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食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


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第55話 英雄たちの帰還

 深層の森は静かだった。


 ついさっきまでの激戦が嘘のように、風だけが木々を揺らしている。


 倒れた巨体。


 三体のゴーレムが融合した魔物の残骸。


 巨大な鉱石の塊が、森の地面を深く抉っていた。


 誰もすぐには動かなかった。


 討伐隊の誰もが、その光景を見ていた。


 やがて。


「……終わったな」


 ドレイクが低く言った。


 その一言で、張り詰めていた空気がほどける。


 何人かの冒険者がその場に座り込んだ。


「助かった……」


「死ぬかと思ったぞ」


 誰かが笑い、誰かが地面に寝転がる。


 緊張が一気に抜けたのだ。


 銀嵐のメンバーも息を吐いていた。


 ミレアが弓を下ろす。


「はぁ……腕が震えてる」


 エドが苦笑する。


「俺もだ」


 セシルが周囲を見回す。


「負傷者は?」


 簡単な確認が始まる。


 幸い、致命傷はない。


 奇跡的な勝利だった。


 その時。


「カイル」


 グラードが呼ぶ。


 カイルは岩に腰を下ろしていた。


 剣を横に置き、息を整えている。


 顔色は悪い。


 魔力をほとんど使い切っていた。


「生きてるか」


「……なんとか」


 カイルは苦笑する。


 ドランが肩を貸す。


「無茶すんなよ」


「無茶しないと倒せなかっただろ」


 銀嵐の中に、小さな笑いが広がる。


 そのやり取りを見て、レオンは少し安心した。


 だが。


 次の瞬間。


「さて」


 ドレイクがゴーレムを見た。


 腕を組む。


「問題はこいつだ」


 巨大な残骸。


 このまま放置するわけにはいかない。


 グラードが槍を肩に担ぐ。


「核は壊れてる」


「再生はないだろう」


 ギルド長がゆっくり歩く。


 ゴーレムの残骸に触れる。


 しばらく観察し、頷いた。


「討伐確認」


 その言葉で。


 討伐隊の空気が変わった。


 静かな達成感。


 誰かが言った。


「……勝ったんだな」


 誰かが笑う。


 そして。


 小さな歓声が上がった。


 やがてそれは広がる。


 深層の森に、勝利の声が響いた。



---


 帰還の準備が始まる。


 負傷者を確認し、装備を整え、隊列を組む。


 長い戦いだった。


 だが、ここで油断はできない。


 まだ森の奥だ。


 ドレイクが声を上げる。


「移動するぞ」


 討伐隊が動き出す。


 森を抜ける道。


 来た道を戻る。


 その途中。


 カイルがレオンの横に並んだ。


「なあ」


「はい?」


 カイルが笑う。


「助かった」


 レオンは少し驚く。


「俺は何も……」


「いや」


 カイルは首を振る。


「お前のおかげだ」


 核の防御。


 作戦。


 全部だ。


「お前がいなきゃ、あれは倒せなかった」


 レオンは言葉に詰まる。


 そんなことを言われるとは思っていなかった。


 その時。


 ドランが後ろから言う。


「俺もそう思う」


 ミレアが笑う。


「作戦、完璧だったわよ」


 エドが肩をすくめる。


「料理人が戦術家とか笑えるけどな」


 セシルが微笑む。


「でも本当です」


 レオンは少し照れた。


 だが胸の奥が熱かった。


 このパーティーの一員だと。


 そう感じた瞬間だった。



---


 やがて森を抜ける。


 遠くに街道が見える。


 リーデルの街へ続く道。


 ドレイクが振り返る。


「帰るぞ」


 討伐隊が歩き出す。


 大きな勝利を背負って。


 その時。


 ギルド長がレオンを見る。


 静かな目。


「面白い」


 それだけ言った。


 だが。


 レオンには分かった。


