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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第75話 決行前夜

 ギルドの会議室。


 机の上には地図と資料が広げられている。


 レオン、リーナ、アステア、セレナ、マリーナ、そしてギルド長のギンが揃っていた。


 空気は静かだが、張り詰めている。


 レオンが口を開く。


「まずガルークだ」


 地図の一点を指で叩く。


「町外れの酒場兼宿屋、あそこが拠点だ」


「表はゴロツキの溜まり場だが、地下に牢がある」


「馬車で人を運び込んでいた」


 リーナが続ける。


「見張りは常時配置、裏にも動きあり」


「巡回もしてる、完全に組織ね」


 アステアが低く言う。


「……中には確実に人がいる」


 短い言葉。


 だが重い。


 ギンが頷く。


「間違いねぇな」


「そこが“入り口”だ」


 次に視線がセレナへ向く。


 セレナは静かに口を開いた。


「孤児院ですが……」


 一拍置く。


「表向きは、問題ありません」


「子供たちも、職員も……優しく接しています」


 だが。


「人数が合いません」


 部屋の空気がわずかに変わる。


「夜になると、子供がどこかに連れて行かれ、いなくなります」


「翌朝には、誰もそのことを話しません」


 静かな声。


 だが確実な事実。


「建物の奥に立ち入り禁止の区域があり、扉に鍵がかかっています」


「構造はこちらの地図にまとめてあります」


 机に紙を置く。


 ギンがそれを見る。


「……十分だ」


 低く言う。


 次に。


 マリーナ。


 視線が集まる。


 マリーナは軽く息を吐く。


「ゴルゴア商会ですが」


 淡々と話す。


「表は通常の商会ですわ」


「ですが奥に区画があり、VIP向けの部屋があり、途中に地下へ続く導線があります」


 レオンの目がわずかに細くなる。


「オークションはそこだな」


「ええ」


 マリーナは頷く。


「警備も普通の商会より配置されています」


「狙うならオークションの日に乗り込むのが一番かと、できればオークションに潜り込む必要がありますわね」


 そして。


「ロータス子爵ですが」


 一瞬だけ間を置く。


「今日から別荘へ向かいます」


 全員の意識がそこに集まる。


「移動に五日」


「滞在が二十日くらいみたいですわ」


 正確な情報。


 ギンがニヤリとする。


「いけるな」


 レオンが静かに言う。


「……全部、繋がったな」


 ガルーク。


 商会。


 孤児院。


 子爵。


 一本の線になる。


 リーナが腕を組む。


「流れが見えたわね」


 アステアも頷く。


「……あとは潰すだけだ」


 セレナは静かに言う。


「必ず、救いましょう」


 マリーナは何も言わない。


 ただ、静かに立っている。


 ギンが全員を見渡す。


「いいか」


 一言。


「これはただの依頼じゃねぇ」


 一拍。


「外せば、次はねぇ」


 重い言葉。


 だが。


 レオンは迷わない。


「外さない」


 短く言い切る。


 その一言で、空気が固まる。


---


 会議室の空気が、さらに引き締まる。


 ギンが地図の上に手を置く。


「日程を決めるぞ」


 誰も口を挟まない。


 全員が集中している。


 ギンの指が、ガルークを叩く。


「明日の昼レオン、リーナ、アステアは出発」


「2日後そのまま夜に叩け」


 レオンが即座に頷く。


「問題ない」


 リーナも続く。


「夜の方が動きが多い、都合がいいわね」


 アステアは短く。


「……任せろ」


 ギンが続ける。


「三日後にギルド職員を向かわせる」


「奴隷の保護と証拠の押収だ」


 セレナが小さく頷く。


「教会でも保護の準備もしておきます」


 ギンは一度、視線を全員に巡らせる。


「オークションだが——」


 一拍。


「これはもう分かってる」


 リーナが眉を動かす。


「……ああ、リーデルの件ね」


 ギンが頷く。


「押収品に記録があった」


「一月に一度、開催されてる」


 レオンが口を開く。


「次は」


「五日後だ」


 ギンがニヤリとする。


「その通りだ」


 机を軽く叩く。


「だから——」


「五日後」


 空気が張る。


「オークション当日を叩く」


 リーナが目を細める。


「……全部集まったところを潰すってわけね」


「効率がいい」


 レオンが頷く。


 アステアが低く言う。


「……逃がさない」


 ギンはそのまま続ける。


「それから七日後」


 視線がセレナへ向く。


「孤児院を攻める」


 セレナは静かに頷く。


「わたくしが子供たちを外へ連れ出します」


「西区の畑へ散策という形で」


「信頼できる教会騎士に護衛もお願いします」


 ギンが確認する。


「子供達を頼む」


 セレナは一瞬だけ目を伏せる。


「……はい」


 そして顔を上げる。


 決意。


 ギンが頷く。


「その間に孤児院を叩く」


 レオンが続ける。


「昼間に制圧」


「証拠確保」


 リーナも同意する。


「人がいない方が動きやすいわね」


 そして。


 ギンの指が、地図の端へ移る。


「九日目の朝」


