第11話:【指名手配】私の顔が「キモ金貨と同じ筋肉ポーズ」のイラストで国中に張り出された件
エリート魔術師団をまとめてゴミ捨て場に強制ログアウトさせた翌朝。
私と、蚊の鳴くような音量(3%)に設定されたりーくんは、次の「撮れ高」を求めて隣の大きな商業都市へと移動していた。
その街の広場に差し掛かった時、何やら大きな掲示板の前に人だかりができていて、現地の人たちが「おい、マジかよ……」「なんて禍々しい手配書だ……」とザワついているのが見えた。
「ん? みんな何見てるんだろ。ちょっとカメラ寄せてみてー」
私がドローンカメラを掲示板の正面へと回り込ませると、そこには刷りたてらしき巨大な『指名手配書』がデカデカと貼り付けられていた。
上部には、赤黒い文字で【国家最重要危険人物・即時拘束】と書かれている。どうやら私、知らない間に国家のお尋ね者になってしまったらしい。
▶:『おいおいおい指名手配キターーー!!!』
▶:『ろいでちゃん、配信2日目で国家の敵になるの早すぎて草』
▶:『ちょっと待って、手配書のイラストが、なんか……おかしくない?』
▶:『画面アップにしてwwwお腹痛いwwww』
チャット欄の草の生え方が尋常ではないことに気づき、私も手配書のイラストをじっくりと見つめた。
そこには、人相書きが描かれていた。
……描かれていたのだが。
ピンクのツインテール。ダボダボの萌え袖パーカー。
そこまでは合っている。
しかし、なぜかそのパーカーの袖が限界まで破り捨てられており、そこから「隆々とした、ボディビルダー並みの凶悪な上腕二頭筋」が突き出ていた。
ポーズは、正面を向いて両腕を曲げ、左右の力こぶをこれでもかと誇示する――あの、りーくんのキモ金貨と全く同じ『筋肉全開ポーズ』だった。
人相書きの下には、達筆な文字でこう説明が添えられている。
【特徴:ピンクの髪の少女。服の隙間から神の如き圧倒的な質量の『筋肉』を隠し持っており、一瞬で空間を歪めて軍勢魔法をクラッカーに変える。出会ったら最後、問答無用で奈落の底へ強制ログアウトさせられるため、一般の冒険者は決して近づかないこと】
「……ねえ、りーくん。これ描いた人、ちょっと表に出して。私のデリケートな乙女のプライドが、異世界のお役所仕事によってコナゴナに粉砕されたんだけど」
『僕のせいにしないでよ!! ギルドの受付嬢さんが「神の直鋳金貨と同じ筋肉ポーズの、ネクロマンサーより恐ろしい魔女です!」って泣きながら王宮に報告しちゃったから、情報がバグってそんなマッスル人相書きが完成しちゃったんだよ!! 僕はむしろ、君の腕に僕の自慢の筋肉美がトレースされてて美しいと思うけどね!』
「はい、お世辞がうるさいので音量1%ね。カチッ」
『1%はもう、僕がただの耳鳴りになっちゃうよぉぉぉ!!』
▶:『マッスルろいでちゃんwwwww』
▶:『同接650万人の力(物理)で草』
▶:『出会ったら最後、強制ログアウト(ゴミ捨て場行き)は合ってるのが余計にタチ悪いww』
▶:『スパチャ(10,000円):プロテイン代です。しっかり追い込んでください』
「誰がプロテインじゃ。私、腕立て伏せ1回もできないからね!?」
私がカメラに向かって、怒ったように萌え袖の細い腕をぶんぶんと振り回すと、チャット欄は「可愛い」「威嚇するレッサーパンダ」と大盛り上がりだった。
するとその時、私の背後から「――おい、貴様」という、低く冷徹な声が響いた。
振り返ると、そこには全身に重厚な黒鉄の鎧を纏い、腰に大剣を下げた、いかにも「ガチの強者」といったオーラを放つスキンヘッドの大男が立っていた。
その胸元には、ギルドマスターすらも平伏する最高位の証――『S級冒険者』のバッジがギラリと鈍い輝きを放っている。
「……ピンクのツインテール。ダボダボのパーカー。そしてその、人を舐め腐ったもこもこの猫足スリッパ……。間違いない、貴様が巷を騒がせている『災厄の魔女・マッスルろいで』だな?」
「名前の後半部分に変な不名誉な称号を足すな。……で、そっちのツルツルのお兄さんは誰? 新しいコラボ相手?」
私がマイペースに配信端末を向けると、大男は不快そうに鼻を鳴らし、腰の大剣の柄にゆっくりと手をかけた。
「俺はS級冒険者のバルド。王宮からの直々の依頼だ。貴様がどれほどの暗黒魔法の使い手かは知らんが、俺の『対魔法・絶対切断』の大剣の前では、あらゆる術式がただの塵と化す。大人しく投降しろ」
S級冒険者――それは、一国に数人しかいない、文字通り「生ける伝説」とされる人類最高峰の戦闘力。
手配書を前にした広場の群衆たちが、「ひえっ、バルド様だ!」「あの魔女も、本物の英雄が出てきちゃお終いだな……」とサァッと蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
しかし、現在の私の同時視聴者数は、すでに700万人を超えていた。
全身に満ち溢れる熱狂エネルギーが、私のツインテールをネオンピンクに淡く発光させていく。
「へー、絶対切断ねぇ。……ねえみんな、本物の「S級」が釣れちゃった。これ、今日の配信のタイトル回収、余裕でいけそうだね!」
私はスリッパの踵をトントンと地面に打ち付けると、最高に楽しそうなドSスマイルで、伝説の英雄を真っ正面から見据えたのだった。
(つづく)
11話、12話、13話一挙投稿したのでぜひ見ていただけたら嬉しいです!
次回【14:00】頃に3話連続投稿します!




