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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第96話 新しい家

 ギルド長室。


 窓から差し込む昼の光が、机の上を照らしていた。


 部屋の中にいるのは三人。


 レオン。


 アステア。


 リーナ。


 その正面では、ギンが書類を確認している。


「今回の件、ご苦労だった」


 ギンが机へ袋を置く。


 報酬金。


 かなりの額だった。


 アステアが袋を持ち上げる。


「……重い」


 リーナも苦笑する。


「さすが緊急依頼ね」


 ギンは続ける。


「あと、レオン」


 視線が向く。


「今回の功績で、お前とリーナはほぼBランク確定だ」


「それから、アステアはCランク昇格だ」


 アステアが目を丸くする。


「マジかよ」


 リーナも驚いていた。


「……Bランク」


 Bランク昇格、冒険者として一気に上位へ入る。


 だが。


 ギンは肩を竦めた。


「ただし、依頼達成数が足りねぇ」


「正式昇格はまだ保留だ」


 レオンは短く頷く。


「了解した」


 その時だった。


 コンコン——。


 部屋の扉がノックされる。


 ギンが顔を上げた。


「入れ」


 扉が開く。


 中へ入ってきたのは、セレナとマリーナだった。


 以前より少しラフな服装。


 セレナは聖女服ではなかった。


 マリーナも豪華すぎるドレスではなく、動きやすい貴族服だった。


 部屋の空気が少し変わる。


 セレナが一歩前へ出た。


「ご報告があります」


 一拍。


「教会の聖女を辞めました」


 アステアが軽く目を見開く。


 リーナも驚いた顔をする。


 だが。


 セレナの表情は晴れていた。


 もう迷いはない。


 続いてマリーナが前へ出る。


「私も正式に冒険者になります」


 ギンが腕を組む。


「……なるほどな」


 そして。


 二人が並ぶ。


 ゆっくり頭を下げた。


「焚火の旅団へ入れてください」


 一瞬静かになる。


 レオンは二人を見る。


 そしてすぐに答えた。


「頭を上げてくれ」


 二人が顔を上げる。


 レオンは小さく笑った。


「こちらこそ、よろしく頼む」


 マリーナの表情が明るくなる。


 セレナも嬉しそうに笑った。


 その横で、リーナがニヤニヤしている。


「一気に賑やかになるわね」


 アステアも頷く。


「セレナとマリーナなら大歓迎だ」


 レオンが冷静に返す。


「料理の作り甲斐があるな」


 部屋に笑いが広がった。


 その時。


 リーナがふと思い出したように言う。


「ってことは二人も一緒に住むの?」


 マリーナが頷く。


「パーティーに入れたら、そのつもりでお父様とも話しました」


 完全に許可済みだった。


 ギンが鼻で笑う。


「侯爵様も随分変わったな」


 そして机へ書類を置く。


「二人はDランクからスタートだ」


「ヒーラーと魔法使いとしての実力は十分高いからな」


 セレナとマリーナが頷く。


「以上だ」


 ギンが椅子へ深く座る。


「……お前ら、このあと依頼か?」


 レオンが答えた。


「今日は鍛冶屋に寄ってから、新しい拠点へ行く予定だ」


 ギンが小さく笑う。


「……もう家持ちか」


 その言葉に、焚火の旅団の空気が少しだけ柔らかくなった。



---


 ギルドを出た焚火の旅団は、南区の鍛冶屋へ向かっていた。


 石畳の道。


 昼下がりの街は活気に溢れている。


 五人で歩くのは、これが初めてだった。


 リーナが前を歩きながら振り返る。


「二人とも、冒険者っぽい服でも買わないとね」


 マリーナが少し困った顔をする。


「やっぱりドレスでは駄目ですわよね……?」


 アステアが即答した。


「魔法使い用のローブなら魔法防御も物理防御も高い」


 セレナが苦笑する。


「私もずっと修道服でしたので、動きやすい服を探したいです」


 そんな会話をしているうちに、目的の鍛冶屋へ到着する。


 リーナが勢いよく扉を開けた。


「こんにちはー!」


 店の奥から聞き慣れた声が返ってくる。


「おう、久しぶりだな」


 鍛冶屋の親父だった。


 大きな腕を組みながら笑っている。


「お前等、大活躍だったみたいじゃねぇか」


 アステアが肩を竦める。


「死ぬかと思ったけどな」


 親父が笑う。


「そんな顔してる」


 そして視線が止まる。


 アステアが背負っていた大盾。


 完全に砕けていた。


 親父の眉がピクリと動く。


「……おいおい」


 アステアが苦笑しながら盾を下ろす。


「新しく作ってくれ」


 親父は壊れた盾を持ち上げる。


 深く刻まれた焦げ跡。


 歪んだ金属。


 上位魔法を真正面から受けた痕跡。


 親父が低く呟いた。


「……よく生きて帰ったな、これ」


 アステアが笑う。


「本当にな」


 その横では、レオンが蒼嵐刀とミスリル剣を机へ置いていた。


「メンテナンス頼む」


 リーナは弓を取り出す。


「こっちもメンテナンスをお願い」


 親父が頷いた。


「全部まとめて見てやるよ」


 その時。


 マリーナが店内を見回していた。


 並ぶ武器。


 鎧。


 冒険者用装備。


 どれも新鮮だった。


 セレナも興味深そうに見ている。


「冒険者の店って、初めて来ました……」


 親父が二人を見る。


「お? 新入りか?」


 リーナがニヤッと笑った。


「今日から正式加入よ」


 親父が目を丸くする。


「なるほどな」


