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第10話:【乱入者】エリート魔術師「お前が不法侵入者か!」ろいで「あ、新しいコラボ相手だ」



「包囲せよ! 一歩も動かすな! 抵抗すれば容赦なく国家反逆罪として処刑する!!」



耳を劈くような鋭い号令と共に、岩山のてっぺんが、瞬く間に銀色の鎧と豪奢なローブを纏った集団によって完全に包囲された。


総勢五十名。


この国の国防の要であり、最高峰の精鋭が集まる『王宮直属エリート魔術師団』の面々だ。


誰もが手にした杖の先を私に向け、いつでも一国を灰にできるほどの強烈な魔力をパチパチと滾らせている。


その中心から、金髪をきっちりと七三に分けた、いかにもプライドの高そうな美青年の魔術師が一歩前へと進み出た。魔術師団長補佐のルカという男らしい。



「貴様が、初心者ダンジョンを一夜にして跡形もなく消滅させたという『災厄の魔女』か! 一体どんな禁忌の暗黒魔法を使った……って、おい、貴様は一体何を聞いているのだ!?」



「――はい、というわけでリスナーのみんな! 本日の緊急特別企画! 『異世界のエリート魔術師団を囲んでみた』のコーナーが始まりましたー!」



ルカの怒声を完全に無視して、私は浮遊する不可視のカメラに向かって萌え袖の手をパタパタと振っていた。


現在の同時視聴者数は、驚異の600万人を突破。


画面の右上のカウンターは、もはや数字が早すぎて目視できないレベルで暴れ狂っている。



▶:『緊急生放送キターーー!!!』


▶:『エリート魔術師さんの七三分けが綺麗すぎて草』


▶:『ろいでちゃん、完全にチートの容疑者として包囲されててワロタ』


▶:『コラボ相手(国家戦力)の圧が強すぎるwww』



「コ、コラボ相手だと……!? 貴様、さっきから誰に向かって喋っている! 貴様のその足元にある、もこもとした奇妙な足袋は何だ! 我々を愚弄するのも大概にしろ!」



「あ、これ? 猫足スリッパだよ。可愛いからお気に入り。てかさ、そっちのお兄さん、せっかくコラボしてくれたんだから、何か配信映えする一発芸とか持ってないの? 魔法とかドカンと一発撃ってみてよ」



ルカの額に、青筋がピキッと浮かび上がるのが見えた。



「……思い上がるなよ、無礼な不法侵入者が。我々をただの道化師と勘違いしているようだが、我が王宮魔術師団の真の恐ろしさ、その身に刻んでくれるわ! 詠唱を開始せよ! この不遜な魔女を、跡形もなく焼き尽くせ!!」



「「「『おおおおおお!!!』」」」



ルカの命令一髪、五十人のエリート魔術師たちが一斉に古代の呪文を唱え始めた。


ゴゴゴゴゴ……と大地が鳴動し、彼らの杖の先から、空を真っ赤に染め上げるほどの巨大な炎の嵐――最上位広範囲魔法『煉獄の劫火〈インフェルノ・バースト〉』が具現化していく。


その熱気だけで、周囲の岩石がドロドロに溶け出すほどの絶望的な威力だ。



▶:『うわあああ! マジで撃ってきた!!』


▶:『画面が真っ赤で見えん!!』


▶:『ろいでちゃん、今度こそ本当に危ないって!!』



『あああもうダメだ! ろいでちゃん! これを喰らったら灰すら残らないよ! 創造の神権でバリアを、いや、僕が代わりに肉壁に――』



ヘッドホンからりーくんが本日最大級の悲鳴をあげるが、私は鼻でフッと笑った。



「りーくん、うるさいから音量3%ね。――よし、じゃあこの派手な炎、配信の『背景エフェクト』としてハッキングしちゃいまーす。カタカタカタっと」



【神権:ライブエフェクト・強制変換】発動。



私の視界がデジタルノイズでピンク色に明滅し、迫り来る圧倒的な炎の嵐のソースコードが瞬時に書き換えられていく。



【オブジェクト:煉獄の劫火(広範囲魔法)】



【実行アクション:対象を焼き尽くす(熱量ダメージ)】



【変更後実行アクション:画面を華やかにする『お祝いの特大クラッカー&桜吹雪エフェクト』として出力】



――パーーーンッ!!!



凄まじい爆音と共に、私を飲み込んだはずの炎の嵐は、一瞬にして鮮やかなネオンピンクの紙吹雪と、きらきらと輝くホログラムの桜吹雪へと強制変換された。


何万度という熱量ダメージは完全な『ゼロ』。


私のパーカーのフードに、ひらひらとピンクの紙吹雪が優しく降り積もるだけだった。



「はい! 同接600万人突破のお祝いクラッカー、ありがとー!」



私が紙吹雪の中でポーズを決めると、目の前の光景が理解できずに、五十人のエリート魔術師たちが一斉に白目を剥いて硬直した。


杖を構えたまま、まるで石像のようにガタガタと震えている。



「な……ななな、何が起きたのだ……!? 我々が総魔力を込めた最上位魔法が……ただの、ピンクの紙きれに……っ!?」



▶:『魔法が広告スキップの次はクラッカーになってて草』


▶:『エリート魔術師団、完全にお祝いのサクラ役にされててワロタww』


▶:『ろいでちゃんを怒らせたら世界の物理法則がバグる』


▶:『スパチャ(100,000円):紙吹雪の演出料ですwww』



「よし! コラボの盛り上がりも最高潮になったところで、りーくん、お片付けの時間ね。このお兄さんたちもうネタ切れみたいだから、一発で強制ログアウトさせて」



『う、うぅ……。音量を3%にされて拗ねてたけど、もうどうにでもなれさ! 【神権:配信荒らし一斉BAN】発動ーーー!!』



りーくんのヤケクソな叫びと共に、私の手元から、巨大な『BANボタン』のホログラムが出現した。


私がそれを思いっきり叩くと、ネオンピンクの光の波が円形に広がり、エリート魔術師たちの足元をすり抜けていく。



「「「『ぎゃあああああああ!?』」」」



次の瞬間、五十人のエリートたちが、まるで電波の悪いテレビ画面のように激しくブレ始め、そのまま「シュンッ!」とデジタルノイズのように空間からまとめて消去ログアウトされてしまった。


彼らは死んだわけではない。神権の力によって、この街の遥か彼方にある、ギルドのゴミ捨て場あたりの座標へと強制転送されただけだ。


静まり返った岩山のてっぺんで、私はカメラに向かって、満足そうに萌え袖の手でピースサインを作った。



「はい、というわけでエリート魔術師団との初コラボ、大成功でしたー! みんな、たくさんのスパチャとお祝いエフェクトありがとね!」



こうして、国家最強の戦力をただの配信のオチに使ったパーカー女子は、さらにその名を異世界全土(と地球のインターネット)に轟かせていくのだった。



(つづく)

8話、9話、10話一挙投稿しました!

次回、明日の【12:00】頃に3話連続投稿します!

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