 見られている。


 評価されている。


 そして。


 この戦いは終わったが。


 自分の物語は、まだ始まったばかりだと。


 街道の先に、リーデルの城壁が見えた。


 高い石壁。


 大きな門。


 行き交う荷馬車。


 いつもと変わらない光景のはずだった。


 だが。


「……おい」


 門番の一人が目を細める。


 街道の向こう。


 森の方から、大勢の冒険者が歩いてくる。


 討伐隊だ。


 それも。


 ただの帰還ではない。


 隊列の中央。


 荷台に積まれているもの。


 巨大な鉱石の塊。


「……なんだあれ」


 門番が呟く。


 討伐隊が近づく。


 先頭にいるのは。


 黒い大剣を担いだ男。


 ドレイク。


 Bランク冒険者。


 この街の主戦力。


 門番が声を上げる。


「ドレイク!」


 ドレイクが軽く手を上げる。


「開けろ」


 短い言葉。


 門が開く。


 そして。


 討伐隊が街へ入った。


 その瞬間。


 ざわめきが広がる。


「討伐隊だ」


「戻ってきたぞ」


 街の人々が足を止める。


 だが。


 すぐに気づく。


 荷台。


 そこに乗っているのは。


 見たこともない巨大な魔物の残骸。


「……あれ」


「まさか」


 門番が呟いた。


「ゴーレム……?」


 その言葉が広がる。


「ゴーレム?」


「倒したのか?」


「嘘だろ」


 討伐隊が通り過ぎる。


 その後ろ。


 銀嵐が歩いていた。


 カイル。


 ドラン。


 ミレア。


 エド。


 セシル。


 そして。


 レオン。


 街の視線が集まる。


 人が増える。


 ざわめきが大きくなる。


「本当に倒したのか?」


「深層だぞ」


「ありえねえ」


 その時。


 ギルドの建物が見えてきた。


 石造りの大きな建物。


 冒険者ギルド・リーデル支部。


 ドレイクが振り返る。


「行くぞ」


 討伐隊がギルドへ向かう。


 扉が開く。


 中は昼過ぎの時間。


 冒険者で賑わっていた。


 だが。


 扉が開いた瞬間。


 空気が止まった。


 全員が振り向く。


 沈黙。


 そして。


 誰かが言った。


「……ドレイク?」


 さらに。


 荷台を見る。


 巨大な金属の塊。


 ゴーレムの残骸。


 一瞬の静寂。


 次の瞬間。


 ギルドが爆発した。


「おいおいおい!!」


「マジかよ!!」


「ゴーレムだ!!」


「深層のゴーレムじゃねえか!!」


 冒険者たちが立ち上がる。


 椅子が倒れる。


 酒がこぼれる。


 騒ぎが止まらない。


 受付のリズが目を見開く。


「ドレイクさん……!」


 ドレイクは肩をすくめる。


「討伐成功だ」


 その一言で。


 ギルドが完全に沸いた。


「嘘だろ!!」


「やりやがった!!」


「化け物どもめ!!」


 歓声が上がる。


 拍手。


 叫び。


 騒ぎは止まらない。


 その中で。


 レオンは少し戸惑っていた。


 こんな大騒ぎになるとは思っていなかった。


 その時。


 横でカイルが笑う。


「歓迎されてるな」


 ドランが言う。


「当然だろ」


 ミレアが肩を叩く。


「私たち英雄よ」


 エドが苦笑する。


「大げさだな」


 セシルは静かに言った。


「でも……嬉しいですね」


 レオンは少しだけ笑った。


 胸の奥が温かい。


 ここに来た時。


 自分はただの新人だった。


 Eランク冒険者。


 だが今。


 このギルドの中心にいる。


 その時。


「静かに」


 一瞬で。


 ギルドが静まる。


 全員が見上げる。


 そこに立っていたのは。


 ギルド長のアルヴェインだった。


 エルフの青年。


 静かな目。


 そして。


 一言。


「まずは我々は帰還した」


 短い言葉。


 だが。


 その声には確かな重みがあった。


 討伐隊が帰還した。


 深層のゴーレムを倒して。


