のような弾幕が流れた。



▶:『速すぎる!!! 目で追えない!!!』


▶:『ろいでちゃん後ろ後ろ後ろ!!!』


▶:『魔法無効化の大剣とか、ハッキング効かないんじゃねえの!?』


▶:『頼むからスリッパで避けてえええ!!!』



『あああ! ろいでちゃん! さすがにあの魔剣はヤバいよ! 表現の神としての僕の直感が、あれはシステムそのものを物理的に破壊するデバッグツールの一種だと告げている! 避けて、早く――』



ヘッドホンから、音量1%のはずのりーくんが必死の形相で脳内に直接念話を送ってくる。


だが、迫り来る漆黒の刃を前にして、私は一歩も動かなかった。



「魔法を無効化する魔剣ねぇ。……じゃあさ、そもそも魔法じゃない『ただの圧倒的な不評』だったらどうなるの?」



私がニヤリと微笑んだ瞬間、同時視聴者数は驚異の750万人を突破。


私は空中に向かって、萌え袖の親指をグッと下に向けるジェスチャー――【低評価バッドボタン】のポーズを取った。



【神権:システムUI・低評価弾幕アンチ・ストリーム】発動。



私の視界がネオンピンクから、どす黒い漆黒のバグエフェクトへと塗り替えられる。


大剣が私の首筋に届く、まさにその一ミリ手前。

バルドの魔剣の真上に、開発者用の警告ウィンドウが真っ赤に点滅しながらポップアップした。



【オブジェクト:絶対切断の大剣】



【ステータス:現在、視聴者から圧倒的な不評を集めています】



【低評価数:7,500,000】



【処理内容:不適切コンテンツとして、オブジェクトの耐久値を強制デリートします】



「……な、何だと……っ!?」



バルドが驚愕に目を見開いた、その瞬間だった。



ガキィィィィィンッ!!!!



心地よいほどに甲高い破砕音が、広場全体に響き渡った。


私の首に当たるよりも早く、バルドが誇る伝説の魔剣が、根元からパキィィィンと派手に真っ二つにへし折れたのだ。

折れた刃が、カラカラとマヌケな音を立てて石畳を転がっていく。



「ば、馬鹿な……!? 俺の『絶対切断』が……何も無い空間に当たって、へし折れた……だと……!?」



「はい、お疲れ様でーす! 750万人のリスナーから『このボス、攻撃が理不尽すぎてクソゲー仕様だな』って低評価を押し売りされたから、お兄さんの武器、利用規約違反(BAN)されちゃいましたー!」



私がカメラに向かってピースサインを作ると、フリーズしたチャット欄が一気に大爆草原へと変わった。



▶:『低評価で物理的に武器が折れるの草』


▶:『750万のアンチコメントを武器に変えるライバーwww』


▶:『バルドさん、伝説の武器を一瞬でただの粗大ゴミにされてて可哀想ww』


▶:『スパチャ(30,000円):お兄さんの武器の修理代ですwww』



「く、クソゲー……? BAN……? 貴様、一体何の呪術を――」



「あ、武器が折れて見せ場もなくなったから、お兄さんも次の現場に転送ね。りーくん、ゴミ捨て場へポイしちゃって」



『う、うん! もう僕、ろいでちゃんのやることにツッコむの疲れたから、言われた通りにするよ! 【神権:配信荒らし一斉BAN】発動ーーー!!』



りーくんの達観した声と共に、私の足元からネオンピンクの光の波が広がり、バルドの巨躯を飲み込んだ。



「ま、待て! 俺はまだ負けて――」



シュンッ!



バルドの言葉が響ききる前に、人類最高峰のS級冒険者は、デジタルノイズと共に空間から綺麗さっぱり消去され、遥か彼方のギルドのゴミ捨て場へと強制ログアウトさせられていった。


あとに残されたのは、真っ二つに折れた国宝級の魔剣の残骸と、ぽかんと口を開けて呆然としている街の群衆たちだけだ。



「よし! 本日のゲリラ配信も、最高の撮れ高をゲットしたところで、この辺で終わりにしよっか!」



私がカメラに向かって手を振ると、画面には無数のスパチャと「おつろいでー!」のコメントが狂ったように流れ続ける。


しかし、この時の私はまだ知らなかった。


S級冒険者すらも一瞬でおもちゃにされたという事実が、この国の国王や、さらには世界を裏から牛耳る『魔王軍』の耳にまで届き、事態がとんでもない超大規模イベントへと発展していくことを。



(つづく)

11話、12話、13話一挙投稿したのでぜひ見ていただけたら嬉しいです!

次回【14:00】頃に3話連続投稿します!

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