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突然ですがあなたは今日から死神ですよ!?  作者: 来栖槙礼
禍津御霊編
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第25話 桃太郎伝説再び

「クロ!! 状況は!? どこの区画から来た!? 」


 黄泉国の神庭宮に着くなりイザナミの執務室へと一気に駆け上がり扉を乱暴に開けながら藍は中にいるであろうクロに問いかけた。しかし、そこには誰もいない。どこにいるのだろうかと部屋の中を改めて見回すがやはり誰もいない。


「なぁ、藍。慌てすぎだって! ここじゃないって裏庭の東屋だから! 」


 倫也は移動しながらも状況確認の為にクロに通信を繋げたままにしていた為、現在の集合場所を把握出来ていた。


「すまない。倫也。俺はそんな単純な事も気を配れないほど焦っていたのか……」


 藍はここの所、本当にらしくないミスが多い。倫也もその事は分かっていた。


「藍が周り見えてないって結構面倒だからな〜。少し落ち着けよ!」


 倫也は藍の肩を叩くと裏庭の東屋へと向かっていく。


 東屋に入るとそこにはイザナミ、クロ、八十禍津日神、秋津、瀬織津姫、アメノウズメがいた。


「急に飛び出してすいませんでした」


 藍は開口一番に謝罪をした。


「気持ちは分かるけど、ももちゃんの事は皆、心配してるのは同じよ? それにもし、勝手に飛び出してあのまま危険な状況になれば戦況も悪化したかもしれないのよ? 厳しい様だけど藍の判断は今信用出来ないわ。今からは自己判断での行動を禁止するわ」


 イザナミが普段より声のトーンを落とし、自重を促す。


「あれ~? もう、俺の言うことないかなぁ~? 藍、そういう事だから次はないよ?」


 クロも言葉の最後は強く忠告した。


「さて、倫也と藍が戻ったところで禍津御霊の本陣へ入り込む作戦だが……」


「その前に!八十禍津日神様。黄泉国は今どんな状態なのですか!? 神木から神庭宮までは特に戦闘はありませんでしたが!?」


 八十禍津日神が作戦を説明しようとしたが倫也が現在の状況を確認しようと話に割って入った。


「倫也、心配はいらん。カグツチとオロチも出張っておる。出現箇所は商業区の東の外れじゃ。守護柱の各部隊も商業区、居住区それぞれに散開しておる。それよりお主は自分の心配をしたらどうだ? 最前線へいくのじゃぞ?」


「はい……分かりました。すいません! 続きをお願いします」


 頷くと八十禍津日神は再び話を始める。


「まずは敵地へどうやって行くのかとか、どこに敵地があるか? 根本的な事じゃが……場所など分からずともよい。敵の出てくる所に飛び込めば良い。簡単なこと、境界の出口は境界の入口ということじゃな」


「八十禍津日神様!? 理屈はそうかもしれませんが確実な保証がないのでは!?」


 アメノウズメが慌てて質問を返す。


「問題なかろう。現に通常の転移であれば曖昧な空間の黄泉比良坂を経由しなければなるまい? しかし奴らはこちらに直接、それも神木ではなく商業区に出たのじゃからな。ならば理屈はわからぬが黄泉国へと直に繋がっていると見て間違いないじゃろう」


 イザナミとクロはおおよそ推測していたのか八十禍津日神の仮説にそれ以上の意見はないようだ。


「まぁ、突撃の方法は良いとして、作戦は特にワシからはない。と言うか、どちらにせよ禍津御霊を速やかに叩くというのが現状では最善じゃな。そもそも少人数での出撃となる故、細かい事はクロに頼るしかないのだがな」


「一緒に禍津御霊の所まで行ってくれたらいいのに~。総隊長だなら仕方ないかなぁ~。一旗上げてこうかなぁ~」


 こんな時でも緊張感はないのだろうかこのクロと言う男は。倫也とウズメはクロを一瞥するとため息をつく。


「ただし、突入するメンツは俺が選ぶよ~? いいかな? それじゃ、藍と倫也と秋津。俺達の部隊のみで行くよぉ?」


「それは認めないわ」


 イザナミがクロの提案を棄却する。


「私も行きます。いえ、正直カンでしかないのだけれど私が行かないと行けない気がするの。あと、ウズメは待機よ?防衛戦のサポートをお願いしたいの。ここが抜かれれば避難した神族と神徒も終わりだから」


 イザナミが唇を噛み締め顔に悔しさを滲ませる。自分の神区に簡単に侵攻を許した事で自分を許せない様子だ。


「イザナミ様がここから離れられては黄泉国は誰が指揮を!?」


 ウズメは黄泉国の主神不在には不安しかない。


「その為に俺達がいる。イザナミ様。行ってください! 黄泉国の為に!!」


 戸を開けてカグツチが入ってきた。その後にはオロチもいる。


「イザナミ様。あとは我らにお任せ下さい。カグツチと共に、守護柱隊全員と共に必ずや黄泉国を守りお帰りをお待ちしております。」


 オロチもイザナミの意思を尊重する考えの様だ。


「カグツチ! オロチ! お前らここになんで!?」


 防衛線に張り付いていると思っていた二人が現れたので倫也は驚き、慌てた。


「倫也? お前、境界の裂け目がどこなのか分かるのか?」


「あ……」


「そういう事だ。第三部隊とイザナミ様の護衛と境界の裂け目への案内は俺達がやる」


 カグツチは指揮を死神隊の第一部隊隊長の桃也に任せ、禍津御霊の発生場所の特定にあたっていた。そして、東区のハズレにある祠がゲートの様になっている事を突き止めたのだ。


