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僕らはソラを謳う  作者: 千代里
一章
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一章・七話

 首の後ろをすう、と通る冷涼な空気。まだ髪を切って一日も経っていないせいで、ひやりとした感触には、時折びくりとさせられる。

 髪を切ったといえども、首筋に届く程度の長さはあるのに、妙に頭が軽く感じるのは、単に長さだけの問題ではないだろう。そう思い、自分の傍らに佇む弟をちらりと見やる。

 ヘイノの隣に立つヨニも、約束通り髪を一つに縛っていた。とはいえ、今、二人の違いを見つけ出して騒ぐ子供たちはいない。

(アウリもテームも、ほかの子供達も来ているようだけれど……やっぱり、ニコは礼拝には来てないんだな)

 今日は『太陽の日』。一週間の始まりを示す日であり、人々が教会に集い、日々を見守る女神へと祈りを捧げる日でもある。

 一般的には休日と扱われているため、よほど仕事熱心な人や、病院などのように休むわけにはいかない仕事に従事する者以外は、皆揃って教会へと足を向ける。

 教会から帰っても家事などの仕事は最低限に控えて、静かに過ごすべきだとされているが、休日ということもあって近所に出かける者も最近は見られるようになっていると聞いている。

 人々にとって、礼拝の時間はただの祈りのためだけのものではない。

 教会に向かうことで近所の人の様子を知り、互いに情報交換もできる。そのため、礼拝が始まるまではそこかしこでおしゃべりに興じる人々の姿をいくつか目にしていた。

 ヘイノは司祭見習いに課せられる最重要の務めとして、礼拝の準備を進め、いつも以上に丁寧に身だしなみを整えて今日を迎えていた。

 もっとも、実際にアナの説教が始まるころを迎えれば、ヘイノたちの仕事も半ば終わったようなものだ。あとは、祭壇の近くにヨニと並んで立っているだけでいいのだから。

 そのため、今のヘイノには礼拝に来た村人たちの顔をじっくりと眺める余裕すらあった。

(もし、ニコと彼女の保護者が来ていたなら、話をしたかったのに)

 昨晩、ヨニに指摘されたこともあって、ヘイノとしても噂だけで全てを判断するのは早計と考えていた。

 何にしても、まずは彼に会ってからと考えたのだが、やはりというべきか、ニコたちはこの教会には顔を見せていなかった。

 視線の動きを気取られないように、ヘイノはこれ以上の捜索を諦めて姿勢を正す。

 アナの低く落ち着いた声音で語られる聖典の一節と、礼拝堂のステンドグラスに差し込む日差し。朝のうちに焚いた香の香りが薄く礼拝堂に漂い、初めてこの地に訪れたときにも感じた静謐な空気がこの場を支配していた。

 一週間の始まりに、この厳粛な静寂を味わい、また週が明ければ子供たちの面倒を見る日々が始まる。いずれは、ヘイノ自身が人々に始祖の言葉を伝える役割を担う日も来るのだろう。

 一人の子供を救わなかったとしても、それを咎められることもない。知らなかったふりをしても、誰かに叱られるわけでもない。

 ヨニの言いたいことはそういうことだと、穏やかな朝の祈りを眺めながら改めて実感する。

 しかし、同時に我ながらどうしようもないと思いつつ――彼は苦笑する。

(……俺は、ヨニみたいに賢く振る舞うのは難しいみたいだ)

 初めて生まれた、自分から何かをしたいという衝動は思ったよりも頑固だった。

 この衝動を鎮めるためにも、自分が司祭として胸を張っていられるようにするためにも、ニコの件は覚えていよう。

 彼はそう決め、壇上のアナの声にあわせて祈りを捧げる。

 始祖と共に人々の安寧を見守っているという女神へ、あの冷えた手の少女が、少しでも心穏やかに過ごせていますように、と。

 

 ***

 

