表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/100

第91話 氷姫の封印

 ヴァルツが杖を掲げる。


 魔法師団も同じように杖を掲げる。


 魔法陣が幾重にも展開された。


 赤い光。


 熱風。


 平地の空気が揺らぐ。


 セレナがフラフラになりながら前へ出た。


「まだ…守ります……!」


 光の障壁が展開される。


 次の瞬間。


 轟音。


 火球。


 雷撃。


 氷槍。


 魔法が防御壁へ叩きつけられた。


 激しい衝撃。


 光の壁に亀裂が走る。


 セレナの顔色が一気に青くなった。


「っ……!」


 魔力がどんどん削られていく。


 そしてついに魔力の限界を迎える。


 パリンッ——。


 防御魔法が砕け散る。


 光の粒が宙へ舞った。


 セレナがその場へ両膝をつく。


「はぁっ……はぁっ……」


 肩で息をしている。


 もう魔力が残っていない。


 その瞬間。


 リーナが前へ出た。


 弓を構える。


 狙うのはヴァルツ。


 今は正面から射線が通る。


 リーナが矢を放つ。


 一閃。


 しかし。


 魔法師団が即座に反応した。


「プロテクト・ガード」


 矢が、ヴァルツの目の前で地面に落ちる。


 横にいた男が魔法を放つ。


「アイスバレット!」


 無数の氷弾。


 一直線にリーナへ向かう。


「くぅっ……!」


 横へ飛ぶリーナだが、避け切れない。


 氷が身体を掠めていく。


 肩。


 腕。


 足。


 赤い血が垂れる。


 それでもリーナは倒れない。


 睨み返す。


 その前へ。


 レオンが静かに歩き出した。


 ヴァルツがそれを見て笑う。


「ほぉ?」


 杖を向ける。


 火球。


 高速でレオンへ飛ぶ。


 だが。


 レオンは止まらない。


 ミスリルの剣を抜く。


 一閃。


 火球が真っ二つに裂けた。


 爆炎が左右へ流れる。


 ヴァルツの笑みが深くなる。


「……やるなぁ」


 だが。


 次の瞬間。


 その目が冷えた。


「もう消えろ」


 杖を掲げる。


 巨大な魔法陣。


 空気が震える。


 マリーナの顔色が変わった。


「……また上位魔法」


 ヴァルツが笑う。


 そして。


 ヴァルツが杖を振り下ろす。


「焼き尽くせ」


炎爆(ファイヤーノヴァ)


 巨大な魔法陣が眩く輝いた。


 空気が熱を帯びる


 圧倒的な魔力。


 周囲の冒険者たちが息を呑んだ。


 上位火魔法。


 巨大な火球が渦を巻きながらレオンへ向かっていく。


 一直線。


 逃げ場はない。


 レオンが静かに二刀を構えた。


 正面から迎え撃つ構えだ。


 全員の視線がレオンに向けられる。


 その背中を見た瞬間だった。


 マリーナの中で何かが切れた。


「だめ――――!!」


 叫び声。


 次の瞬間。


 胸元のペンダントが眩く光った。


 青白い光を放ち、空気が震える。


 直後。


 ドンッ——。


 凄まじい魔力の衝撃波が周囲を駆け抜けた。


 冷たい風が吹き荒れる。


 草木が揺れる。


 全員の髪が大きくなびいた。


 そして。


 レオンへ向かっていた上位火魔法が——消えた。


 跡形もなく。


 一瞬で。


 周囲が静まり返る。


 誰も動けない。


 ヴァルツが目を見開いていた。


「……は?」


 魔法師団も固まる。


 何が起きたのかわからない。


 セレナがゆっくり顔を上げる。


 リーナも息を呑んでいた。


 アステアが目を細める。


 マリーナの前。


 空中に何かが浮かんでいた。


 一本の杖。


 青白く輝く、美しい杖。


 氷の結晶のような装飾。


 静かに宙へ浮かんでいる。


 マリーナが震える声で呟いた。


「……お母様の、杖……?」


 杖が強く光る。


 まるで呼ぶように。


 導くように。


 マリーナはゆっくり手を伸ばした。


 そして。


 握る。


 瞬間。


 轟ッ——!!


 凄まじい魔力が噴き上がった。


 青白い光の柱。


 空へ伸びる。


 湖の水面が波打つ。


 空気が凍り始める。


 マリーナの視界が白く染まっていく。




---


 杖から記憶が流れ込んできた。


 白い世界。


 意識が沈んでいく。


 聞こえるのは、小さな咳の音。


 ゆっくりと景色が鮮明になっていく。


 部屋だった。


 薄暗い寝室。


 窓から柔らかな光が差し込んでいる。


 ベッドの上。


 一人の女性が横になっていた。


 長い銀髪。


 だが身体は痩せ細っている。


 苦しそうに呼吸をしていた。


 (……お母様)


