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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第64話 救いの火

 焚き火の音が、遠くなっていた。


 外の喧騒はもうない。


 残っているのは——


 静寂と、血の匂い。



---


 レオンは洞窟の入口に立っていた。


 奥は暗い。


 煙がまだわずかに残っている。


 そして。


 微かに漂う、嫌な臭い。


 鉄。


 湿気。


 そして——


 人の匂い。



---


「……行くぞ」


 レオンが言う。


 リーナが頷く。


 その隣で。


 先ほど助けた少女が、小さく震えていた。


「……奥に、います」


 か細い声。


 だが確かだ。


 レオンは一歩踏み出す。


 洞窟の中へ。



---


 足音が響く。


 水滴の音。


 ポタ……ポタ……


 壁は湿っている。


 足元は滑る。


 光は少ない。


 だが。


 進むほどに、気配は濃くなる。



---


 カチャ……


 小さな音。


 金属。


 鎖。


 リーナの足が止まる。


 目が細くなる。


「……いる」


 少女が震える指で奥を指した。


「……あそこです」



---


 狭い通路を抜ける。


 視界が開けた。


 そこには——


 檻。


 木と鉄で組まれた簡易の牢。


 いくつも並んでいた。



---


 中には、人。


 うずくまっている。


 動かない者もいる。


 こちらに気づき、顔を上げる者もいる。


 だが——


 声はない。


 怯えた目。


 光を失った瞳。



---


 リーナの呼吸が止まる。


 一歩。


 踏み出す。


 そして。


 ある檻の前で止まった。



---


「……フェリス」


 小さな声。


 震えている。



---


 檻の奥。


 一人の少女がいた。


 痩せている。


 服は汚れている。


 だが。


 ゆっくりと顔を上げた。



---


「……リーナ……?」


 かすれた声。


 信じられないものを見るような目。



---


 次の瞬間。


 涙が溢れた。



---


 リーナが檻に手をかける。


「フェリス……!」


 声が揺れる。


 だが。


 壊れないように抑えている。



---


 レオンは何も言わない。


 静かに前に出る。


 鍵を確認する。


 粗雑な造り。


 迷わない。



---


 剣を抜く。


 一振り。


 ガンッ!


