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オンナけもの、ふたりゆるりと。 〜アナグマ作家と銀狼OLの生活記録〜  作者: かかからす


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10/12

Episode 10 温泉施設からの雨模様

 温泉施設の混雑日を外したつもりだったが、思いの外ちょっぴり混んでいた。

 といっても、激混みでは無かったが。

 遠くも近くもない距離に駐車したら、二人でタオルやスキンケアセットを持って車内から出る。

 人間は髪の毛やフェイスケアをすればいいが、ケモノは全身の被毛も合わせてケアをしたいので、荷物は必然的に多くなる。

 風呂上がりにケモノ用の被毛ミルクや被毛オイルを忘れると全身の毛がキシキシになって最悪なのだ。

 その辺の無頓着なオスケモなら気にしないだろうけど、こちとら二人とも年頃のメスケモだ。

 やっぱり被毛はサラサラのふかふかにしたいよねってことで。


 温泉施設の作りは、一階に風呂設備があり、二階に着衣サウナと広めの休憩スペースがある。

 入浴自体はタオルを持ってくれば安くあがるが、休憩スペースはサウナ着を借りるチケットを買わなければ出入りできない。

 合わせればそれなりの額にはなるが、広い休憩スペースはかなり快適なので、マストだ。

 下駄箱に靴を入れ、チケットを券売機で買う。受付でサウナ着と敷タオルを受け取り、女湯に直行だ。

 ちょっと前に着いたらすぐ寝ようとは言ったが、汗がべたつくので風呂の誘惑には抗えない。

 ロッカーを隣同士に陣取り、慣れた手つきで服を脱ぐ。

 高齢者の割引日だったらしく、ご高齢の方がよく目につく。

 公共の場でいちゃつくほどお互い若くもないので、平然と全裸のまま、タオルで前を隠してロッカールームを出る。

 洗い場に向かえば、広い洗い場に迎えられた。

 広い洗い場だったが、どちらともなく隣同士で頭と体を洗い始める。

 こだわりのヒトやケモノなら、シャンプーやコンディショナーまで自前だろうが、そこまで品質にこだわっているわけではない。

 温泉施設のシャンプー等も、それほど品質が悪いとは思ってないし。

 目をつぶり、頭をわしゃわしゃと洗ってシャンプーを泡立たせる。

 うーん、汗でベタついていたからとても心地よい。

 ぬるめのシャワーで目をつぶりながら流すと、さっぱりとする。

 コンディショナーをたっぷりつけてと。

 洗顔にこだわりは無いので、ボディソープでまとめてものぐさに洗ってしまう。

 全身をくまなく洗ったら、頭からじゃあとシャワーで流し尽くす。

 前後左右に気を使いつつ、ぶるぶると身を振ればきれいなお鈴のできあがりだ。

 凛音は私よりは丁寧に洗うケモノなので、「お先ー」と声をかけて風呂のスペースに足を踏み入れる。


 室内のお湯は色々あったが、目当ては露天風呂だ。

 期間ごとに全国の名湯を模した成分に調整されているらしい。

 今回は北海道だった。

 日本は全国各地に温泉地があるもんなあ。

 私たちが住んでいる所も、山奥には確か温泉地があったような。

 室内の湯船はぎゅうぎゅうだったが、露天風呂は比較的空いていた。

 髪の毛をお団子に縛り、タオルを頭にのせ、静かに足先から温泉に浸る。

 肩まで浸かれば、ふー、と気持ちよさに思わずため息が出た。

 入浴中の暇つぶし用にか、奥側の壁には大きなテレビがある。

 テレビを見ながら足を伸ばしていれば、程なくして凛音がやってきた。


「鈴、お隣失礼」

「どぞどぞー」


 凛音が横に並んで露天風呂に座り、同じように肩まで浸かった。

 凛音も髪が長いのでもちろんお団子に結んである。


「気持ちいいね」

「北海道の温泉成分だってさ」

「へえ」

「そいえばそのうち七沢温泉とか行きたいなあ」

「わかる、創作合宿とか楽しそう」