 歴史に残る討伐を成し遂げて。


 リーデルの街は。


 今、英雄を迎えていた。



---


 ギルドの喧騒は、まだ収まっていなかった。


 討伐隊の周囲には、いつの間にか大勢の冒険者が集まっている。


 その中心。


 ギルドの広間に運び込まれたのは——


 巨大なゴーレムの残骸だった。


 鉱石の塊。


 砕けた装甲。


 割れた核。


 床が軋むほどの重量。


「でけえ……」


「これ全部持って帰ってきたのか」


 冒険者たちが驚いた声を上げる。



------


 ギルド長が静かに近づいた。


 残骸の前で足を止める。


 手袋をはめた指で、砕けた装甲を撫でる。


 そして。


「……なるほど」


 小さく頷いた。


 周囲の視線が集まる。


 ドレイクが腕を組む。


「どうした?」


 ギルド長は答える。


「ミスリルの純度も一級品ですね」


「ただ……装甲が自然のものとは思えない」


 一瞬。


 ギルドが沈黙した。


 「まぁ…気にしすぎですかね」


 「しかしミスリルゴーレム3体分ですから、ミスリルが大量です。」


 希少鉱石。


 普通の武器屋では手に入らない。


 王都でも高値で取引される素材。


 それが。


 これだけの量。


 目の前にある。


 冒険者たちの目が輝く。


「凄ぇ装備が作れるぞ」


「しかもかなりの数だよな」


「ヤバすぎる」


 グラードが笑う。


「こりゃ鍛冶屋が泣いて喜ぶな」


 ドレイクがギルド長を見る。


「分配は?」


 ギルド長は少し考えた。


 そして言う。


「もちろん討伐隊で分配する」


 当然の判断だった。


 この素材は。


 命を賭けて手に入れたものだ。


 だが。


 その時。


「俺はいらねえ」


 グラードが言った。


 周囲が振り向く。


「何言ってんだ」


 ドレイクが眉をひそめる。


 グラードは肩をすくめた。


「俺はもう引退してる」


 槍を軽く持ち上げる。


「それに俺はこれで十分だ」


 ギルド長が静かに見る。


 それからグラードは銀嵐を見る。


 カイル。


 ドラン。


 ミレア。


 エド。


 セシル。


 そしてレオン。


 少し笑った。


「こいつらに回せ」


 静かな声。


「銀嵐の装備を整えてやれ」


 カイルが驚く。


「……グラードさん」


 グラードは手を振る。


「遠慮すんな」


「若い連中の装備が強くなる方が街のためだ」


 ドレイクが笑った。


「ふっ……相変わらずだな」


 ギルド長が頷く。


「了解した」


 そして。


 ミスリルの塊を見た。


「鍛冶屋に運ぶ」


「最高の装備を作らせよう」


 その言葉に。


 冒険者たちがざわつく。


 ミスリル装備。


 夢の武具だ。


 銀嵐のメンバーは少し戸惑っていた。


 カイルが苦笑する。


「……大事になってきたな」


 ドランが笑う。


「悪くねえ」


 ミレアが肩をすくめる。


「ミスリルの弓矢か……」


 エドが目を細める。


「杖も作れるな」


 セシルは静かに微笑む。


「すごいですね」


 その時。


 カイルがレオンを見る。


「お前もだぞ」


 レオンが顔を上げる。


「え?」


「お前の武器も作るぞ」


 カイルが言う。


「ミスリルの剣だ」


 レオンは少し驚いた。


 今まで使っていた剣は普通の鉄。


 だが。


 ミスリル。


 それは冒険者にとって特別な武器だ。


 カイルが笑う。


「当然だろ」


「作戦立てたのはお前だ」


 ドランが頷く。


「功績はでかい」


 ミレアが言う。


「遠慮するな」


 レオンは少し考えた。


 そして。


「……ありがとうございます」


 頭を下げた。


 その姿を見て。


 グラードが小さく笑った。


「いい顔してるじゃねえか」


 ギルド長が言う。


「鍛冶屋を連れてこい


 そして。


「最高の装備を作らせよう」


 討伐の戦利品。


 ミスリル。


 それは銀嵐の力を、さらに一段引き上げることになる。