 鍵が砕ける。



---


 檻が開く。


 フェリスの身体が崩れそうになる。


 リーナが支える。


「大丈夫」


「もう大丈夫だから」


 何度も繰り返す。



---


 他の檻。


 他の人たち。


 レオンは順番に鍵を壊していく。


 一つ。


 また一つ。



---


 最初は警戒していた目が。


 少しずつ変わる。


 信じられないという顔。


 そして——


 わずかな希望。



---


 誰かが小さく言った。


「……助かったの?」


 レオンは短く答える。


「ああ」



---


 それだけで十分だった。



---


 洞窟の中。


 閉じ込められていた空気が、少しだけ動いた。



---


 リーナがフェリスを支えながら立つ。


 顔を上げる。


 レオンを見る。



---


 言葉はない。


 だが。


 その目で伝わる。


 ありがとう。



---


 レオンは軽く頷いた。


「外に出るぞ」


 闇の奥から。


 人が戻ってくる。


 光の方へ。



---


 洞窟の外。


 夜の空気は冷たかった。


 だが。


 その場には、人の気配が戻っていた。



---


 焚き火が広げられる。


 小さな火では足りない。


 レオンは薪を追加し、火を大きくする。


 炎が揺れる。


 光が広がる。



---


 助け出した女性たちは全員で六人だった。


 誰もが痩せていた。


 頬がこけている。


 動きも遅い。


 まともな食事を取れていないのは、見れば分かる。



---


「……座って」


 リーナが優しく声をかける。


 女性たちを焚き火の周りに座らせる。


 そして。


 馬車へ向かう。


 布をめくる。


 中から毛布を取り出す。


 一人一人にかけていく。



---


 レオンは洞窟へ戻っていた。


 中に残された荷。


 食料。


 酒。


 保存肉。


 乾パン。


 使えそうなものだけを選ぶ。


 無駄はない。


 すぐに外へ戻る。



---


「……やるか」


 短く呟く。



---


 焚き火の前。


 鍋を置く。


 水。


 肉。


 乾いた野菜。


 そして。


 香草。



---


 火加減を調整する。


 強すぎない。


 弱すぎない。


 じっくりと。



---


 コトコト……


 音が響く。


 夜の中。


 その音だけが、優しく広がる。



---


 匂いが立つ。


 肉の匂い。


 温かい匂い。


 リーナが気づく。


 女性たちも顔を上げる。



---


「……いい匂い」


 誰かが小さく呟いた。



---


 レオンは何も言わない。


 ただ。


 鍋を見ている。


 火を見ている。


 料理をしている。



---


 やがて。


「よし……できた」



---


 器に分ける。


 湯気が立つ。


 温かいスープ。


「ゆっくり食べろ」


 器を差し出す。



---


 最初は、戸惑っていた。


 疑うような目。


 だが。


 匂いが、それを崩す。



---


 一口。


 口に入れる。


 止まる。



---


 次の瞬間。


 女性から涙がこぼれた。


「……あったかい」


 震える声。



---


 もう一口。


 また一口。


 止まらない。


 夢中で食べていた。



---


 他の女性たちも同じだった。


 誰も喋らない。


 ただ食べる。


 必死に。



---


 焚き火が揺れる。


 夜が少しだけ、優しくなる。



---


 やがて。


 食事が終わる。


 器が空になる。



---


 その時だった。


「……あれ?」


 一人が呟く。


 腕を動かす。


 少し軽い。



---


「……体が」


 別の女性が言う。


「軽くなった……?」



---


 呼吸が楽になる。


 身体の重さが抜ける。


 疲労が薄れていく。



---


 リーナがレオンを見る。


「……すごい」


 レオンは肩をすくめる。


「まあな」



---


 女性たちの表情が変わる。


 さっきまでの虚ろな目ではない。


 少しだけ。


 力が戻っている。



---


「……ありがとうございます」


 小さな声。


 だが、しっかりした言葉。



---


 レオンは軽く頷くだけだった。


「今日はもう休め」


 リーナが動く。


 馬車の中を整える。


 毛布を敷く。


 女性たちを中へ誘導する。



---


「ここで寝てください」


 優しく言う。



---


 六人。


 静かに横になる。


 すぐに眠りに落ちる者もいた。


 安心したのだ。



---


 外。


 焚き火の前。


 レオンが座る。


 リーナも隣に座る。



---


「交代で見る?」


 リーナが聞く。


 レオンは首を振る。


「いや」


「二人で見るか」



---


 火が揺れる。


 夜が深まる。



---


 リーナが小さく言う。


「……助かった」


 レオンは答えない。


 ただ。


 火を見ている。



---


 静かな夜。


 だが。


 確かに守ったものがある。



---


 焚き火が、静かに燃えていた。



---


 朝。


 森に光が差し込んでくる。


 冷たい空気が少しずつ和らいでいく。



---


 焚き火の前。


 レオンはすでに朝食の準備をしている。


 鍋に火をかける。


 昨日と同じように。


 だが。


 空気は違う。



---


 女性たちが目を覚ます。


 ゆっくりと身体を起こす。


 顔色は、明らかに良くなっていた。



---


「……動ける」


 誰かが呟く。


 手を握る。


 足を動かす。


 昨日とは違う。


 確かな回復。



---


 レオンが器を差し出す。


「朝食だ」



---


 温かいスープ。


 女性たちはもう迷わない。


 自然に口に運ぶ。



---


 リーナがフェリスを支える。


「大丈夫?」


 フェリスが小さく笑う。


「うん……もう平気」



---


 食事が終わる。


 全員が既に立てるようになっていた。



---


「行こう」


 レオンが言う。



---


 再び洞窟へ入る。


 今度は証拠品を探すため。


 確認だ。



---


 奥へ進む。


 昨日の檻。


 そのさらに奥。



---


「……あった」


 リーナが言う。


 箱。


 袋。


 帳簿。


 売買の記録。


 名前。


 金額。



---


 フェリスが顔をしかめる。


「……ひどい」



---


 レオンは無言でそれらをまとめる。


「全部持っていく」



---


 証拠。


 これで終わらせるためのもの。



---


 洞窟を出る。


 朝の光が差し込む。



---


 馬車。


 女性たちを乗せる。


 毛布を整える。



---


「揺れるけど我慢してくれ」


 レオンが言う。


 誰も文句は言わない。



---


 馬車が動き出す。


 旧街道。


 そして。


 リーデルへ。



---


 門が見えてくる。


 門番が気づく。


 そして——


 目を見開く。


「おいレオン……その人達は……」


 レオンが止まる。


「闇奴隷商を壊滅させてきた」


 短く言う。


「証拠と、保護者だ」



---


 門番の表情が変わる。


「……すぐ通れ」


「ギルドに行け!」



---


 門が開く。


 そのまま進む。



---


 冒険者ギルドに到着する。


 リーナが中にいる女性達に声をかける。


「すぐに人を呼んできます、ここで待っていてください」


 そう言い残し、レオンを見る


 レオンは頷き、扉に向かって歩き出す。


 扉を開ける。



---


 バンッ!


 ギルド内に入ると同時に、レオンが叫ぶ。


「緊急報告!!」


 空気が止まる。


 視線が集まる。



---


 リズがすぐに近づいてくる。


「どうしたの——」


 レオンが言う。


「奴隷商を壊滅」


「証拠品と、女性たちを救出した」



---


 一瞬の沈黙。


 次の瞬間。


 空気が変わる。


「——全員動いて!!」


 リズが叫ぶ。


 他の受付に指示を飛ばす。


「医療班呼んで!」


「保護対象優先!」


「証拠品も回収、すぐ確認して!」



---


 ギルドが慌ただしく動き出す。


 その奥。


 扉が開く。



---


 アルヴェインが現れた。



---


 状況を見る。


 一瞬で理解する。


「……レオン、リーナ」


 静かな声。



---


「私の部屋へ」


「報告を聞く」


 レオンとリーナは頷く。



---


 一時間後。



---


 静かな部屋。


 報告が終わる。


 アルヴェインは目を閉じた。


 そして。


 ゆっくりと開く。



---


「……よくやった」


 短い言葉。


 だが重い。



---


「報告、確認した」


「証拠も十分だ」


 一拍。


「闇奴隷商は完全に壊滅」


 そして。


 レオンを見る。



---


「レオンくん」


 少しだけ口元が緩む。


「今回の功績により」


 一瞬の静寂。


「Cランクへの昇格を認める」



---


 レオンは何も言わない。


 ただ。


 小さく頷いた。


 隣で。


 リーナが少しだけ笑う。



---


 これで。


 怒涛の三日間が終わりを告げた。



---


 だが。


 ここからが——


 本当の始まりだった。



---

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もお楽しみに。

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10以上ヒトだったものが転がってるのに反応無いのは、反応できるほど心に余裕がないのか自分を拐った相手だから無反応なのか…どっちだろう?
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