「二泊三日くらいでね」

「ちょっといいご飯とかつけてみたい」

「ジビエとかあるかなあ? 大山の方があるかな」

「後で休憩室で調べてみるよ」

「うい、予定組も」


 言うだけならタダだ。といっても、この温度感なら実現まで持っていく感じだな。

 凛音も私もそう長風呂をする方ではない。

 私が上がるのに合わせて、凛音も上がるようだった。

 手持ちのタオルで拭いては絞り、水分を落として脱衣場へ戻る。

 そのまま、ロッカーから取り出したバスタオルで被毛や頭髪の水分を極限まで拭き取る。

 ケモノ用の業務用ドライヤーの前の椅子にタオルを敷いて座り、全身に被毛ミルクと被毛オイルを混ぜたクリームを塗り拡げる。

 あとはドライヤーでごおごおと無心になって乾かすだけだ。

 業務用なだけあって、ものすごいパワーと熱量だ。

 人間が頭髪を乾かすのと同じくらいの時間でケモノは全身を乾かすことができる。

 日本の謎の風習により、脱衣場の自販機で牛乳を買って一気飲みした。凛音はコーヒー牛乳にしていた。

 二人ともサウナ着に着替え、脱衣場の外のエレベーターで2階に上がる。

 無料のドリンクバーやデトックスウォーターがある。

 凛音がデトックスウォーターにはしゃぐ。


「喉乾いたね」

「飲むか、水分」


 たぱたぱと注ぎ、一気にあおる。

 お腹がちゃぷちゃぷだ。

 半個室になってる休憩スペースは、広さにばらつきがある。

 凛音は身体が大きめなので、一人で横になるようだ。

 私はといえば、せっかくなのでサウナを試してみることにした。

 サウナは2種類の香りがあるようだ。

 先に黄土サウナに入ってみることにした。

 ちなみに凛音とは帰る時間を確認して別れてきた。

 ドアを開けると、二重扉になっている。

 熱気を外に逃さないための構造だろう。

 二枚目の扉を開けて入ると、熱気が身体を包み込んだ。

 外の音が遮断され、リラクゼーションの音楽が静かに流れている。

 奥のスペースが空いていたので、サウナ用のタオルを敷き、寝転ぶ。

 湿気は少なめで、ほどほどの温度のサウナだ。

 岩盤浴に近い感覚だ。

 寝転んでいると自然に汗がじわりとにじみ出る。

 特にお喋りするような人もいなくて、ひたすらに静かに汗をかいた。

 10分程度経った頃か。

 もうきついかな、の手前でいそいそとサウナを出た。

 クールダウンするための、クールルームへと足を踏み入れる。

 冷房がキンキンに効いていて汗が一気に乾いていく。

 手持ちのミニタオルで汗を拭き拭き、ゆっくりと過ごした。

 今度はアメジストサウナにて、同じ工程を繰り返す。

 汗をかくってなんか気持ちいいよね。

 とはいえ、汗だくにはなってしまった。

 帰る時間までまだ余裕があったので、もう一度入浴することにした。

 一人きびきび、身体を洗って今度は室内の炭酸泉に軽くだけ入浴。

 お風呂から上がったら、二度手間のスキンケアとドライヤーを終える。

 凛音に連絡を入れ、一階のロビーで待ってると、凛音が約束の時間ちょうどにやってきた。


「お待たせ、待った?」

「ううん、時間通りだよ」

「そっか。帰ろうか」

「うん。外、結構雨降ってるみたい」

「げ、折りたたみ傘持ってきてよかった」

「私も持ってきてるー」


 予報通り、かなりの土砂降りだ。

 出入り口では立ち往生している人も見受けられる。

 まあせっかく温まったのに雨で冷えるのは嫌だよね。

 駐車場地味に広いし。

 凛音とトコトコ小走りで車に向かう。

 傘を畳んで車に入る一瞬で中々濡れてしまった。

 ビショビショってほどではないが。


「じゃ、帰りますか」

「うん。運転よろしくね」

「まかせろー」


 帰りは渋滞の前に帰ることができ、よい休日を過ごせた。

 温泉デートっていいね。


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