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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第74話 三つの視線

 レオン達がバルディアを出て、一日。


 街道は土の道へと変わり、車輪の跡が幾重にも刻まれている。


 行き交う馬車も多い。


 荷を積んだ商人、護衛を連れた隊商、旅人、冒険者。


 その流れに紛れるように、三人は馬車に乗っていた。

 レオン、リーナ、アステア。


 やがて視界が開ける。


 低い建物が並ぶ町。


 宿場町ガルーク。


 簡素な門はあるが、検問はない。


 誰でも出入りできる町のようだ。


 それが、この場所の性質を物語っていた。


「……人、多いわね」


 リーナが周囲を見渡す。


 市場の声、荷を運ぶ音、怒鳴り声と笑い声。


 一見すれば活気のある町だ。


「ああ」


 レオンは短く返す。


 だが視線は人ではなく動く馬車を見ている。


 荷の量が多い馬車。


 中身の見えない荷を積んでいる馬車。


「……妙ね」


 リーナが小さく呟く。


「あちこち護衛、多すぎない?」


「ただの中継じゃないな」


 レオンが言う。


 アステアは黙ったまま馬車に揺れている。


 だが耳が動き、空気を読む。


「……嫌な匂いがする」


「血か?」


 レオンが聞き返す。


「違う、もっと汚れた匂いだ」


 リーナも頷く。


「まずは馬車を降りて、町外れのアジトの調査ね」


 

---


 ガルークの中心で馬車から降りる三人。


「ガルークで宿泊したいのだけどおすすめはある?」


 乗っていた馬車の御者にリーナが声をかける。


「それなら、あそこに見える宿がいいぞ!飯も美味いし部屋も綺麗だ」


 指を差しながら教えてくれる御者。


「……逆に向こうには近づくな、ゴロツキのばかりで身ぐるみを剥がされても文句も言えねぇ」


 反対方向に指を差しながら教えてくれる。


「……ああ気をつけるよ」


 レオンが返事を返す。



---


 三人は中心から外れる。


 人通りが減る。


 さらに奥へ進む。


 音が遠くなる。


 代わりに静けさが張り付く。


「……ここね」


 リーナが止まる。


 古びた酒場兼宿屋。


 看板は傾き、壁は汚れている。


 だが中は騒がしい。


 笑い声、怒鳴り声。


 濁った空気。


 レオンはそのまま通り過ぎる。


 視線だけで観察する。


 入口に三人。


 武器持ち。


 酔っているようで意識は外にある。


(見張りか)


 見張りが見えないところで、裏側へ回る。


 踏み固められた地面。


 頻繁に使われている。


 大きな馬車が一台止まっている。


 布がかかっていて中身が見えない。


 ガタ……ギシッ……ガタ。


 だが馬車が少し揺れている。


「……数人の匂いがする」


 アステアが低く言う。


 かすかな音。


 引きずる音。


 押し込む音。


 小さな呻き声。


「まず地下の場所を探さないとね」


 リーナが言う。


「入口は中か、別のところあるのか……」


 レオンは周囲を見渡しながら怪しい所を探す。


 見張りの動き。


 見回りの巡回の時間、周囲をぐるりと1週する。


 無駄がない。


「……統制されてる」


 レオンが呟く。


「間違いなく地下はあの建物だな」


 アステアが返す。


 その時、馬車が来る。


 止まる。


 男たちが降りる。


 扉が開く。


 一瞬見えた人影。


 中から引きずり出される。


 抵抗はない。


 声もない。


 そのまま建物へ。


 扉が閉まる。


 事もなかったように。


 静寂。


 アステアの拳が強く握られる。


「……今すぐ潰すか」


「まだだ」


 レオンが止める。


「ここだけ潰してもかわりが出てきたら意味がない」


 一拍。


「潰すなら全部だ」


 アステアは何も言わない。


 だが理解する。


「夜にもう一度来ましょう」


 リーナが言う。


「動きが増える」


「ああ」


 三人はその場を離れる。


 振り返らない。


 だが目には焼き付いている。


 ガルーク。


 ここは人が集まる場所ではない。


 人が消える場所だった。



---


 バルディアのとある建物。


 教会が運営する孤児院だ。


 白い壁、整えられた庭。


 花が咲いている。


「おはようございます」


 セレナが微笑む。


 職員が頭を下げる。


 中に入る。


 子供たちの笑い声。


 走る足音。


 一見して普通の場所。


 セレナは子供たちと触れ合う。


「気をつけてくださいね」


 優しい声。


 笑顔。


(守られている子もいる)


 だが違和感。


 昼。


 配膳のお手伝い。


(……おかしい、子供が一人少ない)


 昨日調べたいのと人数が合わない。


 だが誰も気にしない。


 夜。


 静まり返る。


 セレナは目を閉じる。


 だが眠っていない。


 ドタ…ドタ…ドタ…ドタ。


 複数の足音が聞こえる。


 ギギィー……


 隣の部屋の扉が開く音が聞こえる。


 ガサ…ガサ…。


 何かを押さえた声。


 かすかな泣き声。


 すぐに消える。


 セレナは動かない。


(……今はまだダメ)


