一章・十七話
「……あの、ヨニ」
「んー、何?」
「打ち身の手当てをするなら、もっと優しくできませんか?」
「どうしたって触らないといけないんだから、どんな触り方したって一緒でしょ。それより動かないでってば」
背後からの指摘を受けて、渋々ヘイノは振り向かけていた上体を元に戻す。
顔を前に向けると、ヘイノの部屋とは少しばかり異なる内装の部屋が視界に映る。それもそのはず、ここはヨニの部屋だからだ。
ゲイリーの家でのひと騒動が終わったあと、ヘイノたちは一度カッリの店に寄って、一通り何があったかを彼に説明した。話の途中で戻ってきたマウリに説明役を譲ってから、ヘイノたちはようやく家に帰ってきたのである。
昨日に続き、遅くなった夕飯を食べ終えたころ、ヘイノは体のあちこちに鈍い痛みを感じ始めた。ゲイリーに掴み掛かられた際にぶつけた背中が、遅ればせながら痛んできたのだ。
そこで、打ち身に効く塗り薬を塗ってもらおうと、こうしてヨニの手を借りているのである。
「何はともあれ、お疲れ様」
「ヨニこそ、今日は一日お疲れ様でした」
「今日のこともあるけど、それだけじゃなくてさ。俺が言いたいのは、ニコのことだよ」
事件の中心人物であったニコは、昨日今日と事件続きで疲れ果てたのか、夕飯を食べると早々に客間に用意された寝台に潜り込んでしまった。
「まさか、ヘイノが本気でここまでするとは思ってなかったな。だから、その分のお疲れ様」
ヨニは、この一連の事件全てに対する労いを口にしてくれたが、ヘイノは小さく頭を横に振る。
「まだ『お疲れ様』を言うのは早いですよ。ゲイリーさんがああなった結果、ニコは自分の住む家を無くしてしまったのですから」
「まさか、それもヘイノが探すつもりなの?」
「俺も、最初はそのつもりだったんですが……今は、アナさんにも頼んでいます」
一人で全ての問題を解決しようとして行き詰まってしまったところを嗜められたのは、記憶に新しい。
アナに任せっきりにするつもりはなかったが、たとえ自分がニコの行き先を探し出せたとしても、ヘイノはアナに確認してもらうつもりでいた。
「アナさんには手を借りたいって言ったんだ。そんじゃ、俺には?」
「もちろん、ヨニがニコが暮らせそうな家を見つけられたら、ぜひ教えてもらいたいです」
「了解しましたっと。とはいっても、結局はアナさんがうまくやってくれそうな気がするけどね」
「だからといって、最初から誰かに頼りっぱなしなのは嫌なんですよ」
記憶を失って目覚めてから、自身の記憶喪失を隠しているという経緯もあって、ヘイノは誰かに頼り切りという状況を避けていた。他者に依存すれば、それだけ自分の秘密が露見する恐れが高くなるからだ。
しかし、今はそれは隠し事のための生き方ではなく、生来の性質なのではないかと思ってもいる。
誰かに助けてもらうことを前提として行動するのは、何だか収まりが悪い。どんなことであろうと、そう感じてしまうのは、それが己の性分だからでもあるのだろう。
「ヘイノがそこまで本気になっているなら、ニコにとっては悪いようにはならないだろうね。ってことは、俺の忠告は必要なかったってことかな。寧ろ、余計に足を引っ張っちゃった?」
ヨニは、ニコに深く関わることに反対していた。彼の現実的な視点に、ヘイノも最初は反発を覚えたほどだ。
「足を引っ張ったなんて、そんなことはありませんよ。ヨニの言葉は正しかった。俺一人では、到底どうにかできる話ではありませんでした」
「それでも、ヘイノが動いたことが一つのきっかけになったのは事実でしょ。ヘイノがニコの後を追いかけたから、シニッカさんの家は燃えなかった。ヘイノが誠実に向き合ったから、ニコも自分のことを話そうと思えた」