 その膝の上。


 小さな女の子が眠っている。


 幼い頃の私だ――。


 母が優しく小さいマリーナの髪を撫でていた。


 その隣。


 椅子へ座る男。


 アルベルト・バイザック。


 今よりだいぶ若い顔をしている。


 だが。


 その表情は苦しそうだった。


 母が静かに口を開く。


「あなた……ごめんなさい」


 弱々しい声。


「もう、私は長くはないわ」


 アルベルトが俯く。


 何も言えない。


 母は小さく笑った。


 そして。


 眠るマリーナの頭を優しく撫でる。


「この子は……私以上の魔法の才能を持っています」


 アルベルトが顔を上げた。


 母は続ける。


「将来、この国で一番の魔法師になれるわ」


 その瞳が少しだけ曇る。


「ですが……魔力量が多すぎるの」


 空気が静まる。


「制御できるようになる前に、魔力が暴走して……この子は死んでしまうでしょう」


 アルベルトの拳が強く握られた。


 母は苦しそうに息を吐く。


「私がそばにいてあげられれば、それも防げるのに……それも叶わない」


 悔しそうだった。


 母親として。


 ただ娘を守りたかった。


 母はゆっくり視線を横へ向ける。


 そこには一本の杖。


 青白く輝く、美しい杖。


「だから……私の杖で魔力を封印させます」


「ペンダントとして、この子に肌見放さず持たせてあげて」


 アルベルトが目を見開く。


 母は続けた。


「杖が魔力を封印し続ける」


「その代わり……この子は魔法をほとんど使えなくなるわ」


 一拍。


「きっと、辛い思いをさせてしまう……」


 涙が零れる。


「あなたにも……娘を無能扱いさせてしまう」


 アルベルトが顔を歪めた。


 だが。


 静かに頷く。


 全て理解した上で。


 受け入れた。


 母が小さく微笑む。


「ごめんなさい……あなた」


 アルベルトは何も言わない。


 ただ。


 眠る幼いマリーナの髪を、アルベルトがそっと撫でた。


 震える手で。


 その時だった。


 母が優しく囁く。


「大丈夫よ、マリーナ」


 柔らかな声。


「あなたは……世界一の魔法使いになれる子だから」


 白い世界が崩れていく。


 景色が消える。


 そして。


 マリーナは現実へ戻った。


 頬を涙が伝っていた。

 


---


 頬を涙が伝う。


 だが。


 マリーナはもう俯いていなかった。


 ゆっくりと顔を上げる。


 その瞳には、迷いが消えていた。


 杖を握る。


 青白い光が全身を包み込む。


 風が吹き荒れた。


 魔力。


 今まで抑え込まれていた膨大な魔力が、一気に解放されていく。


 ヴァルツが目を見開いた。


「な、なんだその魔力は……!?」


 魔法師団もざわめき始める。


 空気が変わる。


 冷たい。


 周囲の温度が急激に下がっていく。


 モルガン湖の水面が凍り始めた。


 パキッ——。


 氷が広がる。


 湖全体へ。


 大地へ。


 白い霧が立ち込める。


 マリーナが静かに前へ歩き出す。


 一歩。


 また一歩。


 青白い光が足元へ広がっていく。


 そして。


 杖を空へ掲げた。


「ありがとうございます……お父様、お母様」


 一拍。


 涙を拭う。


「もう……マリーナは大丈夫です」


 その瞬間。


 杖が輝いた。


 マリーナがゆっくり杖を振るう。


 くるりと身体を回す。


 まるで踊るように。


 リーナが目を奪われていた。


「……綺麗」


 思わず漏れる。


 青白い光が舞い上がる。


 まるで氷の花が咲いたように。


 幻想的だった。


氷華乱舞(ブリザード・ペタル)


 次の瞬間。


 無数の氷の花びらが戦場へ降り注いだ。


 ひらひらと舞う。


 美しく。


 静かに。


 ヴァルツが眉をひそめる。


「なんだ……?」


 魔法師の一人が花びらへ触れた。


 瞬間。


 バキッ——。


 触れた腕から凍り始める。


「え……?」


 一瞬で肩まで氷に覆われた。


「あっ……あっ……助け——」


 最後まで言い切る前に。


 全身が氷漬けになる。


 魔法師団が一気に混乱した。


「防御しろ!!」


「魔法防御展開!!」


 障壁が張られる。


 だが。


 遅い。


 花びらが触れた瞬間、凍る。


 一人。


 また一人。


 氷像へ変わっていく。


 半数以上が一瞬で動きを止められた。


 ヴァルツが叫ぶ。


「なんだそれはぁぁぁ!!」


 さっきまでの余裕はもう消えていた。


 圧倒的な恐怖。


 理解できないものを見る目。


 その瞬間だった。


 ドサッ。


 隣にいた魔法師が倒れる。


 額には矢が刺さっている。


 リーナの放った矢だった。


 ヴァルツたちが急いで反応する。


 杖を構える。


 だが。


「もう遅いぞ」


 低い声。


 いつの間にか。


 レオンが魔法師団の目の前まで到達していた。


 レオンの二刀が閃く。


 一瞬。


 目の前の魔法師二人が崩れ落ちた。


 血が舞う。


 陣形が完全に崩壊した。


 残った魔法師たちの顔が恐怖に染まる。


 そして。


 ヴァルツだけが後ずさった。


 杖を震わせながら。


「ま、待ってくれ……!」


「助けてくれ! 金ならやる! 父親が全部悪いんだ!」


「この件から手を引く! だから——」


 レオンは静かに二刀を鞘へ収めた。


「お前の相手は俺じゃない」


 そして。


 レオンはマリーナを指差す。


 ヴァルツがゆっくりとマリーナを見る。


 そこには。


 杖を構えるマリーナがいた。


 涙はもうない。


 静かな瞳。


「氷華の(クリスタルランス)


 杖が光る。


 一筋の青白い光。


 次の瞬間。


 ヴァルツの胸を氷の槍が貫いた。


 バキバキバキッ——。


 一瞬で全身が凍りつく。


 絶望した表情のまま。


 ヴァルツ・ロータスは氷像となった。


 静寂。


 モルガン湖から吹く風だけが、静かに戦場を抜けていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします。

評価や感想もとても励みになります!


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