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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第642話 旧街道の闇

 夜。


 街道にはまだわずかに人の気配が残っていた。


 遠くで荷馬車の音。


 焚き火の匂い。


 旅人の話し声。


 だが——


 レオンとリーナは、その流れから外れた。


 旧街道の脇。


 草に覆われた細い道。


「……こっちでいいのか?」


 レオンが小さく呟く。


 リーナが頷く。


「旧街道の今は使われてない細い道があるはず」


 足元の土は固い。


 だが草が伸びている。


 踏み固められていない。


 人の出入りがない証拠。


 ——のはずだった。


 レオンが足を止める。


 しゃがみ込む。


 地面に手を当てる。


「……あるな」


 指でなぞる。


 浅い溝。


 一直線に続く跡。


 リーナもそれを見る。


「車輪跡……?」


「しかも新しい」


 乾ききっていない土。


 最近通ったものだ。


 レオンが立ち上がる。


「使われてるな」


 リーナが小さく頷く。


「間違いない」



---


 二人は細い道とも言えなくなった道を進む。


 草を踏む音。


 土を蹴る音。


 夜の虫の声。


 風が木々を揺らす音。


 静かではある。


 だが——


 “音がする”


 森の奥とは違う。


 完全な静寂ではない。


 レオンはその違いを感じていた。


(人がいる場所の音だ)