指折り自分の成果を数えられるのは、聞かされる側としてはこそばゆいものだ。微かに香る塗り薬の青臭い匂いに集中して意識を逸らそうとするも、耳と鼻では使う感覚がまるで違うので意味のないことだった。
「結果として、ニコは俺たちに頼っていいと思って、ゲイリーさんの隠していたお酒について教えてくれた。マウリさんたちの仕事場から盗まれたお酒がどこにあるかも、盗んだ犯人もわかった」
「……ゲイリーさんにとって、俺は面倒ごとばかりを持ち込んだ厄介者だったでしょうね」
「そのゲイリーさんだって、マウリさんたちに連れて行かれるときは、なんだか後悔してるように見えたよ。結果的に、こうなった方が彼にもよかったんじゃない?」
そればかりは、ヘイノにも素直に頷けない。
ゲイリーも好き好んで盗みを働いていたわけではなく、何か事情があったらしいことは、彼の発言からも分かっていた。
彼もまた、ニコのように切羽詰まった末に、誰にも相談できずに盗みに手を出したのだとしたら、彼にも償いの機会は与えられるべきなのだろう。
(……俺は、一方的にゲイリーさんが悪いと思ってしまっていたけれど、ヨニにはそれも分かっていたのだろうか)
視線だけを背後の弟に向けるも、角度のせいで彼の表情は読めなかった。
間をおかず、ヨニは「これでよし」と言い、ヘイノが脱いでいたシャツを上からかけた。
「念入りに擦り込んでおいたから、服につくことはないだろうけれど、気になるなら上から包帯でも貼っておく?」
「大丈夫ですよ。薬が着いても洗えばいいだけですから。それに、この程度の打ち身なら一週間もすれば治るでしょう」
ヨニから渡されたシャツを、いそいそと着込む。
ヨニの部屋にもヘイノの部屋にも、暖炉はない。階下には暖炉やストーブがある部屋が多いため比較的暖かいが、二階は布団の中にもぐりこんでいないときは、外出時と同じ格好をしていないと凍えてしまいそうになる。
「ニコを助けられたことは、俺も嬉しいけどさ。あまり無茶するものじゃないよ」
「無茶というほどでもないでしょう、これぐらい」
シャツを羽織ったあと、上着も上から着込みつつ、ヘイノは片手間に返事をする。
「でも、ゲイリーさんがもしもっと危ない考えの人だったら、ヘイノは大怪我してたかもしれないじゃないか」
「もしそうだったら尚更、ニコをあのまま家に帰すなんてできませんよ」
ヘイノとしては至極当然の返事をしつつも、どこかで「おや」と思う。
ヨニの言葉に、いつもの軽口の気配がない。口調こそからっとしているものの、微かな緊張がある。それは、火事の一件のときの緊張とよく似ていた。
上着を着直して、改めて弟に向き直る。ヘイノを見つめているヨニの瞳は、予想通りというべきか、微かに動揺が混じっていた。
「ニコのことは大事だよ。でも、そのせいでヘイノが怪我をするなら、俺はその方が嫌だ」
ヨニにとって、ヘイノは一度失いかけた家族であり、唯一残った肉親だ。危ない真似をするなと言っていた裏側には、アナへの迷惑以外にも、身内への心配もあったのかもしれない。
本来なら、ヘイノとマウリたちに任せてもよかったのに、ゲイリーの家に向かう面々の中に加わった理由も、そこにあったのだろうか。
(……でも、俺はヨニと同じ気持ちは持てない)
ヨニが危険な真似をしようとするなら、もちろんやめてほしいとは思う。だが、それはあくまで友人として、同僚としての感覚だ。
今ではもう、顔が瓜二つの弟に対して強い嫌悪は覚えない。微かな違和感や多少の苦手意識はあるものの、それも飲み込んでしまえる程度のものだ。
だが、だからといって弟としてヨニを受け入れられたのかと問われても、ヘイノには答えられない。
ヘイノには、誰かと家族という形で繋がりを得た経験がないのだから、自分がヨニに対して感じている親密さが家族のそれと一致するかどうかなど、分かるわけもない。