 翌朝。


 一人いない。


 誰も触れない。


 建物の掃除をしながら奥へ進む。


 大きい扉の前、この部屋だけ施錠されている。


(証拠品はここですね)


 位置を記憶する。


 構造を組み立てる。


 三日間。


 職員達とも話しをする。


「引き取り手がすぐに見つかる子もいて安心しております」


「子爵様が私財で援助もしてくださっておりますので孤児院としても有難いことです」


 職員の皆さんと話をして……。


 ここの職員はほとんどが黒だと確信に変わる。


 優しさと消失。


 セレナは全て記録する。


 この非人道的行為に終止符を打つために。


 地図として。


「これは聖女として、わたくしがしなければいけないことです」


聖女としての役割を改めて実感する。



---


 ゴルゴア商会。


 ここ最近、急成長を見せている商会である。


 石造りの大きな建物。


 平民や貴族、人の出入りが多い建物である。


 そこへ1台の豪華な馬車が目の前に止まる。


 中から黄色のドレスを着飾った女性が降りてくる。


 マリーナである。


 入り口に立っている門番が姿勢を正す。


「ようこそ、マリーナ様」


「ええ」


 そのまま中に入る。


 広い空間が広がる。


 色々な商品が並んでいる。


 一人の紳士的な装いの店員が近づいてくる。


「マリーナ様、本日は当店へご来店ありがとうございます」


「お探しものはどういったものでしょうか?」


「ホームパーティーをされるロータス子爵への贈り物ですわ」


 一瞬空気が変わる。


「どうぞこちらへ」


 店員に奥の扉を案内される。


 歩きながら周りを観察して歩き出す。



---


 扉をくぐると高級品がズラリと並んでいるのが分かる。


 それから……警備員の人数、配置、動線。


 さらに奥。


 急に部屋の構造が変わる。


 歩いているのにヒールの音がしなくなる。


 音が何も聞こえない。


 壁も厚くなっているのだろう。


 視線の先、真っすぐ進むと扉が見えるのと、途中左へと続く通路に看板が立っている。


[これより先、関係者以外立ち入り禁止]の看板。


 先には、下への階段が見える。


(地下)


 だが視線もすぐ戻す。



---


 一番奥の部屋に通されソファで待っていると、先程の店員がいくつか品物を持って戻ってくる。


「こちらが珍しい宝石で作ったネックレスになります」


「ロータス子爵の奥様にピッタリだと思いますよ」


「ではこちらをいただくわ」


 マリーナはその場で、購入を決め支払いを済ませる。


 席を立ち、そのまま部屋を出る。


 先程通ってきた通路をわざとヒールを突くようにして歩く。


(やっぱり音がしませんわね)


 扉を開き高級な品が並ぶ部屋に入り、またヒールを突いてみる。


 コーン…と音が響く。


 なるほど、と思いながらそのまま外に向かって歩いていく。


 商会から出て、馬車に乗り込む。


「通常の商会にしては警備員の数が多かったですわね」


 少し頭で、地図を描きながら警備員の数と通路の作りを考えていた。



---


 北区にある貴族街。


 華やかな貴族の邸宅が並ぶ。


 予定の三日目の夜。


 ロータス子爵家の夜会である。


 庭まで明るく照らされ、音楽を奏でる楽団が演奏をしている。


 一台の豪華な馬車が到着する。


 中からマリーナが下りてくる。


 門をくぐり会場に向かって歩いていく。


 マリーナに気付き近くの令嬢に声をかけられる。


「あら、あなたも来たのね」


「ええ、姉の名代として出席に来ましたわ」


 軽く会話を交わし会場へ。



---


 会場内に入ると、一瞬視線が集まる。


「あら無能な三女じゃない」


「侯爵家の出来損ない」


 聞こえない程度に陰口飛んでいる。


 マリーナは聞こえないふりをして無視する。


 そのままロータス子爵の元へ行き、挨拶を交わす。


「マリーナ嬢、本日は出席ありがとうございます」


「ロータス様、こちらこそお招き頂きありがとうございます」


 完璧な所作。


「最近事業が、お忙しいと伺いましたわ」


「そうなんですよ、明日から仕事でまた別邸へ行くんですよ」


「あら、そうですか?いつ頃まであちらにいらっしゃるのですか?」


「一カ月ほどで帰ってくる予定ですね、片道5日ほどかかりますので」


 軽い会話。


(五日、二十日、五日)


 (猶予は25日間以内ですわね)


 全て記憶する。


 やがてロータス家主催の夜会が終了した。


 会場から外へ向かって歩いていく。


 こちらを見て数人の令嬢たちが会話をしている。


「相変わらず高飛車な態度」


「侯爵家も大変ね」


「無能な三女」


 言葉を浴びる。


 だが無視をして止まらない。


 馬車へ戻ってそのまま乗る。


 静寂。


 何も言わない。


 表情も変えない。


 馬車が動く。


 誰も知らない。


 この三女が全て見ていたことを。




ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もお楽しみに。

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マリーナ主人公っぽいね。 表は無能の侯爵家三女で裏は有能な密偵ムーヴ…
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