---


 ミスリルの話で盛り上がっていたギルドの空気を、静かな声が切り裂いた。


「さて、次だ」


 ギルド長のアルヴェインだった。


 広間の中央に陣取っている。


 その視線だけで、冒険者たちの騒ぎがゆっくり収まっていく。


 やがてギルドは完全に静かになった。


 全員が見上げている。


 ギルド長が言った。


「今回の討伐」


「深層ゴーレムの討伐成功は、リーデル支部の歴史でも最大級の戦果だ」


 広間がざわつく。


 それほどのことなのか。


 改めて実感が広がる。


 ギルド長は続けた。


「よって」


「功績に応じた昇格を発表する」


 冒険者たちの視線が討伐隊へ集中する。


 ドレイクは腕を組んだまま。


 カイルは壁にもたれている。


 銀嵐のメンバーも少し緊張していた。


 そして。


「ドレイク」


 名前が呼ばれる。


 黒い大剣の男が顔を上げる。


「はい」


 ギルド長が言う。


「本討伐の主戦力としての功績」


「そして長年の功績を含め」


「本日付で——」


 一拍。


 広間の空気が張り詰める。


「Aランク冒険者への昇格を認める」


 一瞬。


 静寂。


 次の瞬間。


「うおおおおお!!」


 ギルドが爆発した。


「ついにAランクか!!」


「やっぱりな!!」


「当然だろ!!」


 歓声が上がる。


 ドレイクは少しだけ笑った。


「やっとか」


 短い言葉。


 だがその声には確かな誇りがあった。


 ギルド長は続ける。


「次」


 視線が動く。


「カイル」


 銀嵐のリーダー。


 カイルが軽く手を上げる。


「本討伐の主戦力」


「そして深層ゴーレムへの決定打」


 ギルドがまたざわめく。


「やばいぞ」


「化け物だ」


 ギルド長が言う。


「本日付で」


「カイルのAランク昇格を認める」


 歓声。


 拍手。


 銀嵐のメンバーが笑う。


 ドランが肩を叩く。


「おめでとうリーダー」


 ミレアが笑う。


「当然ね」


 カイルは苦笑した。


「騒ぎすぎだろ」


 だが、どこか嬉しそうだった。


 そして。


 ギルド長が視線を動かす。


「最後だ」


 その言葉で、空気が少し変わる。


 視線が集まる。


「レオン」


 突然名前を呼ばれる。


 レオンは少し驚いた。


「はい」


 前に出る。


 ギルド長が言う。


「本討伐において」


「作戦立案」


「戦術判断」


「そして討伐成功への大きな貢献」


 周囲の冒険者がざわめく。


「新人だろ?」


「Eランクじゃなかったか?」


 ギルド長が続ける。


「よって」


「特例昇格を認める」


 レオンの心臓が跳ねる。


 そして。


「本日付で」


「Dランクへ昇格」


 広間がざわつく。


「特例か」


「新人でDはすげえぞ」


「やるじゃねえか」


 レオンは少し呆然としていた。


 ここに来た時。


 自分はEランクだった。


 ただの新人。


 それが今。


 Dランク。


 カイルが笑う。


「よかったな」


 ドランが言う。


「当然だ」


 ミレアが肩を叩く。


「胸張りなさいよ」


 エドが苦笑する。


「料理人のくせに」


 セシルが優しく言う。


「おめでとうございます」


 レオンは少し照れながら言った。


「ありがとうございます」


 ギルド長が最後に言う。


「以上」


「今回の討伐は正式に完了とする」


 その瞬間。


 ギルドが再び歓声に包まれた。


 酒が運ばれる。


 冒険者たちが笑う。


 祝勝会が始まる。


 リーデルの街にとって。


 歴史に残る勝利の日だった。


 そして。


 レオンにとっても。


 冒険者として、新しい一歩を踏み出した日だった。



---



ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もお楽しみに。

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