表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/82

54話 蒼閃のカイル

 森が揺れていた。


 三体のゴーレムが融合した巨体が、ゆっくりと立ち上がる。


 土が割れる。


 木が根ごと引き抜かれる。


 高さは人の三倍はある。


 白銀の装甲に、鈍い光を放つ三つの核。


 胸部。


 左肩。


 右脇腹。


 それぞれが脈打つように赤く光っている。


 魔力の鼓動だ。


 周囲の空気が重く沈む。


 討伐隊の誰もが、無言になっていた。


「……冗談だろ」


 第一班の誰かが呟く。


 三体なら負けるはずなかった存在。


 それが一つになっている。


 ゴーレムが腕を振る。


 轟音。


 森の木々が数本まとめて薙ぎ倒された。


 地面が揺れる。


 衝撃だけで人が吹き飛ぶ。


「下がれ!」


 ドレイクの怒声。


 討伐隊が距離を取る。


 だが、ゴーレムは止まらない。


 ゆっくりと。


 確実に。


 こちらへ歩いてくる。


 その時。


 カイルが前へ出た。


「……仕方ない、あれを使うぞ」


 低い声。


 だがはっきりと聞こえた。


 銀嵐が反応する。


 ドランが笑う。


「おいおい、マジかよ」


 ミレアが肩を竦める。


「久しぶりね、それ」


 エドが小さく息を吐く。


 セシルは静かに頷く。


 銀嵐は知っている。


 カイルの“それ”を。


 カイルが振り返る。


「ギルド長」


「グラード」


「ドレイク」


 三人が近づく。


 空気が張り詰める。


 この場の最高戦力。


 それが並ぶ。


 カイルが短く言う。


「一撃で終わらせる」


 ドレイクが鼻を鳴らす。


「簡単に言うな」


 グラードが腕を組む。


「核を壊せば終わりだが……三つだ」


 ギルド長は静かにゴーレムを見ていた。


「同時でなければ再生する可能性がある」


 沈黙。


 そして。


「作戦は?」


 ドレイクが聞いた。


 カイルは答えない。


 代わりに。


 振り向いた。


「レオン」


 突然名前を呼ばれる。


 全員の視線が集まる。


 レオンは一瞬言葉を失う。


「……俺ですか?」


 カイルは真っ直ぐ見ていた。


 真剣な目。


「見えてるだろ」


 ゴーレムを顎で示す。


「お前、さっきからずっと考えながら見ていた」


 図星だった。


 レオンはゴーレムの動きを観察していた。


 歩き方。


 腕の振り。


 重心。


 核の位置。


 防御の動き。


 料理人が鍋を見るように。


 全体の流れを。


「……今から、組み立てろ」


 カイルが言う。


「お前の見えてるものでいい」


 レオンの喉が鳴る。


 周囲には


 元Aランク。


 Bランク。


 Sランクのギルド長。


 怪物みたいな連中ばかりだ。


 だが。


 カイルは迷っていない。


「任せた」


 レオンはゆっくり息を吐いた。


 ゴーレムを見る。


 三つの核。


 腕の動き。


 重心。


 そして口を開いた。


「まず……陽動が必要です」


 ドレイクが眉を上げる。


「続けろ」


「銀嵐と第一班で正面を引きつけます」


「ゴーレムは腕を優先して振るいます」


「その間に——」


 ギルド長を見る。


「拘束できますか?」


 エルフの青年は静かに笑った。


「可能だ」


「数秒なら止められる」


「それで十分です」


 レオンは頷く。


「動きが止まった瞬間」


 グラードを見る。


「グラードさん、脚を破壊してください」


 「膝あたりの岩と岩の繋ぎ目を狙えば壊せます。そうすれば体勢が崩れます」


 グラードが笑う。


「俺を誰だと思ってる」


 槍を軽く回す。


「簡単だ」


 次にドレイクをみる。


「脚が崩れた瞬間」


「胸の核を叩いてください」


 ドレイクは口元を歪めた。


「いい度胸だ」


「やってやる」


