表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒焔に咲く薄桜  作者: 日ノ澤しの
第二章 宵を裂く禍

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/39

第九話 結界の綻び



第二章、第九話です。


今回は、前回の最後で起きた異変の続きとなります。




 東雲家の結界が震えた。


 それはほんの一瞬だった。


 だが、朔夜の表情は即座に変わる。


「朔夜様……?」


 澪が不安そうに声をかける。


 朔夜は立ち上がり、窓の外へ視線を向けた。


 紫紺の瞳が鋭く細められる。


「結界に干渉された」


 低い声だった。


 澪の胸がざわつく。


「干渉……?」


「ああ」


 東雲家の結界は皇都有数の強度を誇る。


 並の禍では揺らぐことすらない。


 それが震えた。


 つまり。


 何かが起きている。


 その時だった。


 廊下から慌ただしい足音が近づいてくる。


「朔夜様!」


 榊だった。


 珍しく呼吸が乱れている。


「報告です」


「何があった」


「中央区画周辺で小規模な禍が連続発生しています」


 室内の空気が張り詰めた。


「討伐済みではなかったのか」


「そのはずでした」


 榊は険しい表情で続ける。


「ですが瘴気の残滓が異常な速度で増殖しています」


 澪は息を呑んだ。


 中央区画。


 朔夜が命懸けで討伐していた場所。


 あれで終わったはずだった。


 なのに。


「まるで誰かが意図的に撒いているような……」


 榊の言葉に、朔夜の目が細められる。


 沈黙が落ちる。


 そして


「調査隊を出す」


 短く告げた。


     ◇


 翌日。


 東雲家は朝から慌ただしかった。


 術師たちが出入りを繰り返し、各地の情報を集めている。


 澪はそんな様子を廊下から見ていた。


 胸の奥が落ち着かない。


 また何かが起きている。


 それだけは分かった。


 その時。


「澪様」


 女性使用人が声をかけてきた。


「少しお顔の色が優れません」


「大丈夫です」


 そう答えたものの、本当は大丈夫ではなかった」


 昨夜から花弁が落ち着かない。


 風もないのに揺れる。


 まるで何かを警戒しているみたいに。


 ふと窓の外を見る。


 空は晴れている。


 なのに胸だけが曇っていた。


     ◇


 昼過ぎ。


 澪は中庭へ出ていた。


 少し気持ちを落ち着けたかった。


 春風が吹く。


 花々が揺れる。


 けれど。


 その穏やかな景色の中で、澪だけが違和感を覚えていた。


「……?」


 胸がざわつく。


 何かがおかしい。


 視線を巡らせる。


 すると。


 庭の片隅に、小さい黒い靄が見えた。


「え……」


 澪は立ち止まる。


 禍の気配。


 それも極めて弱いものだ。


 普通なら見逃してしまう程度。


 だが澪には分かった。


 その靄は、まるで地面から滲み出るように現れていた。


「どうして……」


 東雲家の結界内だ。


 本来なら禍が入り込めるはずがない。


 澪は慎重に近付づく。


 すると。


 ふわり、と。


 薄桜色の花弁が舞った。


 花弁は黒い靄へ触れる。


 その瞬間。


 靄が音もなく消えた。


 まるで最初から存在しなかったみたいに。


「……消えた」


 澪は目を見開く。


 今までこんなことはなかった。


 花弁が勝手に動いた。


 そして禍を消した。


 その時だった。


「何をしている」


 聞き慣れた朔夜の声が響く。


 振り返る。


「朔夜様」


 朔夜が経っていた。


 だがその表情は少し険しい。


「今のは何だ」


「私にも分かりません」


 澪は正直に答えた。


 そして先ほどの出来事を説明する。


 朔夜は黙って聞いていた。


 やがて地面へ視線を落とす。


「……瘴気の痕跡がある」


 澪の瞳が揺れた。


「やはり禍だったのですか」


「ああ」


 朔夜は静かに頷く。


「だが妙だ」


 紫紺の瞳が細められる。


「中央区画と同じだ」


 澪の胸が大きく跳ねた。


 中央区画。


 つまり。


 まだ終わっていない。


 あの異変は。


 朔夜は空を見上げる。


 その横顔はどこか険しかった。


「何かが動いている」


 その言葉に、澪は不安を覚える。


 春風が吹く。


 花弁が舞う。


 だが。


 その美しい景色の向こうで、確実に何かが動き始めていた。





第二章、第九話を読んでくださり、ありがとうございました。


今回は、中央区画の異変がまだ終わっていないこと、そして澪の力に新たな変化が現れ始めたことを描きました。


第二章後半では、


・禍の異常発生の真相

・薄桜のさらなる力

・東雲家と藤ヶ宮家の過去


へ少しずつ近づいていきます。


● ブックマーク

● 評価

● 感想


などいただけると励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