第53話 深層に巣食うミスリルゴーレム
……ゴゴゴゴ。
討伐隊は、音がする方角に向かって進んでいく。
周辺を索敵しながら進むが、魔物の姿や気配がしない。
薄暗い森の中で光が差し込んでいる。
そのまま、光に向かって足を進めていく。
薄暗いはずの深層の森が辺り一面、ひらけていた。
暖かい日の光が森の中に降り注いでいる。
そしてひらけた土地の中央に三つの影。
ミスリルゴーレムだ。
巨体は人の三倍はある。
岩でできた身体。
丸太のような腕。
胸部には青白く輝く魔力核。
三体が並んで立っている。
止まっている。
ただそこにいるだけで、空気が重い。
レオンは息を吸う。
胸の奥がざわつく。
深層の当たり前がここには無い。
ここだけ別世界のようだ。
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ドレイクが剣を肩から降ろす。
「……三体」
低く呟く。
だが口元は笑っている。
「戦闘開始だ」
カイルが即座に指示を出す。
「班ごとに分ける!」
「第一班、右!」
「第三班、左!」
「銀嵐、中央!」
全員が動く。
討伐隊の連携は速い。
深層まで来る冒険者は伊達ではない。
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ドレイクが踏み込む。
地面が爆ぜる。
大剣が唸る。
「らぁッ!!」
斬撃。
鋼が岩を叩く音。
火花が散る。
ミスリルゴーレムの腕が砕ける。
巨体が揺れる。
第一班が一斉に攻める。
槍。
斬撃。
魔法。
的確に核を狙う。
「押せ!」
ドレイクが吠える。
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中央。
銀嵐。
ミスリルゴーレムが腕を振り上げる。
振り下ろす。
ドランが盾を構える。
「来い!」
ドォーーン。
大地に音と衝撃が走る。
ドランが盾でミスリルゴーレムの攻撃をいなしていた。
ミスリルゴーレムの動きが少しだけ止まる。
「今だ!」
ドランの掛け声で一斉に飛びかかる。
ミレアが跳ぶ。
狙いを定め、矢を放つ。
岩と岩の繋ぎ目の隙間に突き刺さる。
「エド!」
カイルが叫ぶ。
「――バインドヴァイン!」
ほぼ同時に詠唱が完了している。
地面から草が動く。
蔦が伸びる。
ゴーレムの脚に絡みつく。
拘束。
動きが止まる。
「レオン!」
「はい!」
レオンが側面へ走る。
胸の核を狙う。
足が動かせないミスリルゴーレムが乱暴に腕を振り下ろす。
(……躱せる!)
腕の攻撃を躱し、間合いを詰める。
ミスリルゴーレムの攻撃により、胸の核が手の届く距離まで近づいた。
真上にジャンプしながら、剣を突き立てる。
硬い。
だが――
岩の繋ぎ目から亀裂が走る。
「いける!」
ミレアが叫ぶ。
カイルが指示を飛ばす。
「押すぞ!!」
連携が完璧に噛み合う。
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第三班も押している。
ギルド長のアルヴェインがミスリルゴーレムの動きを止めている。
そこへ、振り下ろされる一撃。
ドォーン……。
ゴーレムの腕が崩れる。
土煙の中からグラードがその横で立ちあがる。
優勢だった。
ドレイクが笑う。
「三体でも――」
「こんなもんか」
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その時。
ゴーレムの核が光る。
青白い光。
三体同時。
脈動。
ドレイクの目が細くなる。
「……なんだ」
核が強く光る。
魔力が震える。
レオンの背筋が冷える。
嫌な感覚。
捕食者の直感が叫ぶ。
「全員、離れてください!」
同時に。
ドレイクが叫ぶ。
「全員離れろ!!」
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次の瞬間。
ゴーレムの身体が崩れた。
砕けたのではない。
溶けた。
岩が崩れ、地面を流れる。
三体の身体が滑る。
中央へ。
石が集まる。
岩が重なる。
腕が伸びる。
脚が太くなる。
魔力が渦を巻く。
地面が震える。
森が揺れる。
そして。
巨大な影が立ち上がった。