確かなのは、ヨニが今感じている不安と同種のものは、ヘイノの中には存在しないだろうということだけだ。
「ヨニが悲しまないように、なるべく無茶はしないようにします。今回だって、マウリさんたちにも手を借りたでしょう」
「でも、また同じようなことがあったら、ヘイノは放っておけないんでしょ?」
先ほどまでヨニの双眸にあった動揺は、数度の瞬きにより既に瞳の奥へと消えてしまっていた。
「……そうですね。俺はきっと、また同じことをすると思います」
ヨニを安心させるためならば、本当は否定するべきなのだろう。
けれども、ヘイノは自分自身にも、そして目の前のヨニにも嘘はつけなかった。
もし、ニコと同じように助けてほしいと願われたら。助ける声すらあげられず、膝を抱えてる人がいたら。
ヘイノはどうしたって気になってしまうだろうし、最終的には声をかけてしまうだろう。
「自分でも、どうしてそんなに気になってしまうのか、とは思います。でも、放っておけないのが俺の性分みたいです」
記憶を失ってからは、自分はヘイノらしい振る舞いができているか、司祭らしい振る舞いができているかと、そればかり考えていた。
だが、実際に司祭見習いのヘイノとして生活していくと、自分で定めたはずの決まりから外れていく自分が強く浮かび上がってきていた。
それでいて、ヨニもアナも、ヘイノの選択を受け入れてくれた。
(昔の『ヘイノ』でも司祭らしいヘイノでもなく、俺はこの生活の中で、俺だけの自分らしさを見つけられた)
困っている人を見たら放っておけない。聖典の言葉を借りるまでもなく、誰もが知っているはずの感覚だ。だとしても、ヘイノにとってそれは新鮮なものであり、簡単には捨てられない自身の軸でもあった。
「君がそう言うなら、仕方ないかな。それが君の性分、なんでしょ?」
「はい。でも、ヨニが心配してくれてるのも分かりましたから。今度からは、気をつけるようにします」
「本人にその気がない『気をつける』って、あんまり意味ないと思うんだけどなー」
からかい混じりに、ヨニはヘイノの頭をトントンと軽く叩く。その仕草には「ほどほどにね」という、気やすさと軽い諦めの気持ちがあるように思えた。
「じゃあ、俺はアナさんに薬を返してくるよ」
「はい。俺も部屋に戻ります。ヨニも今日は早く休んでくださいね」
「分かってるって」
ひと足先に部屋を出ていくヨニの背を見送り、ヘイノも立ち上がる。薬のおかげか、背中にあった鈍い痛みはいくらかましになっていた。
外に出て、隣の自室に戻り、燭台に火を灯す。もはや慣れた手つきとなった一連の動作を終えて、ふとヘイノは自室を見渡す。
ほんの二週間ほど前に、自分はこの部屋に案内された。新たに始まる生活に不安ばかりを覚え、自分の隠し事がばれないかと些細なことにも心を揺らしていた。
(結局、俺の心配は一人で空回りした結果の産物だったんだな)
生徒の子供たちは、今では当然のようにヘイノとヨニを見分けてくれている。ニコの一件も、まだどうなるか分からない部分もあるが、以前よりは悪いことにならないだろう。
それに、最大の懸念事項であった双子の片割れのヨニのことも。
「……そういえば、もう敬語のことはいいのでしょうか」
以前は、あれほど何度も敬語を指摘していたのに。気がつけば、ヨニはヘイノの言葉遣いに対して口を出すことは無くなった。
(ヨニのことだから、本当に直してほしいのならまた言ってくるでしょう)
そのように結論を出し、ヘイノは寝台へと腰を下ろす。今はただ、心地よい疲労感に身を委ねていたかった。
***
「ヘイノの具合はどうだったの?」
キッチンに入って早々、アナから声をかけられたヨニは、一度止めた足を再び動かして薬の入った戸棚へと向かう。