「ロータス子爵を捕まえにいく」


 誰も言葉を発さない。


「子爵の別荘」


 一拍。


「五日で到着」


「十四日目」


 レオンが静かに言う。


「……最終戦だな」


「ああ」


 ギンが頷く。


「全部のケリをつける」


 机の上を指でなぞる。


「戦力はこうだ」


「ガルークは三人」


「レオン、リーナ、アステア」


 三人が頷く。


「オークションは五人」


「全員だ」


 セレナとマリーナも含めて。


「孤児院は三人」


「セレナとマリーナは外す」


 マリーナは何も言わない。


 表情も変わらない。


「子爵邸は五人」


「総力戦だ」


「ギルドも一緒に動く」


 重い一言。


 だが。


 レオンは変わらない。


「問題ない」


 アステアも。


「……やる」


 リーナは息を吐く。


「長丁場ね」


 セレナは静かに言う。


「必ず、終わらせましょう」


 ギンが全員を見る。


「いいな」


 確認。


 そして。


 誰も迷わない。


 その時。


 マリーナが一歩前に出る。


「では」


 淡々と。


「私は予定がありますので」


 誰とも目を合わせない。


「これで失礼いたします」


 一礼。


 完璧な所作。


 そのまま踵を返す。


 扉へ向かう。


 そして。


 何も言わずに部屋を出ていく。


 扉が閉まる。


 静寂が戻る。


 リーナが小さく舌打ちする。


「……最後まであれね」


 レオンは何も言わない。


 ただ。


 地図を見る。


 すべての点。


 すべての流れ。


 それを頭に刻む。


 もう、迷いはない。


 あとは——


 潰すだけだ。



---


 夜。


 バルディア南区。


 通りの一角にある、落ち着いた雰囲気の店。


 外観は控えめだが、内装は上質。


 冒険者が普段使いするような場所ではない。


 四人は、その店に入っていた。


 レオン、リーナ、アステア、セレナ。


 案内されたのは個室。


 扉が閉まると、外の喧騒は遠くなる。


 静かな空間。


 料理が並ぶ。


 香りが広がる。


 だが。


 誰もすぐには手を付けない。


 リーナが息を吐く。


「……なんか、変な感じね」


 椅子にもたれながら言う。


「静かすぎるっていうか」


 レオンが答える。


「明日からだからな」


 短い言葉。


 それで十分だった。


 アステアはすでに食べ始めている。


 無言で、だがしっかりと。


 セレナが小さく笑う。


「体力をつけておかないと、ですからね」


 その言葉で、少し空気が緩む。


 リーナも肩をすくめる。


「まぁ、そうね」


 フォークを手に取る。


 その時。


 壁の向こう。


 隣の部屋から、声が聞こえる。


「……バイザック家のあの三女、今日も来てたらしいぜ」


 男の声。


 軽い笑い。


「またかよ」


「懲りないな」


 リーナの手が止まる。


 セレナもわずかに視線を上げる。


「無能のくせに、よく出てこれるよな」


「魔法も大したことねぇんだろ?」


「ああ、聞いたことある」


「勉学も中途半端」


「なのに態度だけは一丁前の貴族様だ」


 くすくすと笑う声。


 アステアは何も反応しない。


 ただ食べ続けている。


 レオンも同じだ。


 何も言わない。


 リーナが、少し顔をしかめる。


「……やっぱり嫌いだわ」


 ぽつりと呟く。


「高飛車で、感じ悪くて」


 一口食べる。


 少しだけ強く噛む。


「魔法も強くないなら、無理してる感じじゃん」


「貴族社会で見栄張って、大変なんでしょうね」


 吐き出すように言う。


 セレナが静かに言う。


「でも……」


 一拍。


「そんなに悪い方には見えませんでしたけど」


 リーナがすぐに返す。


「それが余計に気に入らないのよ」


 少しだけ苛立ちを含んだ声。


「中途半端っていうか」


「どっちつかずっていうか」


 ため息。


「どうせ今回限りのパーティーでしょ」


「終われば関係ないわ」


 その言葉で。


 少しだけ、表情が軽くなる。


 どこかスッキリしたように。


 セレナは何も言わない。


 ただ、小さく視線を落とす。


 アステアは相変わらず無言。


 そして。


 レオン。


 何も言わない。


 ただ食事を続ける。


 否定も、肯定もない。


 その沈黙が、この場の答えだった。


 外の声は、まだ続いている。


 だが。


 四人はもう気にしない。


 それぞれの考えのまま。


 静かに食事を続ける。


 明日から始まる戦い。


 その前の、わずかな時間。


 穏やかで。


 だがどこか張り詰めた。


 静かな夜だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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評価や感想もとても励みになります!


次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
拠点制圧に時間開けて大丈夫なのかな? 酒場潰した時点で逃げられたり、証拠隠滅されたり、防備固めたり色々と抵抗増えそうだけど…
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