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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第73話 交わらない温度

 ギルド長の部屋。


 静かな空気の中。


 レオンは、目の前の女性を見る。


 白い装い。


 柔らかな雰囲気。


「……セレナって、聖女なんですか?」


 レオンが口を開く。


「教会の人間なんですよね」


「本当に大丈夫なんですか?」


 空気が、わずかに張る。


 セレナは何も言わず、静かにこちらを見ている。


 代わりに。


「大丈夫だ」


 ギルド長、ギンが即答する。


「こいつは“こっち側”だ」


 一歩、言葉を重ねる。


「教会内部を探ってたのも、こいつだ」


「今回の件、かなり助けられてる」


 短いが、重い言葉。


 レオンは少しだけ視線を外す。


「……なるほどな」


 納得する。


 セレナが一歩前に出る。


「改めまして」


 柔らかく微笑む。


「セレナと申します」


「今回、皆さんと行動を共にさせていただきます」


 丁寧な言葉。


 空気が少し和らぐ。


 リーナも軽く頷く。


「リーナよ、よろしく」


 アステアは短く。


「……アステアだ」


 そして。


「レオンだ」


 簡潔な自己紹介。


 セレナは穏やかに微笑む。


 その空気を——


 少しだけ乱す声。


「……ずいぶんと簡素ですのね」


 マリーナ。


 腕を組み、軽くため息をつく。


「まぁいいですわ」


 一歩前へ。


「バイザック侯爵家三女、マリーナです」


「足を引っ張らないようにしてくださいな」


 高飛車な口調。


 一瞬で、空気が変わる


 リーナの眉が、ぴくりと動く。


「……ずいぶん偉そうね」


 静かに返す。


 マリーナは軽く笑う。


「事実を言ったまでですわ」


「こちらは貴族ですもの」


「それ相応の実力を期待するのは当然でしょう?」


 リーナが一歩踏み出す。


「実力があるならね」


 視線がぶつかる。


 ピリッと空気が張る。


 マリーナは余裕の笑み。


「ご心配には及びませんわ」


「わたくしの手さえ煩わせないでくださればね」


 余計に癇に障る。


 空気が悪い……。


「まぁまぁ、お二人とも」


 柔らかな声。


 セレナが間に入る。


「これから一緒に行動するのですから」


 優しく、落ち着かせる。


 リーナは小さく息を吐く。


「……そうね」


 一歩下がる。


 マリーナも肩をすくめる。


「仕方ありませんわね」


 ギルド長が軽く頭をかく。


「やれやれだな」


 一息ついて。


「今回の任務は特別だ」


「正式なパーティーじゃねぇが——」


「一時的に組んでもらう」


 ギンが全員を見る。


「目的はひとつだ」


「闇奴隷商の壊滅」


 重い言葉。


 レオンが頷く。


「問題ない」


 アステアも。


「……任せろ」


 短く。


 リーナは少しだけ肩をすくめる。


「まぁ、やるしかないわね」


 セレナは静かに


「よろしくお願いします」


 そして。


 マリーナ。


「足を引っ張らないことね」


 最後まで変わらない態度。


 だが。


 それでも。


 五人は、同じ場所に立った。


 冒険者。


 聖女。


 貴族。


 交わるはずのなかった立場が——


 今、ひとつの目的で繋がる。


 だが。


 その温度は、まだ揃っていない。


 仮初めの仲間。


 その関係が——


 どこへ向かうのかは、まだ誰も知らない。



---


 ギルド長の机の上に、地図が広げられる。


 バルディアと、その周辺。


 街道が何本も伸びている。


 人も物も行き交う、大動脈。


「今回の相手は、一カ所じゃねえ」


 ギンが低く言う。


「複数だ」


 指が動く。


 バルディアから伸びる街道。


 その先。


「ここだ」


 小さな町に印が打たれている。


「宿場町ガルーク」


「バルディアから馬車で一日」


 リーナが目を細める。


「……物流の中継ね」


 ギンが頷く。


「その通りだ」


「人も物も集まる」


「紛れ込ませるには都合がいい」


 一拍。


「町外れにある酒場兼宿屋」


 指で円を描く。


「ここが奴隷商のアジトだ」


「表向きはゴロツキの溜まり場」


「地元の人間は近づかねぇ」


 自然に隔離された場所。


「地下に牢がある」


「攫った人間は、まずそこに入れられる」


 アステアの拳がわずかに握られる。


「……見えないところに隠す、か」


「ああ」