「ちょっとした打ち身だよ。本人も、これならすぐ治るだろうってさ」
「そう。ヘイノには、あまり無理はしないように言わないとね」
「それなら、俺が先に言っておいたよ。それでも、性分だからやめられないってさ」
「そうでしょうね。ヘイノはあなたのように清濁をあわせて飲み込めるほど、器用な子には見えなかったから」
棚に薬瓶を収め、ヨニは振り返る。こちらを見つめるアナの視線は、いつもの静謐さを湛えていた。
ニコに懺悔を促し、他者を頼るように促したときも。ニコが無事に家に戻ってきたときも。彼女は笑顔でヘイノやニコを見守っていたが、いつも瞳の中にこの静謐さを残していたのを、ヨニは知っている。
「ねえ。アナさんの方はどうなの?」
「私がどうかしたの?」
キッチンの小机に向かって座り、広げられた書類の数々に目をやっているアナ。すでに視線は自分から外れているものの、遠慮なくヨニは続ける。
「アナさんは、今回の件に関わって良かったと思ってる? ニコを無事に保護できて、ゲイリーさんの罪も暴けたわけだけど、実は面倒ごとに付き合わされたとか思ってない?」
「そんな斜に構えた見方はしていないわ。ニコの窃盗をやめさせれた上に、ゲイリーさんにも罪を償う機会を与えられた。概ね予定通りに問題が片付いたのは、良いことだと思っているわよ」
「なんか、アナさんって大人だね。俺やヘイノにとっては大事件なのに、まるで仕事の一つみたいにてきぱき片付けちゃうんだから」
ヘイノはああ言っていたものの、ヨニとて今回の事件には終始驚かされっぱなしであった。果たしてどうなるのか、と不安を覚えたことも一度や二度ではない。
対して、アナはまるで予定調和のように、司祭として必要なことを淡々とこなしていた。それが大人だと言われれば、それまでの話だが、今のヨニには将来自分が同じことができるとは到底思えない。
「ヘイノとあなたの協力があったからよ」
「俺たち、横であれこれ言っていただけだよ?」
「横であれこれ言う人がいた方が、ニコも落ち着きやすかったと思うわ。私は、よく『何を考えてるか分からない』って言われるから」
「えー、そうかなー。まあ、アナさんってあまり顔に出す方じゃないとは思うけど」
そこまで言って、ヨニはじーっとアナの前の椅子に腰を下ろし、彼女を見つめる。視線を感じて、アナが「何?」と尋ねると、
「ここには俺しかいないわけだし、疲れたとか、無事に解決しそうでよかったとか、言ってもいいんじゃない?」
「残念だけど、あなたは子供だからそれは無理ね。大人は、色々責任が付き纏ってくるものなのよ」
「自分の言いたいことを言うだけでも?」
ヨニにとっては軽い質問だったが、アナの沈黙は思ったよりも長かった。
「……自分が何をやりたいのか、わからなくなることも大人にはあるのよ」
「ふーん?」
大人になると、アナのように達観した考えを持つことになるのだろうか。まだ自分は子供の範疇にいると自負しているヨニは、それ以上は尋ねようとはしなかった。
「それよりも、あなたの方はどうなの? ヘイノがニコを保護することについて、あなたは反対派だったのでしょう?」
「反対派ってほど、真っ向から否定してたわけじゃないよ。ただ、考えなしにその場かぎりの正義感で動くのはやめた方がいいって思ってただけ」
手指を合わせ、ぐいと大きく伸びをする。固まった筋肉がほぐれて、心地よい痛みがヨニの思考をほぐしていく。
「その場かぎりの正義感でも、全く手を差し伸べないよりはいい、という意見もあるのではないかしら」
「そりゃあ、ゼロかイチなら、少しでも何かしてくれる方がありがたいとは思うよ。でもさ」
手指を放して、伸ばしていた体から力を抜く。脱力したついでに、視線を天井へと向けてヨニは呟く。
