――召喚――
「元気にしてた?」
私は魔方陣の上に立つ彼に、してやったりと笑って見せる。
お互いの姿は変わっていない。
――あの日、私は彼が消えた後、取り乱した。
妹や爺やが取り押さえて、励ましてくれなければどうなっていたか。
私は直ぐに立ち直り、研究を始めた。
今度の目的は、彼を召喚する方法だ。
不思議なことに、私の魔神たちとの繋がりは消えていた。
改めて呼び出した絶望を振り撒く者が言った。
≪お前とはもう契約したくない≫と。
唖然とした。
契約そのものが消えていたのだ。
渋る魔神から強引に理由を聞き出してみると、彼は高位の魔神からしても、余り関わりたくない者だったらしい。
それから数多の魔神を呼び出してみたが答えは同じ。
誰も首を縦に振らない。
だから契約では無く、世間話として聞き出した。
…彼は何処に居るのかと。
「逃げられると思った?」
唖然とする彼を前に、必死で含み笑いを堪える。
あれからもう二十年が経っている。
私の後ろに立つのは、当時のお母様と同じくらいに老けた妹と、あの日の妹と同じくらいのその娘、それと髪の少なくなった爺や。
無論、私は老けてなんてあげない。
召喚とは本来、双方の合意が無ければ成立しない。
しかも魔界とは違って、人の世に知られていない遠い世界。
それなのに、たった二十年で召喚できたことが、彼にも未練があることの何よりの証拠。
残りの理由は私の才能と努力、それと性格。
「私は諦めが悪いの」
彼が苦笑する。
それは彼が私に惚れた理由の一つだったから。
「もう一度契約をしましょう」
彼に近付きながら、今度は私から提案する。
「内容は?」
彼が頬を緩めて優しく問う。
「二人で幸せになること」
私は彼の頭の後ろに手を回した。
唇が重なる。
二十年ぶりだと言うのに、懐かしさよりも安心が胸を満たす。
その感触を一時も忘れたことは無かった。
彼の腕が私の背中に回され、抱き締められる。
「「愛してる」」




