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オンナけもの、ふたりゆるりと。 〜アナグマ作家と銀狼OLの生活記録〜  作者: かかからす


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9/12

Episode 9 温泉へ行く前にラーメン

温泉久しぶりに行きたいな」


 言い出したのは凛音。

 確かに彼女は半年以上行ってない。温泉。

 私はこの前、友人と釣りの帰りに駆け足で温泉に入った。

 これをカウントするなら、三ヶ月ぶりくらいか。

 その時はゆっくりとは言えないスピード感で入ったので、私もぼちぼち温泉に入りたい。

 私はデートの予定と天気予報をスマホでポチポチ確認し、提案した。


「明日行かない? 横浜行く予定だったけどさ、なんか夕方から雷雨らしいよ」

「ええ、雨は嫌だから温泉にしようか」

「まあ夕方からだから、日中に行っちゃえば雨にも降られないで入れるしね。露天風呂も」

「お互い体のリズム的に大丈夫そ? 私は行けるけど」

「こっちも大丈夫」


 と、女の子の日についての確認もしっかりしておく。

 まあ、お互いなんとなく把握はしてるけど、旅行や温泉やプールに行くなら確認は必須よね。

 世の中の彼女持ちの諸君も、予定を組むときそれとなく気を使ってあげよう。


 うきうきしながら、迎えた当日。

 温泉施設といえば基本的に駅前には少ない。車必須だ。

 私は微妙に都会暮らしが長かったのもあり、車の免許は持っていない。

 べらぼうに酒を飲むのも免許を取らない理由の一つかもしれない。

 飲酒運転駄目絶対。

 凛音にはわざわざカーシェアで実家の前まで迎えに来てもらった。

 母が挨拶したら大変恐縮した様子で可愛かったと書いておく。

 ランチは車でしか行けないラーメン屋を予定している。

 特に渋滞などもなく、着いた頃にはお腹がペコペコになっていた。

 豚、鶏、魚介の組み合わせで六種類。塩、醤油、黒醤油の三種類のカエシ。

 更に麺も六種類あり、それぞれのスープに合うものが用意されている。

 無限の組み合わせを自分でカスタマイズして楽しめる、テーマパークのように楽しいラーメン屋である。

 あらかじめ決めていた私は、一足先に券売機で慣れた手さばきで選ぶ。


「私は豚・鶏・魚のトリプルスープで醤油にしよっと。お腹ペコペコだからトッピング全部乗せ!」

「私は決めてなかったな。いつも黒醤油にしがちだから同じ醤油のにしようかな。味玉もつけよう」


 麺は前述の通り、スープに対応してそれぞれ合うものが選ばれている。

 二人ともそのままのチョイスでお願いした。

 玄人ならここで細ちぢれ麺とかカスタマイズするんだろうな。

 二人掛けの席について、少し待つと程なくしてふたつの丼がサーブされる。

 大食いの凛音の丼は、今日は珍しくも控えめなビジュアルだ。

 一方私の丼は具の主張が激しい。味玉、きくらげ、メンマ、チャーシュー二種と鶏チャーシュー、角煮に白髪ねぎに青ねぎ。海苔は三枚。

 全部のせの名前に恥じないトッピング具合だ。もはや麺が見えない。


「いただきまーす」

「いただきます」


 と、二人揃って割り箸を手に取る。

 凛音はマズルの歯先で割り箸を横向きにかじって、もう片側を手で持ち、ちょっぴりワイルドに割った。

 このワイルドな割り方がモデルみたいな見かけに似合わず、また可愛いんだよな。

 ごく普通の家庭で育ってるから、割と庶民派だしね。

 心のなかで凛音のことを惚気ながら、私も食べ進める。

 スープをまずひとくち。

 一般的な中華そばよりも、少しコクがある。豚のだしが入ってるからだろう。

 次いで、鶏と魚の旨味が舌を翻弄する。

 麺を持ち上げ、すする。

 主張しすぎない、小麦の香りが心地よい。

 メンマはオーソドックスなコリコリ食感。

 きくらげといっしょに食べるとなお口の中のコリコリ感が増す。

 角煮をかじれば、角煮の甘みがスープに映える。

 麺をすすりながら、今度はスープにひたひたに浸した海苔を一枚、一緒にすする。

 うん、海苔の旨味がスープをさらに引き立てている。

 燻製チャーシューをかじり、味玉もぱくり。

 これはごはんが欲しくなるね。流石にオーバーカロリーだから我慢するけど。

 麺をすすりつつ、鶏チャーシューと白髪ねぎの塊をくずしてはむはむ口に入れる。

 鶏チャーシューの淡白さと、辛味がよく抜かれたネギのしゃきしゃきが良い。

 はふはふ、とお互い無言で食べ進める。

 私たちカップルは付き合ってもう一年以上経つので、いちいちわあわあ喋ったりはしないのだ。

 ラーメンは麺がのびると味が落ちるし。


 途中、おろしにんにくを少しだけ入れ、具だくさんラーメンを堪能する。

 今日の主題はラーメンではなくあくまで温泉だ。

 これはまだ道中にすぎない。

 あっという間に食べ進め、完食完飲。

 お店としては嬉しいだろうが、体には嬉しくないな、と苦笑する。

 ちなみに凛音は私が半分くらい食べた時点でもう食べ終わりかけていた。相変わらずの早食いだ。

 温泉施設までは少し距離があるため、お手洗いを借りて準備万端。

 車内に戻り、カーナビをセッティングし直し、凛音の運転で温泉施設へと向かう。

 下道はやや渋滞気味で、二人して眠くなってきた。

 お互いにあくびが移りまくるなか、涼しい車内でつぶやく。


「眠すぎる」

「うん。着いたら真っ先に休憩スペース行って30分くらい寝ようかな」

「それもいいね。自由にやってこ」

「まあ着いたら気が変わるかもしれないけど」


 と、あくび合戦をしながらやっとこさ温泉施設に到着。

 さあ、温泉が始まるぞ。

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