「騒ぎにもならねぇ」


 レオンが静かに言う。


「まずここを潰すのか?」


 ギンが頷く。


「そうだ」


 次に、指が動く。


 バルディア内部。


「次はここだ」


 大きめの建物。


「ゴルゴア商会の建物だ」


「……商会?」


 リーナが眉をひそめる。


「表の顔だ」


 ギンが吐き捨てるように言う。


「こいつらがオークションを仕切ってる」


「夜になると“商品”が運ばれてくる」


「競りが始まる」


 一拍。


「奴隷を値段で売る場所だ」


 空気が冷える。


 セレナが静かに目を伏せる。


「……許せません」


 ギンは続ける。


「アジトから流れてきた連中はここに集まる」


「ここで“価値”をつけられる」


 番号。


 状態。


 種族。


「全部、商品だ」


 レオンの視線がわずかに落ちる。


「……流れが繋がったな」


 ギンが頷く。


「まだ終わりじゃねぇ」


 次に指が動く。


 バルディア内部。


「孤児院だ」


「教会が運営してる」


 リーナが静かに言う。


「……ここもか」


「表はな」


 ギンの声が低くなる。


「行き場のねぇ子供を保護する施設」


 一拍。


「だが裏じゃ“選別”だ」


「売れるガキだけ、流す」


 セレナの表情が強張る。


「そんなことが……」


「上が腐ってる」


「止めるやつがいねぇ」


 静かな怒りが部屋に落ちる。


 そして——


 最後。


 地図の端。


 バルディアから大きく離れた場所。


「ここだ」


「……遠いな」


 レオンが呟く。


「馬車で五日」


「湖のほとりだ」


 ギンが続ける。


「モルガン湖の別荘地」


「その中の一つが、黒幕のロータス子爵の別邸だ」


 静寂。


「金も、人も、全部ここに最後は流れる」


「奴隷商も」


「商会も」


「教会も」


「全部、ここに証拠品があるはずだ」


 完全な構造。


 レオンが短く言う。


「……逃げられないように準備が必要だ」


 ギンが頷く。


「そうだ」


「この全てを潰せば終わる」


 一拍。


「だが、簡単じゃねぇ」


「護衛も、裏の戦力も揃ってる」


 重い現実。


 だが。


「まずは順番に潰す」


 レオンが言う。


 迷いはない。


 ギンがニヤリと笑う。


「そのための順番だ」


「まずガルーク」


「奴隷商のアジトを潰す」


「次に商会とオークション会場を落とす」


「孤児院で証拠品と主犯を押さえる」


「最後にロータス子爵だ」


「…ただロータス子爵が別邸に行くときを狙わないと全て水の泡だ」


 明確な道筋。


 アステアが頷く。


「……タイミングが必要だ」


 リーナも小さく息を吐く。


「一つずつ、壊すだけだけどね」


 セレナは静かに言う。


「救える方は、全員救います」


 その言葉に。


 空気が揃う。


 その時。


「では」


 マリーナが口を開く。


「私はここで失礼しますわ」


 空気が少し緩む。


「このあとお茶会がありますの」


 当然のように言う。


 リーナのこめかみに、ピキッと筋が浮く。


 レオンは気にせず聞く。


「マリーナ」


「子爵の動向を掴めないか?」


 マリーナは少し考え——


「四日後ですわね」


「三日後にロータス子爵家主催のホームパーティーですの」


 一拍。


「私も出席いたします」


「子爵が動けば、すぐに分かりますわ」


 その言葉。


 しっかりと“役に立つ”。


 レオンが頷く。


「なら任せた」


「四日後の昼、ここ集合だ」


「ええ、構いませんわ」


 マリーナは優雅に一礼する。


「それでは、失礼いたします」


 そのまま部屋を出ていく。


 扉が閉まる。


「……ねぇ」


 リーナが低く言う。


「あいつ殴っていい?」


 真顔。


 レオンが即答する。


「やめとけ」


「貴族なんて大っきらいなのよね……」


 ぶつぶつ言うリーナ。


 その横で。


 レオンは地図を見る。


 ガルーク。


 商会。


 孤児院。


 そして……ロータス子爵。


「四日後までに準備だ」


 短く言う。


 アステアが頷く。


「……ああ、まずガルークに向かおう」


 セレナも静かに。


「私は、孤児院のお手伝いとして中を覗いてきますね」


 四人の視線が重なる。


 ここからは——


 みんなの戦いだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もお楽しみに。

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