「……中途半端に救われて、途中で手放される方が、何もされないより辛いんだよ」
一般論を語るにしては、妙な重さを感じさせる声だった。
アナも、しばらく口をとざし、二人の間に沈黙が落ちる。
「ま、そういうわけだから、軽はずみに『助けたい』なんて言い出すもんじゃないって俺は思ったわけ」
重苦しくなりかけていた空気を、発言をしたヨニ自ら吹き飛ばす。そんな彼の様子を、アナはいつもの静謐さで見つめていた。
「あなたもいることだし、必要ならば私を頼るようにも言ったから、今度からは一人で無茶するような真似はしないでしょう」
「それってつまり、俺にヘイノの無茶を止める係になれってこと?」
「兄弟でしょう。慣れっこではないの?」
ヨニは素早く数度瞬きをすると、ふっと口に笑みを引く。
「……まあ、そうだね。アナさんの言うとおりではあるかな」
「私に相談した方が良さそうと思った時は、ヘイノに何を言われようとも連絡してちょうだい。あなたにまでだんまりをされたら、私にはどうしようもできなくなってしまうわ」
「アナさんも、ヘイノに負けないぐらいに親切だよね。大人って、もっと面倒ごとを嫌がると思ってたんだけど」
話しながら、ヨニはアナの手元にある書類の束に目をやる。
彼女が教会に赴任してから今に至る数ヶ月という短い間であっても、村の住民やティモの教会から、彼女宛に様々な厄介ごとが押し付けられていた。
長らく放置していた住民管理の書類を直してほしい、といった事務的なものから、隣人が飼っている家畜が柵をこえて入ってきてしまうなど、どう考えても個人間で済ませられるものまで様々だ。
その一つ一つにアナは丁寧に確認し、手紙には返事を書き、面会を希望されれば自らの足で赴いている。ヨニのような見習いの目からみても、司祭がする必要ではない仕事も混ざっているだろうに、だ。
「面倒ごととは思っていないもの。それが誰かの幸福に繋がるのなら、私はそのために力を尽くすだけ。ニコのこともそうだし、あなたたちのこともよ」
「アナさんってさ。俺の知る司祭の中でも、一番司祭らしいって思うよ」
「そう?」
本人は大層なことをしているつもりはないのだろう。ごく自然体に誰かの幸福を祈り、最善を模索する。それはヨニの目から見ても、理想的な生き方そのものに見える。
「でも、アナさんも時には息抜きしてね。必要なら、俺たちが仕事を代わることも、まあ、ちょっとはできるわけだから」
「必要なときは、そうしてもらうわ。子供たちの面倒を見てもらっているだけでも、助かっているもの」
それから、二、三の言葉を交わした後、ヨニは「おやすみ」と挨拶を残してキッチンを後にした。慣れた廊下の薄闇を通り階段を上がる途中で、ヨニは「そういえば」と呟く。
「どうしてアナさん、キッチンで仕事してたんだろ」
彼女が仕事をする場所は、大抵は書斎だ。キッチンに仕事を持ち込むなど、彼女らしくないことを――と思いかけ、
「……俺のこと、気にして待ってくれていたのかな」
今回の一連の騒動を前にして、ヘイノは積極的に自分の意見を口にしていた。
一方で、ヨニは最初こそ反対していたにもかかわらず、最後には率先してヘイノに協力の姿勢を見せていた。その態度の変化の裏で何を感じていたのか、確かめるべきだと考えたのだろうか。
アナは今、ヘイノだけではなく、ヨニの師でもあるのだから。
「気を遣わせちゃったかなあ。また折を見て、アナさんが休める時間を作らないとかな」
ヘイノが言われたように、子供らしく頼ればいいと言われればそれまでなのだが、どうしたってヨニは気を回してしまう。これもヘイノの言うところの性分なのかもしれないと、ヨニは一つ欠伸をして自室の扉を開いた。




