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喰い譚-感情を喰う者-  作者: かさ


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第五章 第一話 見られているはずの男

――はいどうも、○○チャンネルのレンです。


 今日なんですけど、ちょっと面白い噂見つけたんで検証していこうと思います。


 「このリンクを開くと、自分の走馬灯が見える」


 ……まあ、正直胡散臭いよね。


 でもさ、こういうのって“本当に見えた”って言う人、絶対いるじゃん。


 だから今回は――実際に開いてみます。


 今から。


 概要欄にも貼っておくんで、自己責任でどうぞ。


 じゃ、いきます。


 ――クリック。


 ・

 ・

 ・


 「……は?」


 真っ暗。


 何も見えない。


 ほんの一瞬だけ、何かが“浮かび上がりかけた気”はしたけど――それだけだった。


「いや、これは弱いな……」


 苦笑しながらカメラを見る。


「まあ、見えた気がしたってことで。こういうのは雰囲気っしょ」


 軽く締めて、撮影を終える。


 


 編集を終えて、動画を投稿する。


 タイトルは少しだけ盛った。


 【検証】“開くと走馬灯が見えるリンク”を実際に開いた結果…


 サムネも、それっぽく。


 暗闇の中で、自分の顔を少しだけ歪ませる。


「……まあ、これで伸びたらラッキーくらいだな」


 スマホをソファに放り投げる。


 正直、手応えは薄い。


 こういう都市伝説系は当たる時は当たるけど、外すと普通に埋もれる。


 今回は――多分、後者だと思っていた。


 


 数時間後。


 何気なくスマホを手に取る。


 通知が、やけに多い。


「……ん?」


 画面を開く。


 YouTube Studio。


 再生数。


 ――12,874回再生


「……は?」


 一瞬、理解が追いつかなかった。


 更新する。


 ――13,102回再生。


「おいおいおい……」


 思わず笑いが漏れる。


 コメント欄も伸びている。


 高評価の数も、いつもと比べ物にならない。


「これ……当たってるやつじゃね?」


 鼓動が早くなる。


 指が止まらない。


 何度も更新する。


 数字が、増えていく。


 増えていく。


 増えていく。


 


 気づけば、部屋の中を歩き回っていた。


「やば……やばいってこれ」


 笑いが止まらない。


 こんな伸び方、初めてだった。


 今までコツコツやってきた動画が、全部まとめて報われたみたいな感覚。


「やっと……来たか」


 小さく呟く。


 誰に言うでもなく。


 ただ、自分の中で何かが満たされていく。


 ――“見られている”。


 その実感だけで、胸が熱くなる。


 


 通知が、また鳴る。


 チャンネル登録者数。


 +312


「はは……マジかよ」


 スマホを握る手が震える。


 止まらない。


 増え続ける。


 数字が、自分の価値を証明してくれているみたいだった。


 もっと。


 もっと見てくれ。


 もっと俺を――




 ふと、画面の端に映った自分の顔を見る。


 ――笑っていた。


 いつもより、少しだけ大きく。


 少しだけ歪んだ笑みで。


 でも、その違和感には気づかないまま。


「……これ、いけるな」


 次の動画のことを考える。


 もっと伸びるネタ。


 もっと見られる方法。


 もっと――


 認識されるために。


 スマホの画面には、今も数字が増え続けていた。


 再生数。


 高評価。


 登録者。


 すべてが、上に伸びていく。


 ――誰かに、見られている。


 その事実だけが、何よりも心地よかった。


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