「カグツチ、オロチ。助かります。私達をそこまで案内よろしくお願いします」


 イザナミはそう言うと東屋を出て行った。倫也達もイザナミの後に続き出ていった。


「ヤソのおっさん。わりぃけど黄泉国の防衛はあんたにも手伝って欲しい。あとウズメ。お前のサポートも当てにしてるからな!」


 そう言ってカグツチも東屋を後にして商業区へと向かった。


「ウズメよ。あぁ言われてはこっそりついて行く事も出来ぬのぉ?」


 ウズメはバレていたのかとバツの悪い顔をしている。


「仕方ないですね。禍津御霊はイザナミ様達に任せて私は防衛のサポートに行きます! 八十禍津日神はここに?」


「神庭宮を、避難者をワシが護る。じゃが限度はある。くれぐれも年寄りに無理はさせないどくれよ?」



 ――黄泉国 商業区 中央部


 商業区の真ん中にある大きな広場に吉備津桃也は本陣を構えている。直径500メートル程もある、円形の広場には守護柱の一部隊と桃也の死神部隊の第一部隊が駐留していた。


 そこに張られた簡易テントで桃也が商業区に散開する守護柱と現在交戦中の東の戦線の状況を通信を使い確認している。


「よし。大体は把握出来たな。しかし、数がどうにも……奴らは神気をほぼ感じないのだが一体なんなんだろうか」


 敵の正体に検討もつかず、今のところ攻勢にはでず防戦に徹していた。今しがた住民の避難は完了したと斥候に出した義勇兵からの連絡が来た。なんとか敵を押し返したいが正体がわからない以上有効な作戦が思いつかない。


「なぁにムスッとしてるんです? 隊長がそんなんじゃみんな不安になっちまいますよ?」


 二本の刀を腰に差し、頭にはバンダナを巻いた男がお茶を桃也に差し出しながら話しかけた。


(シキ)か。すまんなムスッとしたように見えたか? 生まれつきだから気にしないでくれ」


 桃也か笑いながら差し出されたお茶を啜る。


「あ、式ー。私達にもお茶ちょうだい?」


 黒髪をポニーテールにした髪の長い女性がテントに入ってくるなり式にお茶を催促する。


「あー!私も、私も!」


 続けて入ってくる髪をふたつに結んだ女の子も同じようにお茶を催促した。


「お前らさ~少しは緊張感てもんを……隊長からもなんか言ってやってください!」


「これだけの状況を前に平常心を保てるなら頼もしいと思うがな?」


 桃也は冗談交じりに返す。式は溜息を吐きながら二人にもお茶を煎れる。


「はいよ!お待たせ。八雲(やくも)


 ポニーテールを揺らしながら式に近づきお茶を受け取る。


八重(やえ)!取りに来いって!」


「持ってきて? 式お兄ちゃん!」


 ツインテールの女の子は小首を傾げウインクして式にお願いする。


「はい。じゃ、ここに置いときますねっ!!」


 式は少し強めにテーブルの端に湯呑みを置いた。


「もう~! 式はぜぇぇったい妹萌えだと思うのに~! あ、もしかしてツンデレなのかなぁ~?」


 第一部隊は家族の様な雰囲気のあるとても仲が良く纏まりのある部隊だ。そして、この前線の緊張感の高まる状況においても平常心を保てるのもこの部隊ならではである。


 桃也達は少しの間、雑談をしながら過ごしていた。式はふと外が騒々しいことに気が付いた。


「どうした!? なんかあったのか!?」


 式はテントの外に出て周囲の状況を確認しようと声を上げる。


「東より小隊規模の敵がこちらに!!」


 守護柱の部隊員が式に駆け寄り報告する。式はその場で東区の方を振り向く。駐留する部隊が迎撃の準備を慌ただしくしているのが見える。


「まずいな。このままだと後手だな」


「後手に回っても大丈夫なんじゃないですか?なんと言っても君たちにはあの桃太郎がついてるでしょう?」


 式のはいきなり聞こえてきた声の主を探す。神気を感じない。だがはっきりと声は聞こえた。式は二本の刀を抜き構えながら周囲を警戒する。


「おやおや?僕はここにいるよ?」


 式はハッとする。目の前にそれも一足刀の間合いにその声の主はいた。式は飛び退き改めてその姿を確認した。白い軍服を纏う中年の男だ。髪はくせが強くだらしなく長い。瞳は蒼く片方の目は眼帯で覆われている。


「その服装。禍津御霊か。こちらの本陣に一人で来るとは大した自信だな」


 皆が気付くように式はわざと大きな声で話しかける。その声に気付き、桃也達もテントから出てくる。


「自信ね。無いこともないかな? それに……ん? あ、あぁ。やっと会えたかな? 想い人に! いやぁ嬉しいなぁ」


 男は桃也を見るなり嬉しそうに口を歪めた。そして桃也に話しかける。


「はじめまして。僕は温羅(うら)って言うんだけどね? 君は間違いなく吉備津の人間だね? 聞いた事はあるよね?僕の事はさぁ。悪いんだけど吉備津君。ここで君にはきえてもらうよ?そして、僕の瞳を返してもらうことにする!」


 ――続く







もーもたろさん、ももたろさん( ゜д゜)


きびだんごより現金だよ、現金|ω-`)



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