 祈りの時間を終え、新たに教会に赴任したヘイノを村民に紹介するという一幕が終わった後、大人たちはそれぞれ己の家へと帰っていった。

 しかし、彼らの声が遠くなってからも、ヘイノたちの仕事は終わらない。

 祈りの時間が終わった後、短い時間ではあるものの、二人にはもう一つ大事な仕事があった。教会にやってきた子供への授業である。

 普段の授業と違うのは、扱う内容がより聖典の教えに特化したものとなるところだ。そして、出席している子供たちは村の子供全員である。

 通常、司祭が学校に直接行くことはない。その代わりに、信仰と祈りに関する内容を子供向けの内容として噛み砕き、彼らに伝えているのである。

 これは普段の授業とは異なり、教会の本部から地方の教会にそれぞれ課せられた仕事の一つであり、いわば公務とも言い換えられるものだった。

 今回の授業は、ほぼヨニが先導してくれたが、今後は自分が前に立つこともあるだろうと、ヘイノは念入りに弟の様子を観察していた。

 そして、短くも緊張を強いる時間が過ぎた後。

「お疲れー。やっぱり、二人でやると早く片付くね」

 授業を終えたヨニは、アナが持ってきてくれた昼食のパイを片手に、口ぶりほどの疲れは見せずにヘイノへと声をかけた。

 一方、ヘイノは子供たちが解散して間もなく、どっと疲労感に襲われていた。全身が強張ったような感覚は、司祭としての仕事、という肩書きに知らず知らずの間に肩に力が入っていたからだろう。

「『太陽の日』は、お休みの日でもあるはずなのに、なんだかこの一週間の中で一番疲れた気がします……」

 もらったパイは、じゃがいもとひき肉を混ぜて焼いたものが挟まれていた。食べるとまだほんのりと暖かい。授業に忙しくしている新人たちにと、近所の人がアナへと持ってきてくれたらしい。

「そりゃ、俺たちが一週間のなかで一番忙しくなるのがこの日だもん。仕方ないよ」

 からりと笑ってみせるヨニの横顔に、疲れの色は薄い。彼にとって、この日々はすでに日常となっているようだ。

 それよりも、とヨニはヘイノの顔を覗き込むように屈んでみせると、

「朝は忙しくて言えなかったけどさ、ヘイノ。髪の毛、切ったんだね」

「ああ、はい。見分けをつけるなら、やはりこうするのが一番かと思ったんです」

「うん、いいんじゃない。似合ってるよ! 最初から、そうしておいた方が、もっと早くに見分けがついてたかもね」

 昨晩は緊張感のあるやり取りもあったが、今はそれが嘘のようにヨニはからっとした態度をとっていた。

 そんなヨニは、宣言通りに一つに結んだ髪を風に靡かせていた。すでに礼拝は終わったからか、昨日作ったばかりの目印の飾りが髪紐に留められていて、一足早く訪れた春のように彼の髪を彩っていた。

 お揃いに拘っていたヨニの願いに応えてやろうと、ヘイノもコートのポケットに入れていた飾りを髪に留めてみる。

「これで、どうでしょうか」

「いい感じだよ。あ、でも、ちょっとこの辺が曲がってるかも」

 手早くパイを口に押し込み、ハンカチで指先を拭うと、ヨニはヘイノへと手を伸ばす。曲がっているという髪飾りの角度を変えて、「これでよし」と彼は満足げに頷いた。

「それ、食べ終わったら礼拝堂の掃除を始めようか。早く終わったら、俺たちもちょっとは休みをもらえるかも」

 ヨニに促され、ヘイノは深々と頷く。司祭としての務めであるとわかっていても、休みの時間は貴重だ。今日ぐらいは、何かに追われることもなく、半日ほどはのんびりしたいものだと、ヘイノもパイを口の中に放り込んだ。

 

 ***

 

