表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食べた魔物の力を取り込む【捕食者】だった俺は、最弱の村から最強の料理人を目指す  作者: RUN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/83

第44話 隻脚が踏み砕くもの

 ドン……

 ドン……

 ドン……


 振動が、地面の奥から伝わってくる。


 ただの足音じゃない。


 質量そのものが迫ってくる感覚。


 木々の葉が微かに揺れ、枝に止まっていた鳥が一斉に飛び立った。


 逃げている。


 森が、道を開けている。



---


 グラードが剣を抜く。


 静かな動作。


 だが、その瞬間。


 空気が変わった。


 温度が落ちる。


 呼吸が重くなる。


 見えない圧が周囲を支配する。



---


(これが……本気の構え)


 まだ何も起きていないのに、本能が後退を命じていた。



---


「下がれ」


 短い。


 逆らえない声だった。


 数歩下がる。


 それでも足りない気がする。



---


 次の瞬間。


 木が一本、横倒しになった。


 折れたんじゃない。


 弾き飛ばされた。



---


 現れる。


 黒い巨体。


 グランザだ。


 レオンが以前戦った奴よりも一回りも大きい。


 「前に戦ったのは子供だったのか……」


 緊張感が剣を握ろうとする手に伝わる。


 筋肉が波打つ。


 肩の高さだけで人の頭をゆうにこえる。


 牙が光る。


 そして、全身から溢れる暴力。



---


 魔物が止まる。


 鼻を鳴らす。


 土を削る。


 こちらを測っている。



---


 その目が、グラードを捉えた。


 空気が張り詰める。



---


 そして。


 突進。



---


 爆音。


 地面が砕ける。


 土砂が後方へ弾け飛ぶ。


 あの巨体で、この速度。


 視界が追いつかない。



---


(ぶつかる——!!)


 だが。


 グラードは動かない。



---


 直前。


 わずかに重心を外す。


 それだけ。


 突進が身体の横を通過する。


 風圧が叩きつけられ、息が詰まる。



---


 その瞬間。


 剣が振られた。



---


 速すぎる。


 見えない。


 ただ。


 空気が裂けた音だけが残る。



---


 次の瞬間。


 魔物の牙が宙を舞った。



---


 血が遅れて噴き出す。


 絶叫。


 森が震える。



---


(斬撃が……重い)


 速いだけじゃない。


 正確だ。



---


「でけぇだけか」


 グラードが呟く。


 戦闘中とは思えないほど冷静だった。


 呼吸すら乱れていない。



---


 魔物が怒り狂う。


 痛みで理性が飛ぶ。


 目が血走る。


 地面を蹴る。



---


 再突進。


 さっきより速い。


 一直線にグラードに向かって。


 回避不能に見える軌道。



---


 だが。


 グラードが踏み込む。



---


 ——ドゴン!!



---


 地面が耐えきれず陥没した。


 隻脚とは思えない爆発力。


 いや。


 自由が利かない脚など関係ない。


 純粋な筋力と技術の塊。



---


 剣が振り上げられる。


 その瞬間。


 初めて。


 グラードの目が変わった。



---


 本気だ。


 ほんの一瞬だけ。


「——終わりだ」


 剣が振り下ろされる。



---


 轟音。


 衝撃。


 空気が押し潰される。


 耳が遅れて悲鳴を上げる。



---


 次の瞬間。


 魔物の巨体が地面にめり込んでいた。


 頭部が砕け、地面ごと抉れている。


 まるで隕石が落ちた跡のようだった。


 静寂。



---


 風が遅れて通り抜ける。


 血の匂いが広がる。



---


 グラードが剣を一振りする。


 血が霧のように飛ぶ。


 納刀。


 それで終わりだった。



---


「……見えたか」


「ほとんど見えなかった」


「それでいい」


 一拍。


「見えるようになった頃には、もう一段上に行く」



---


 魔物を足で軽く押す。


 動かない。


 完全に絶命している。



---


 その時だった。


 グラードの視線が森の奥へ向く。


 止まる。


 空気が変わる。



---


 数秒。


 沈黙。



---


「……チッ」


 舌打ち。


 初めて聞いた。



---


 背中の筋肉が、わずかに緊張する。


 それだけで分かる。


 さっきとは次元が違う。



---


「帰るぞ」


「早いな」


「もう十分だ」


 即答だった。



---


「奥にいる」


 短く言う。


「今のお前を連れてやる相手じゃねぇ」



---


 つまり。


 グラードでも“面倒”と判断する何か。



---


 振り返らない。


 もう撤退を決めている。


 迷いが一切ない。



---


 理解する。


 これが一流。


 戦う強さだけじゃない。


 退く強さ。



---


 森の奥を見る。


 暗い。


 静かだ。


 だが確実にいる。


 本物が。



---


 グラードが歩き出す。


 歩幅がわずかに速い。


 それがすべてを物語っていた。



---


 レオンは最後にもう一度だけ振り返る。


(いつか、追いついてやる)



---


 だが今はまだ基礎を徹底しよう。


 その事実だけが、胸に重く残った。



---


ここまで読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします。

評価や感想もとても励みになります!



次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