レオンが続け説明をする。


 「胸の核に攻撃をすれば腕を出してガードしてくるので、そのまま砕いてください」 


そして。


 最後にカイルを見る。


「残った核を3つ」


 カイルが笑う。


 鋭い笑み。


「俺が斬る」


 短い答え。


 だが、それで十分だった。


 レオンは最後に言った。


「あと一つ」


 全員が聞く。


「左肩の核」


 ゴーレムの肩。


「防御する動作が一番多いです。」


 装甲が集中している。


 守っている。


「つまり」


 レオンは言う。


「一番重要な核です」


 沈黙。


 そして。


 ギルド長が笑った。


「……面白い」


 グラードが槍を担ぐ。


「悪くねぇ作戦だ」


 ドレイクが大剣を持ち上げる。


「よし、やるぞ!」


 カイルが振り返る。


 銀嵐を見る。


「準備」


 全員が武器を構える。


 レオンの心臓が強く鳴る。


 ゴーレムが動く。


 巨大な腕が振り上がる。


 カイルが言った。


「行くぞ」


 そして——


 戦いが始まった。



---

カイルの声と同時に、全員が動いた。


「散開!」


 銀嵐が一斉に駆ける。


 ドランが先頭を切る。


 盾を構え、真正面からゴーレムへ突っ込む。


「こっちだ鉄くず!!」


 拳が振り下ろされる。


 金属を叩く硬い音。


 火花が散る。


 ドランの盾が軋むが動きをとめる。


 ゴーレムの視線がドランに向く。


 もう一度、巨大な腕が振り上がる。


「来るぞ!」


 振り下ろされた拳。


 地面が爆ぜる。


 ドランは真横へ跳ぶ。


 衝撃波で体が揺れる。


 だがその瞬間。


 ミレアの矢が飛ぶ。


「こっちも見なさい!」


 矢が核付近の装甲に当たり弾ける。


 注意が散る。


 さらに。


「詠唱入る!」


 エドが杖を掲げる。


 魔力が集まる。


「――バインドヴァイン」


 詠唱と共に地面がうねる。


 森の草木が蠢く。


 太い蔦が地面から伸び、ゴーレムの脚に絡みついた。


 締め上げる。


 装甲が軋む。


 ゴーレムが唸るような音を出す。


 腕を振るう。


 蔦が千切れる。


 だがその一瞬で十分だった。


「今だ!」


 ギルド長が前へ出る。


 長い銀髪が揺れる。


 静かに手を上げる。


 詠唱。


「――大地と森の精霊よ、彼の者の動きを止めよ」


 光が広がる。


 次の瞬間。


 空間そのものが重く沈んだ。


 ゴーレムの動きが止まる。


 完全ではない。


 だが確かに鈍る。


「数秒だ」


 ギルド長が静かに言う。


 その瞬間。


「任せろ」


 グラードが走る。


 隻脚とは思えない速度。


 槍を構える。


 体をひねる。


 全身の力を一点に込める。


「――砕けろ!!」


 槍が放たれる。


 雷のような速度。


 一直線。


 ゴーレムの膝へ突き刺さる。


 轟音。


 金属が裂ける。


 関節が砕ける。


 巨体が傾いた。


 片脚が崩れる。


「今だドレイク!」


 グラードが叫ぶ。


 その声と同時に。


 ドレイクが踏み込む。


 大剣を振り上げる。


 剣に魔力が流れ込む。


 空気が震える。


「ぶった斬る!!」


 轟音。


 大剣が胸部へ叩き込まれる。


 ……だが。


 ゴーレムが腕を交差させる。


 防御。


 衝撃。


 核は守られた。


 だがその代わり。


 両腕が砕け散る。


 砕けた岩が空へ飛ぶ。


 巨体が大きく揺れた。


 だが。


 核はまだ生きている。


 三つともだ。


 ゴーレムの胸が光る。


 再生の魔力。


「まだ動くぞ!」


 誰かが叫ぶ。


 その時。


 カイルが駆け出していた。


 静かだった。


 剣を握る。


 呼吸を整える。


 空気が変わる。


 銀嵐が距離を取る。


 全員が理解していた。


 来る。


 カイルが言う。


「レオン」


 レオンが顔を上げる。