 結論から言って、兄弟に休息の時はなかなか訪れなかった。

 昼半ばの鐘が鳴る前に片付けを終えた二人は、心地よい疲労感と、少しばかりの休みに思いを馳せて家に戻ってきた。そんな彼らを待っていたのは、客間から漏れ聞こえる誰かの話し声であった。

 客間は玄関口に近い。おかげで、二人は家に戻って早々、非日常の気配に気がつけた。

「珍しいですね。『太陽の日』に来客なんて」

 礼拝が終われば、大抵の人は家に帰って家族と共にその日一日を過ごす。それが、この日の基本的な過ごし方だ。

 もっとも、最近はその習慣も少し薄れてきていて、約束をしている相手の元に訪れる例もあるようだが、二人はアナから来訪者の予定があるとは聞いていなかった。

「何か、急ぎの相談かな」

「だったら、俺たちは静かにしておいた方がいいでしょうか」

 見習いが首を突っ込んでいても、邪魔にしかならないだろう。だが、いったい何の話をしているのかは、同じ家にいる者として、そしてアナを師と仰ぐ立場としても気になる。

 そうして廊下でしばしの逡巡をしている間に、客間の扉の方が二人へと開かれた。二人を見つめているのは、予想通り、一足先に戻っていたアナだ。

「やっぱり、二人とも帰ってきたのね」

「はい。教会の施錠もしておきました」

「助かるわ、ヘイノ。それにヨニも。二人ともお疲れ様」

 そのまま部屋に戻るように言われるかと思いきや、アナは二人に視線で入室を促した。

「ちょうどいいから、あなたたちも同席してちょうだい。いいでしょう、シニッカさん」

 アナが呼びかけたのは、客間のソファに腰を下ろした中年の婦人だった。

 落ち着いたブラウンのストールに、同色のロングドレスはヘイノも礼拝のときに目にした覚えがある。彼女はパユヴェシ村の住人の一人なのだろう。

「ええ、もちろん。構いませんよ。アナさんも、ヨニさんのお力をお借りした方が、とお話してましたものね」

「俺の?」

「もちろん、そちらのお兄さんのこともお話してましたよ」

 目を細めて微笑みかけられ、ヘイノは無礼にならないように軽く頭を下げる。

「シニッカさんのお話を聞いて、男手が必要ではないかと思ったのよ。安全のためにね」

「男手が必要ということは、何か力仕事のお願いでしょうか」

「そうだったらよかったのだけどね。実はちょっと物騒な話なのよ」

 涼しい顔で紅茶を飲んでいる婦人の姿から、アナの言うような『物騒な』という表現はとても想像できない。けれども、アナはいつになく厳しい面持ちで告げる。

「実は今日、彼女が礼拝のために家を空けている間に、泥棒が忍び込んだみたいなの。しかも、彼女の話を聞く限り、昨晩もね」

 今まで想像もしていなかった事件の気配。それは、確かに「物騒」と言って然るべきものであった。

 

 ***

 

 アナに促され、ヘイノは自分たちの分のお茶を用意してから、改めて客間のソファに腰を下ろした。

 普段から掃除はしているものの、この部屋が使われたところを見たのは今日が初めてだ。汚してはいけない場所とアナから厳命されていた分、ヘイノは背中に棒でも差し込んだかのようにピンと背筋を伸ばし、ソファに浅く腰掛けていた。

 ヨニの方はこのような対応にも慣れているのか、ヘイノよりは些かリラックスした様子で客人の言葉を待っている。

「それでは、シニッカさん。お話をもう一度聞かせてもらえるかしら」

「ええ、もちろん。……でも、よくよく考えてみたら、そんなに大層な話でもないかもしれないわ」

 どこか遠慮がちに微笑むシニッカ。そこだけ切り取ると、自宅に泥棒が入ってきた被害者などとは到底思えないほどの落ち着きぶりだ。

「我が家では猫を二匹飼っていますからねえ。時々、他の家の猫や野良猫が来ることがあるのよ。うちの子も、暖かくなると外で過ごす時間が長くなるものですから。だから、昨日の夜のことはやはり猫が来ていたのではないかと思うのよね」