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四メートルを超える巨体。
腕は巨木。
脚は岩柱。
そして胸部。
三つの魔力核。
青白い光が同時に脈打つ。
圧。
空気が重くなる。
呼吸が浅くなる。
第三班の誰かが呟く。
「……合体した」
ドレイクが笑う。
低く。
「なるほどな」
剣を構える。
「三体分ってわけだ」
カイルの目が鋭くなる。
「……いいじゃねぇか」
巨大ゴーレムが腕を上げる。
振り下ろす。
轟音。
地面が砕ける。
討伐隊が吹き飛ぶ。
ミスリルゴーレム。
三体融合。
深層の守護者。
本当の戦いが始まった。
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巨体が動く。
ミスリルゴーレム。
三体が融合した怪物。
腕が振り下ろされる。
空気が裂ける。
「散れ!!」
ドレイクの声。
次の瞬間。
地面が爆ぜた。
岩が砕け、土が舞う。
衝撃波が森を揺らす。
レオンは転がるように回避する。
背筋が冷える。
(当たったら終わる)
人間の身体では耐えられない。
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ドレイクが笑う。
獣のような笑み。
「いいじゃねぇか」
踏み込む。
地面が沈む。
大剣が唸る。
「オラァッ!!」
斬撃。
轟音。
岩の身体が割れる。
腕の一部が砕ける。
だが――
すぐに再生する。
砕けた岩が蠢き、戻る。
ドレイクの眉が動く。
「……しぶてぇ」
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「第一班、削れ!」
槍が突き刺さる。
魔法が炸裂する。
矢が降る。
だが核は遠い。
身体が厚すぎる。
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銀嵐が動く。
「ドラン、止めろ!」
「任せろ!」
ドランが盾を構える。
ゴーレムの脚に体当たり。
重い。
だが一瞬だけ止まる。
「ミレア!」
「了解!」
ミレアが跳ぶ。
狙いを定め矢を放つ。
膝関節を狙う。
だが矢が弾かれる。
「エド!」
「――バインドヴァイン!」
詠唱。
地面の蔦が暴れる。
ゴーレムの脚に巻き付く。
動きを拘束する。
だが、すぐ蔦を引き千切られた。
しかし、一瞬の隙が生まれる。
「レオン!」
カイルが叫ぶ。
「核を見る!」
レオンが走る。
岩を蹴る。
巨体を駆け上がる。
胸部。
左肩。
右脇腹。
三つの核の位置。
(核が遠い……!)
腕が振り下ろされる。
空気が歪む。
「危ねぇ!」
カイルが斬り込む。
衝撃。
腕が逸れる。
レオンが地面に降りる。
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第三班が魔法を撃つ。
炎。
氷。
雷。
だがゴーレムは止まらない。
一歩。
踏み出す。
地面が揺れる。
腕が薙ぐ。
冒険者が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!」
「立て!」
混乱。
だが隊列は崩れない。
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ドレイクが笑う。
「面白ぇ」
剣を握る。
筋肉が膨らむ。
「もう一回だ」
踏み込む。
爆発的な速度。
斬撃。
轟音。
ゴーレムの右脇腹が爆ぜる。
岩が崩れる。
だが。
核は壊れない。
ゴーレムが拳を振り下ろす。
ドレイクが弾き飛ばされる。
巨体が木を薙ぎ倒す。
森が揺れる。
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カイルが息を吐く。
「……硬すぎる」
三つの核。
三倍の魔力。
普通のミスリルゴーレムじゃない。
討伐隊の誰もが理解する。
これは――
災害級。
レオンの背筋に汗が流れる。
だが。
カイルは笑う。
「いいじゃねぇか」
剣を握る。
目が鋭い。
「まだ終わってねぇ」
ゴーレムが腕を上げる。
振り下ろす。
轟音。
森が揺れる。
戦いは、まだ続く。
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