「どいてろ」


 レオンは核を見る。


 ゴーレムの核は三つ。


 左肩の核だけ装甲が厚い。


 うでがなくなった今だけは、ただ装甲が厚いだけだ。


 そして、バランスを崩しているゴーレムの核の位置は、縦に一直線に並んでいる。


「今です!!」


 叫ぶ。


 その瞬間。


 カイルの目が細くなる。


 剣を構える。


 全身に魔力が流れる。


 空気が裂ける音。


 風が集まる。


 そして。


 カイルが呟いた。


「――ここまで動きを予測してたか」


 蒼い風が、剣に集まり始めた。




蒼い風が唸っていた。


 カイルの剣を中心に、魔力が渦を巻く。


 空気が震える。


 木々の葉がざわめく。


 まるで嵐の中心に立っているかのようだった。


 カイルは静かに息を吐く。


 視線はただ一つ。


 巨大なゴーレム。


 三つの核。


 胸部。


 左肩。


 右脇腹。


 蒼い魔力がさらに濃くなる。


 剣が低く唸る。


 銀嵐が距離を取る。


 ドランが後ろへ跳ぶ。


 ミレアが弓を下ろす。


 エドが息を飲む。


 セシルが祈るように手を握る。


 ドレイクも一歩下がる。


 グラードが槍を肩に担ぐ。


 誰もが理解していた。


 これが最後の一撃だ。


 カイルが言う。


「全力全開だ!」


 短い声。


 全員が離れる。


 そして。


 カイルが踏み込んだ。


 消えた。


 蒼い風だけが残る。


 次の瞬間。


 斬撃。


 轟音。


 空気が爆ぜる。


 蒼い軌跡が一直線に走る。


「――蒼閃」


 剣が走る。


 一閃。


 左肩の核。


 粉砕。


 胸の核。


 破壊。


 最後の核、右脇腹。


 核に亀裂がはいる。


 しかし砕けない。


 巨体が揺れる。


 魔力が暴れる。


 ゴーレムが唸る。


 右脇腹の核が光る。


 再生が始まろうとする。


「まずい、再生する!」


 誰かが叫ぶ。


 だが。


 その瞬間。


 カイルが再び踏み込んだ。


 膝が震える。


 魔力はもうほとんど残っていない。


 それでも。


 剣を握る。


 最後の力を絞る。


 そして。


 振り抜いた。


 蒼い斬撃が走る。


 亀裂へ。


 核へ。


 そして。


 砕けた。


 最後の核が。


 光が弾ける。


 ゴーレムの体から魔力が抜ける。


 巨体が揺れる。


 ゆっくりと。


 前へ。


 そして。


 轟音。


 地面を揺らしながら、崩れ落ちた。


 静寂。


 森に風が吹く。


 誰も動かない。


 数秒後。


 ドランが息を吐いた。


「終わった……」


 ミレアが肩を落とす。


「やっとね」


 エドが苦笑する。


「マジで死ぬかと思った」


 セシルが微笑む。


「勝ちました」


 ドレイクが腕を組む。


 倒れた巨体を見る。


「見事だ」


 グラードが笑う。


「さすがだな」


 カイルはその場に立っていた。


 だが。


 剣を地面に突き立てる。


 膝が落ちる。


 魔力が完全に尽きていた。


 ドランが肩を貸す。


「無茶しすぎだ」


 カイルは苦笑した。


「いつものことだ」


 その時。


 ギルド長が静かに言った。


「さすがは、蒼閃のカイルだな」


 カイルを見る。


 討伐隊の空気が一気に緩む。


 巨大なゴーレムはもう動かない。


 深層の森に静寂が戻る。


 レオンはその光景を見ていた。


 胸の奥が熱い。


 自分はまだあそこには届かない。


 だが。


 確かに見た。


 本物の強さを。


 カイルの本気の一撃を。


 蒼閃……その名が深く魂に刻まれた瞬間だ。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします。

評価や感想もとても励みになります!


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