 シニッカの話によると、昨日の夜も更けてきた頃、何やら勝手口で物音がしたのに気付いたのが、ことの始まりだった。

 最初は隙間風ではないかとも思った。だが、よくよく耳を澄ませてみると、どうにも何かが歩いているような音にも聞こえる。

 シニッカの家には、通いの女中こそ雇っているものの、夜になれば彼女も帰ってしまうので、一人きりになる。家人が外を歩いているということはありえない。

「その時、ちょうどうちの猫が目に留まりましてね。もしかしたら、この子のお友達が来たのかしら、と思ったのよ」

 それなら、不審な物音を恐れることもない。シニッカは、勝手口の扉を少し開いて外の様子を伺うことにした。

 そこには猫の姿も人の姿もなかったが、野良猫が人を警戒するのはよくあることだ。この寒い中、知り合いを頼ってご飯を求めにきたのかもしれないと、シニッカはいつものように野良猫向けの餌を置いておくことにした。

「肉や魚の燻製とかを、家に来る子によくあげているのよ。そうそう、昨日は、夕飯のパイの余りも置いてみたの。それで、朝起きてみたらびっくり。全部綺麗に平らげられていたんですよ。ご飯を置いていた皿には、残り滓ひとつ無かったくらい」

 よほどお腹を空かせた猫がこの辺りにいるのだろうと、シニッカはその時はそう思っていた。哀れな迷子が次に来たら、今度は家に入れてあげようとも。

 そして、今日。

 いつものように礼拝のために身支度を整え、教会で祈りの時間を過ごした後、彼女はゆっくりと家へと帰っていった。

 だが、のんびりやの彼女も、家に入ってすぐに目にした異変には流石に動揺させられた。

 昨日女中が磨いてくれたばかりの床に、点々と足跡が残っていたからだ。それは勝手口から始まり、台所を彷徨いた後、地下の貯蔵庫へと向かっていた。

 幸いなことに、泥棒はすでに家を出た後で、帰ってきたシニッカと鉢合わせする、とはならなかった。

「あの足跡は、猫や犬というには、流石に大きすぎるわよねえ。でも、どうしたらいいかわからなくて……それでこちらの司祭さまなら相談に乗ってくれるかと思って、不躾ではあるのですけれど、こうしてお邪魔させてもらっているというわけなんです」

 シニッカの家から最も近いのは、アナたちの住むこの家だ。教会の司祭ならば知恵を貸してくれるかもしれないと、着替えもせずにやってきたのだろう。

「先ほども聞いたけれど、シニッカさん。お金や、換金できそうな貴重品は、盗まれていなかったのかしら」

 ヘイノたちにも聞かせるためだろう。アナが確認のために問いかける。

「母が遺してくれた宝石のついたブローチは、今日はつけたまま外出していたから……他には、そこまで高価なものは我が家にはないと思うわ。念のため、戻ったら確認しておきますね」

 シニッカ自身は、この泥棒騒動に驚いてはいるものの、今一つ危機感を覚えていないらしい。のんびりとした返事に、聞き手であるヘイノたちの方が毒気を抜かれていた。

「足跡は、地下の貯蔵庫にまで続いていたんですよね。そちらから盗まれたものはあったんですか?」

 ヘイノの問いかけに、シニッカはすんなりと頷く。

「盗まれた、というより量が減ったと言うべきかしら。あそこには、保存のきく食べ物を置いていたのよ。燻製とか、チーズとか、あとはベリーのジャムもたくさん。そうそう、私が作ったフルーツケーキもあったわね」