---


 しばらく進むと。


 道はさらに細くなった。


 やがて。


 脇に逸れる小道が見える。


 ほとんど獣道のような道。


 だが。


 そこにも——


 跡がある。


「こっちだな」


 レオンが言う。


 リーナも頷く。


「奥に行ってる」



---


 山道に入る。


 傾斜がつく。


 足場が悪い。


 木々が密になる。


 だが。


 ここでも音は消えない。


 枝が揺れる。


 虫が鳴く。


 遠くでフクロウの声。


 そして——


 わずかに混じる別の音。


 レオンが手を上げた。


「止まれ」


 リーナがすぐに動きを止める。


 耳を澄ます。


 風の音。


 葉の擦れる音。


 そして——


 かすかに。


 金属が触れる音。


 カチャ。


 リーナの目が細くなる。


「……人」


 レオンも頷く。


「ああ」


 さらに。


 わずかに漂う匂い。


 煙。


 焚き火の匂い。


 レオンが小さく笑った。


「当たりだ」


 リーナは無言で頷く。



---


 二人は姿勢を低くする。


 音を抑える。


 足を静かに運ぶ。


 一歩ずつ。


 慎重に。


 やがて——


 木々の隙間。


 その先に。


 わずかな光が見えた。


 橙色の光。


 揺れる炎。


 人の気配。


 レオンが囁く。


「見えたな」


 リーナも小さく答える。


「ええ」



---


 旧街道の先。


 山道の奥。


 その先にあるもの。


 それは——


 人が作った怪しいアジトだった。



---


 木々の隙間。


 その向こうに、光が揺れている。


 橙色の炎。


 一定ではない。


 風に揺れる焚き火の光。


 レオンとリーナは身を低くしたまま、ゆっくりと近づいた。


 足音を殺す。


 呼吸を整える。


 一歩。


 また一歩。


 そして——


 視界が開けた。



---


 小さな空き地。


 そこにあったのは——


 馬車。


 荷台付きの大きなもの。


 無造作に停められている。


 そして。


 その前で焚き火を囲む男たち。


 三人。


 剣。


 粗い装備。


 だが。


 ただの旅人ではない。


 空気が違う。


 リーナが小さく呟く。


「……いた」


 レオンは答えない。


 視線を奥へ向ける。


 その先。


 岩肌。


 ぽっかりと口を開けた穴。


 洞窟。


 中から、わずかに光が漏れている。


「……あれが拠点か」


 リーナが頷く。


「間違いない」



---


 男たちの声が聞こえる。


 笑っている。


 酒瓶を傾ける音。


 肉を焼く匂い。


 どこにでもいるような光景。


 だが——


 その言葉は違った。


「今回のは当たりだな」


 一人が笑う。


「ああ」


「エルフが混じってるらしい」


 別の男が答える。


「マジかよ」


「それは高ぇぞ」


 下卑た笑い。


 レオンの視線がわずかに鋭くなる。



---


「今回何人いるんだ?」


「五人って聞いてる」


「ガキはいねぇのか」


「今回は女だけだな」


「そりゃいい」


 笑い声。


 焚き火が揺れる。


 肉の焼ける音。


 すべてが普通。


 だからこそ——


 歪んでいる。



---


 カチャ。


 わずかな音。


 レオンの視線が洞窟へ向く。


 奥から。


 何かを引きずる音。


 重いものが動く音。


 そして。


 かすかに。


 声。


 押し殺したような、小さな声。


 リーナの指が震える。


 だが。


 弓は構えない。


 まだだ。


 今は違う。



---


 レオンが小さく息を吐く。


 目を閉じる。


 一瞬だけ。


 そして開く。


 視線はもう迷っていない。



---


「……確定だな」


 小さく呟く。


 リーナも頷く。


「ええ」



---


 見えた。


 場所。


 敵。


 そして。


 中にいる“人”。



---


 あとは——


 どう潰すかだ。



---


 焚き火の光が揺れる。


 男たちの笑い声。


 酒の匂い。


 すべてが、すぐそこにある。


 だが。


 レオンたちは闇の中にいた。


 気づかれていない。


 まだ。



---


 レオンは視線を動かす。


 三人。


 位置。


 距離。


 死角。


 そして——


 巡回。


 一人が立ち上がった。


「ちょっと見てくる」


 軽い調子。


 剣を腰に差す。


 焚き火から離れる。


 森の方へ歩き出す。


 レオンの目が細くなる。


(来るな)


 足音。


 土を踏む音。


 近づく。


 一歩。


 また一歩。



---


 リーナが小さく息を呑む。


 弓に手がかかる。


 だが——


 レオンが軽く手を上げた。


 制止。


 リーナは動きを止める。



---


 男が近づく。


 暗闇へ。


 何も見えないはずの場所へ。


「……ん?」


 わずかな違和感。


 足が止まる。


 周囲を見る。


 あと数歩で——


 視界に入る。



---


 その瞬間。


 レオンが動いた。


 音はない。


 一瞬で距離を詰める。


 背後。


 左手の武器、短いナイフが握られている。


 光を反射しない黒い刃。


 男の口を押さえる。


 同時に——


 刃が走る。


 ザッ。


 浅くない。


 確実に。


 喉を断つ。



---


 声は出ない。


 空気が漏れる音だけ。


 男の身体が崩れる。


 レオンはそれを支える。


 ゆっくりと地面へ下ろす。


 音を立てない。



---


 静寂。


 何も起きていないように。


 世界はそのまま動いている。



---


 リーナが息を止めていた。


 ゆっくりと吐く。


 目の前の光景。


 人が倒れる。


 音もなく。


 一瞬で。



---


 レオンは手を離す。


 血が手に付く。


 それを気にしない。


 ただ。


 静かに立っている。



---


「……戻る」


 小さく言う。


 リーナが頷く。


「ええ」



---


 二人はその場を離れる。


 来た道を戻る。


 音を殺して。


 確実に。



---


 十分に距離を取る。


 焚き火の光が見えなくなる。


 そこでようやく——


 レオンが息を吐いた。


 短く。


 静かに。



---


 リーナが言う。


「……どうする」


 レオンが頷く。


「ああ」



---


 沈黙。


 だが。


 もう迷いはない。



---


 レオンが呟く。


「全部潰す」


 低い声。


 決意。



---


 リーナも同じ方向を見る。


 闇の奥。


 あの場所へ。



---


 討伐は——


 もう始まっている。



---

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次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
偵察にきて全貌分からないまま手を出しちゃうか… まあ、偵察のやり方習ってないし仕方ないのかな?
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