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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第85話 祈りの裏側

 孤児院の中は、すでに制圧が進んでいた。


 ギルド職員たちが関係者を拘束していく。


 修道女。


 孤児院の職員。


 逃げようとした男たち。


 次々と縄をかけられていく。


 だが。


 レオンはまだ終わっていないと感じていた。


 視線を奥へ向ける。


 孤児院の最奥。


 セレナが以前言っていた場所。


「奥に鍵のかかった部屋がありました」


 その言葉を思い出す。


 リーナも同じことを考えていた。


「……セレナが言ってた部屋ってここ?」


 廊下の突き当たり。


 一枚の扉。


 見た目は普通。


 だが。


 鍵だけが異様に頑丈だった。


 レオンが前へ出る。


 腰の蒼嵐刀に手をかける。


 静かに抜刀。


 青白い刃が光を反射する。


 一歩、踏み込む。


 斬撃。


 金属音が響く。


 鍵が真っ二つに斬り落とされた。


 リーナが小さく口笛を吹く。


「相変わらず綺麗に切るわね」


 レオンは返事をしない。


 そのまま扉を開く。


 ギィ……。


 重い音。


 そして。


 全員の動きが止まる。


「……は?」


 リーナの声が漏れる。


 部屋ではなかった。


 地下へ続く階段。


 暗い。


 冷たい空気が流れてくる。


 湿った臭い。


 孤児院の空気とは明らかに違う。


 レオンの目が細くなる。


「……地下か」


「なるほどな」


 低く呟く。


「完全に裏施設だ」


 アステアが大盾を構える。


 腰の手斧に手をかける。


 リーナも背中の弓を下ろし構えながら進む。


 空気が変わる。


 何が起きても対処できるために。


 地下の奥。


 まだ見えない場所。


 だが。


 気配がある。


 人の気配。


 リーナが目を細める。


「まだいるわね」


 レオンがミスリルの剣を鞘から抜く。


 二刀を静かに構える。


「行くぞ」


 短い言葉。


 三人が階段へ足を踏み入れる。


 光が遠ざかる。


 地下へ。


 孤児院の“本当の顔”へ向かって。



---


 地下へ続く階段は長かった。


 石造り。


 湿った空気。


 足音が反響する。


 孤児院の下とは思えない。


 アステアは大盾を構え前を歩く。


 レオンが後ろを守る。


 リーナは中間。


 周囲を警戒しながら進む。


 やがて。


 階段が終わる。


 地下通路。


 壁には松明。


 明かりがある。


 使われている。


 最近どころではない。


 今も。


 アステアが小さく手を上げる。


 停止。


 前方。


 話し声。


「上が騒がしくねぇか?」


「確認してこいって——」


 男たち。


 武装している。


 修道士ではない。


 完全に裏の人間。


 レオンが小さく息を吐く。


「やるぞ」


 一瞬。


 三人が動いた。


 レオンが駆ける。


 最速。


 距離を潰す。


 男が気づく。


「な——」


 遅い。


 一閃。


 蒼嵐刀が喉を裂く。


 返す動き。


 ミスリルの剣がもう一人の脇腹へ突き刺さる。


 血が飛ぶ。


 倒れる。


 奥からさらに男たちが飛び出してくる。


「侵入者だ!」


 短剣。


 斧。


 武器を構える。


 狭い通路。


 アステアが前へ出る。


 大盾を叩きつける。


 轟音。


 正面の男たちが吹き飛ぶ。


 男たちの体勢が崩れる。


 そこへ。


 リーナの弓矢が襲う。


 一人目の喉に矢が突き刺さる。


 もう一人は目に矢が刺さり、悲鳴が響く。


 レオンが前へ出る。


 さらに奥。


 武装した男が二人。


 同時に踏み込んでくる。


 連携。


 慣れている。


 だが。


 レオンはさらに速い。


 低く潜る。


 左手の蒼嵐刀を構える。


 一人の膝を斬る。


 崩れた瞬間。


 ミスリルの剣を振り抜く。


 首から血が舞い、男の頭が転がる。


 最後の一人。


 アステアが後ろから突っ込む。


 盾で押し込む。


 壁へ。


 逃げ場を潰す。


 そのまま手斧を振り上げ。


 男の頭へ振り下ろす。


 地下がまた静かになった。


 先を見ると、奥にまだ通路が続いている。


 レオンが視線を向ける。


「……まだ終わってないな」


 三人が再び歩き出す。


 孤児院の地下深くへ。


 地下通路の奥。


 さらに重い扉があった。


 鉄で補強されている。


 明らかに重要区画。


 レオンが近づく。


 耳を澄ます。


 中から気配はしない。


「開けるぞ」


 短く言う。


 アステアが頷く。


 扉に体重を乗せる。


 ゆっくりと扉が開いていく。


 敵の気配はない。


 中は静かだった。