 そしてマリーナを見る。


「じゃあ嬢ちゃんたちの冒険者装備必要だな」


 マリーナが少し悩む。


「どういったものがよろしいでしょうか?」


 リーナが頷く。


「魔法使い用のローブと、外套かなどちらも魔法付与が出来るから」


 セレナも少し嬉しそうだった。


「私もヒーラー用の服をお願いします」


 親父が豪快に笑う。


「ははっ、いいパーティーになってきたな!」


 店の中には、以前よりずっと賑やかな空気が流れていた。



---


 鍛冶屋を後にした焚火の旅団は、西区へ向かっていた。


 街の中心部から少し離れた区域。


 畑が続く、落ち着いた場所だ。


 やがて。


 レオンたちの前に、一軒の建物が見えてきた。


 石造りの二階建て。


 広い庭。


 さらに横には馬車を停められる大きな屋根付きスペースまである。


 リーナが立ち止まった。


「……え?」


 アステアも目を丸くする。


「デカくないか?」


 セレナは驚いたように周囲を見回している。


「お庭も広い……!」


 マリーナも静かに建物を見上げた。


「…小ぢんまりとした家ですわね」


 三人がマリーナを見る。


「……さすが侯爵家」


 リーナがボソッと口にした。 


 レオンは玄関の鍵を開けていた。


 ガチャリ。


 重い扉が開いた。


 中へ入っていく。


 広いリビング。


 長机。


 暖炉。


 二階へ続く階段。


 窓から差し込む光が室内を照らしていた。


 後ろから続いて、皆が入ってきた。


 そして。


「広っ!?」


 最初に声を上げたのはリーナだった。


 勢いよく中へ駆け込んでいく。


「探検しよう!」


 アステアも奥を覗き込む。


「風呂入れるかな」


 セレナがキッチンを見て嬉しそうな顔になる。


「ちゃんと料理できますね……!」


 マリーナはリビングの調度品を見て頷いた。


「これなら問題無いですわね」


 レオンは静かに室内を見回していた。


 宿ではない。


 借り部屋でもない。


 本当に、自分たちの場所だった。


 その時。


 二階からリーナの声が響く。


「レオン! 部屋決め早い者勝ちでいい!?」


 アステアが奥から戻ってくる。


「風呂場も別々で数人で入っても余裕だ」


 セレナが思わず笑う。


 マリーナも小さく笑っている。


 こんな賑やかな空気。


 以前の自分なら、想像もできなかった。


 やがて。


 全員がリビングへ戻ってくる。


 それぞれ少し興奮した様子だった。


 アステアが真顔で言う。


「風呂場が広い」


 リーナが呆れる。


「そこなの?」


 セレナは少し楽しそうに言った。


「お庭で薬草などの家庭菜園もできそうでした」


 マリーナが考えながら口を開く。


「数人の使用人は欲しいと思いますわ」


「依頼で拠点を空ける時に助かりますから」


 その空気を見ながら、レオンは小さく息を吐いた。


 ようやく。


 焚火の旅団は、本当の意味で前へ進み始めたのだった。



---


 夕方。


 西区の空が赤く染まり始めていた。


 新しい拠点の中では、荷物を運び込む音が響いている。


 リーナは二階を何度も行き来しながら、自分の荷物を部屋へ運んでいた。


「……忙しいな」


 アステアが呆れた顔をしている。


 セレナはキッチン周辺を整理している。


「食器類は、結構ありますね」


 マリーナも袖をまくりながら手伝っていた。


「侯爵家ほどではありませんけど、それなりに広いですわ」


 以前の貴族令嬢なら考えられない光景だった。


 だが本人は、どこか楽しそうだった。


 セレナも小さく笑っている。


 賑やかな空気。


 暖かな時間。


 少し前まで。


 焚火の旅団は三人だった。


 依頼を受け。


 旅をして。


 各々、宿へ戻る。


 それだけだった。


 でも今は違う。


 仲間が増えた。


 帰る場所もできた。


 リーナがやってきて、椅子へ座りながら呟く。


「なんかまだ実感ないわね」


 アステアも頷く。


「分かる」


 セレナが優しく微笑む。


「でも、素敵なお家です」


 マリーナも静かに周囲を見回した。


 暖炉。


 長机。


 笑い声。


 こんな空間を、自分が心地いいと思う日が来るなんて想像していなかった。


 その時。


 レオンが静かに口を開く。


「今日から——」


 全員の視線が向く。


 レオンは少しだけ周囲を見渡した。


 仲間たち。


 新しい拠点。


 そして。


 これから始まる新しい日々。


 小さく笑う。


「ここが、俺たちの家だ」


 一瞬静かになる。


 そして。


 リーナが嬉しそうに笑った。


「悪くないわね」


 アステアも大きく頷く。


「最高だろ」


 セレナは優しく微笑み。


 マリーナも静かに笑った。


 夕陽が差し込む新しい家。


 焚火の旅団の新しい日々が、ここから始まるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

この話で奴隷商編が終わりになります。


話しが上手く噛み合わない所があり、これから修正も一緒に進めていきます。

言葉遣い、話しの流れが、少しでも気になる点があれば教えて頂けると助かります。


今後の小説の書き方も、細かい描写がある方がより伝わりやすいと思うので、今後の展開の話しと1話から両方の書き方を修正していきますので更新頻度は少し遅くなりますが、より良い作品を読んでもらえるように頑張ります!


次回もお楽しみに。

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