「まさか、それが全部なくなってたの?」

 驚いた様子のヨニに対して、シニッカはころころと笑い、

「泥棒さんは、そこまで食いしん坊さんではなかったみたいねえ。ケーキが一つとジャムが一瓶無くなっていただけだったわ。燻製は少し食べられた跡があったけれど、持ち去られてはいなかったわね」

「なんだか、随分と律儀な泥棒だね。食べ物が欲しいなら、全部持っていっちゃえばいいのに」

 ヨニの言い分はいくらか極端なものではあったが、ヘイノとしても同意見ではあった。

 何らかの理由で食べ物を必要としているのなら、シニッカがいないうちに全て持ち出してしまえばいい。そうしてしまえば、何度も足を向ける必要もなくなるのだから。

(それとも、一度に全てを持ち帰れない理由でもあるんだろうか……?)

 深刻な顔で悩むヘイノや、労わるような視線を向けるアナとは裏腹に、話をして気持ちも落ち着いたのか、被害者本人であるシニッカはすっかり落ち着きを取り戻したようだった。

「でも、考えてみれば少しばかり食べ物が持ち出されたぐらいで、大袈裟だったかしら。お腹が空いている人が迷い込んできたのなら、分けてあげても構わないと思っているのですけれど」

「シニッカさん、今回はたまたまあなたが外出していたおかげで、犯人と鉢合わせることはなかったのでしょう。でも、次に同じことがあった時もそうなるとは限らないわ」

 のんびりとしたシニッカに対して、アナは現実的かつ、最も悪い予想を口にする。

「あるいは、あなたではなく、あなたが雇っている女中さんが出会してしまうかもしれない。お二人に危害が加えられてから後悔しても遅いでしょう」

 アナのキビキビとした物言いに、シニッカも静かに頷き返す。流石に、この意見を無視するほど彼女は楽天家ではなかったようだ。

「お手伝いの子は、お母様の具合が悪いそうで、しばらくは通うのを止めると言っていたから、彼女が出くわすことは暫くはなさそうだけれど……戻ってくるまでに解決はしておいた方がいいわよねぇ」

「そういうことです。まずは、犯人がどこから侵入してきて、どうやって地下の倉庫まで入ったかと、犯人につながる手がかりが残っていないかを確かめないといけないわ」

 テキパキと話を進めるアナを横目に、ヨニはひそひそ声でヘイノに囁く。

「なんだか、俺たち探偵小説の中に出てくる探偵みたいだね」

「遊びじゃないんですよ、ヨニ。相手は家に勝手に入るような無法者なのですから」

「でも、やってることは盗み食いだけなんだよねー。普通、人の家に勝手に入るような悪人って、もっと悪どいことをするもんじゃないの?」

「さあ。あいにく、俺は悪人ではありませんから」

 被害者の前で不謹慎だと叱りたいところだが、肝心のシニッカは自身の被害についてはそこまで気に留めていないようだ。むしろ、アナの方が神経を尖らせているとすら言える。

「そういうわけだから、ヘイノ。それに、ヨニ。あなたたちでシニッカさんの家に行って、調査を頼めるかしら」

「それだけなら、俺一人でも十分じゃない?」

 探偵としての活躍を独り占めしたいのか、はたまた疲れた様子の片割れを休ませたいと思ってくれたのか。ヨニが前のめりになって主張するも、アナの反応は手厳しかった。

「あなたはそそっかしいところがあるから、見落としがないようにヘイノも連れていってちょうだい。ヘイノも、いいわね?」

「はい、分かりました。シニッカさんはどうしますか?」

「それなら、私が二人を案内しましょうか。あら、もうこんな時間。それなら、着いたら早速お茶の準備をしないといけないわね」

「……シニッカさん。二人は、あなたの家に忍び込んだ者を調べるために行くんですよ」

 アナが釘を刺すように言ったものの、当の本人はすでに若者二人のもてなしをどうするかに夢中になっているようだった。

 頼むわよ、とアナから送られた視線に、ヘイノは苦笑いと共に頷き返した。

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