 広い部屋の中に棚と大きな机。


 積み上げられた書類。


 木箱。


 そして。


 壁際に並ぶ檻。


 今は空。


 だが。


 使われていた痕跡が残っている。


 リーナの顔が険しくなる。


「……最低」


 小さく吐き捨てる。


 レオンは机へ向かう。


 書類を確認する。


 一枚。


 また一枚。


 内容を見た瞬間。


 目が細くなる。


「売買記録か」


 横からリーナも覗き込む。


 名前。


 年齢。


 金額。


 商品番号のように扱われている。


 孤児たちの名簿。


 その下には移送先。


 ゴルゴア商会。


 ギースの名前。


 全部繋がっている。


 アステアが別の箱を開ける。


 中には契約書。


 教会印。


 子爵家の印。


 正式な取引記録。


 隠す気もない。


 レオンが低く呟く。


「……全部揃ったな」


 孤児院。


 奴隷商。


 オークション。


 そして子爵。


 全てに繋がる証拠品だ。


 リーナが机を強く叩く。


 怒りが抑えきれない。


「子供を売って……!」


 声に殺気が混じる。


 今にも誰かを殺しに行きそうな空気。


 アステアは黙ったまま周囲を確認する。


 まだ警戒は解かない。


 レオンが資料をまとめ始める。


「証拠として全部押収する」



---


 ギルド職員たちも地下へ降りてくる。


 部屋中を確認する。


 机の上の書類に目を通す。


 そして絶句した。


「……なんだ、これ」


 誰かが呟く。


 空気が重くなる。


 孤児院。


 祈りの場所。


 その地下にあったのは——


 人を売るための記録だった。



--- 


 孤児院の外。


 拘束された関係者たちが運び出されていく。


 ギルド職員たちが証拠品を整理していた。


 その時。


 通りの奥から重厚な馬車が近づいてくる。


 護衛付き。


 豪華な紋章。


 周囲の空気が変わる。


 馬車が止まる。


 ギンが前へ出ていく。


 扉が開いた。


 最初に降りてきたのは、中年の一人の男。


 鋭い目。


 威圧感のある立ち姿。


 その後ろ。


 赤い法衣を纏った老人。


 それから女性とマリーナが降りてくる。


 ギンが軽く頭を下げる。


「アルベルト・バイザック侯爵様、ルグニス枢機卿、お待ちしておりました」


 アルベルトが周囲を見る。


 孤児院。


 拘束者。


 運び出される証拠品。


 そして短く言う。


「ギン、他人行儀はよしてくれ俺達の仲だろ」


「よくやってくれた」


「悪いが今は、バルディアのギルド長としてだ」


 ギンが頷く。


「証拠品を確認していただきたい」


 ルグニスが目を伏せる。


 静かに。


「この一件、教会を代表してお詫びを」


 重い言葉。


 だが。


 周囲は静かなままだ。


 ギンが入口へ手を向ける。


「では中へ行きましょう」


 三人が歩き出そうとする。


 その時。


 アルベルトが足を止めた。


「少し待ってくれ」


 振り返る。


 その視線が冒険者達にへ向く。


「うちの出来損ないを引き受けたパーティーは?」


 ギンがレオンたちへ目を向ける。


 レオンたちが前へ出る。


 アルベルトがレオンを見る。


 値踏みするような目。


「君がレオン君かな?」


 一拍。


「うちの出来損ないは役に立っているかい?」


 リーナの眉がピクリと動く。


 アステアは無言でマリーナの方を見る。


 マリーナは下を向いたまま。


 何も言わない。


 レオンが静かに答える。


「……かなり助けられています」


 アルベルトが少しだけ目を細める。


「それなら良かった」


「初級魔法しか使えない出来損ないだ」


「この件が上手くいけば、嫁ぎ先の一つでも見つかるだろうからな」


 淡々とした声。


 そこに感情は薄い。


「では頑張ってくれ」


 そう言い残し、振り返りギンの所に戻って行く。


 アルベルト。


 ギン。


 ルグニス。


 三人が孤児院の中へ入っていく。


 続いて。


 マリーナも後を追う。


 その後ろ。


 もう一人の女性だけが足を止めた。


 静かにレオンの目の前まで歩いてくる。


 そして——


 頭を下げた。


 レオンが固まる。


 貴族がいち冒険者へ頭を下げている。


「ルシェリア・バルザックと申します」


「妹のマリーナをよろしくお願いします」


 静かな声。


 ルシェリアは顔を上げる。


 そして。


「あの子は、とても優しい子なので」


 一瞬。


 レオンの目がわずかに動く。


 ルシェリアは微笑み。


 それ以上は何も言わず、静かに背を向けた。


 その後ろ姿を。


 レオンは黙って見送っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もお楽しみに。

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