――目覚め――
「…ぅうん…」
妙な頭痛、と言うよりも、顔面神経痛を感じながら目が覚めた。
頭が少し擽ったい。
顔に手を当ててみるが、別に変ったところは無い。
指が吸い付くような滑らかな肌に、整った顔立ち。
王族の義務だった手入れは、異界に閉じ籠っても半ば習慣として続けていた。
目を開けてみると、知っている天井が目に入った。
引き籠っている異界の迷宮の一室。
素人目には見分けが付かないかもしれないけど、ここを根城にしている私には分かる。
そこまで意識すると、頭の下が柔らかいことに気付いた。
異界の迷宮には、床が柔らかい場所もあるが、お尻に当たる感触がそうでは無いと訴えている。
仰向けに寝ているのに、頭だけ高さが違う。
何年ぶりだろう、膝枕なんてされてるのは。
無理矢理、意識しないようにしていた、視界の端に映る顔を見る。
先程の男が私に膝枕をして私の頭を撫でながら、遠くを見るように壁を見ている。
その先に特別な物があった覚えは無い。
「起きたか」
男は中世的な顔立ちで私を見下ろした。
心なしか、安心しているように見える。
「どういった状況?」
「顔が柘榴のようになったから直した」
「そんなわけあるか!」
柘榴とは何か分からないが、思わず突っ込んでしまった。
確かに、世の中には蘇生神術と言うものもある。
死体どころか灰からでも蘇生できるのだから、死体の損壊など問題では無い。
しかし、全てが元通りと言う訳にはいかない。
多くの場合、少なからぬ生命力や寿命、記憶や感情を失う。
失われたものは戻らない。
神術や魔術は何でも思い通りになる妄想でも、何でもできる神の御業でも無いのだ。
ぶんぶんっ
私は身体を起こし、頭を振った。
意識をはっきりさせ、記憶を確かめてみる。
私の名前はイーリス。
イーリス・ヴェルガ・エクサ・ウィルハザード。
ウィルハザード王国の第一王女……だったのは去年まで。
双子の妹アスフィアが王位を継いだので、今は女王姉だ。
別に、妹を恨んでなんていない。
小さい頃から要領が良くて、第二王女なので失敗しても怒られず、甘やかされて育って、「いつも明るく優しい」なんて民にチヤホヤされた脳内お半畑でも、私の可愛い妹だ。
例え、私が第一王女だからと厳しく躾けられ、そのせいで目付きが悪くなって、民から評判が悪くて、お父様が亡くなった後、満場一致で妹が王位を継いだとしても、恨んでなんていない。
…本当だよ?
だって私には目標があった。
世界平和だ。
小さい頃に読んだ歴史書や魔術書から、遠くない未来に世界が滅びることを知ったの。
魔術に疎いお父様やお母様は固より、魔術の師である爺やにまで生暖かい目で見られたけど、私は間違ってない。
今まで平気だったからとか、古いから正しくないとか、そんなの現実を見れないお子様の妄言だもの。
信じて貰えないのは悔しかったけど、それならそれで、私が一人でも頑張らないといけないと思ったの。
だから、王族としての勉強を、真面目に素早く片付けて時間を作り、魔術や神術の勉強を必死にしたわ。
そのお陰で、成人を前に爺やから、大魔術師の称号を貰ったくらいよ。
何百年も前から王都の片隅にある、十階層の迷宮に潜って、世界平和のために研究をしたわ。
そうこうしている内に、お父様が流行り病とかいうので亡くなって、アスフィアが王位を継いだ。
悲しかったけど仕方ない。
国はアスフィアに任せて、私は迷宮に籠り切るようになった。
間も無く、実験の一つが成功して、迷宮の最下層を異世界に繋いで、異世界に出た先の迷宮っぽいところで研究を続けていたら問題が起きたの。
爺やが国宝のヴェルガミンの宝珠を勝手に拝借して、伝説の迷宮を占拠してしまった。
まあ置手紙はあったみたいだから、後でちゃんと返して謝りなさい……くらいに思ったんだけど、何故かその主犯が私ってことになってて、アスフィアが私を国家転覆を目論む国賊として賞金首にしてた。
どういうこと?
居ない人に責任転嫁とか良くないと思うの。
その割りに全然刺客がやって来ない。
きっと伝説の迷宮で爺やに返り討ちに合ってるのね。
そんなこんなで、いつも通り異界で魔神召喚をしてたら、急に全裸の変態男が現れたんで、必死に抵抗したら顔面パンチで気を失ってたってわけ。
…うん、記憶に抜けは無いわね。
私は見聞きしたことを忘れないから間違いない。
「裸にしたのはお前だ」
男が何やら言っているが私は悪く無い。
服ごと魔術を無効化しない方が悪い。
感情も大丈夫っぽいし、身体も異変無し。
やっぱり蘇生なんて無かった。
そもそも、プロポーズしたくせに殺して生き返らせたなんて、与太話が過ぎて、何一つ信じられない。
「手加減を間違えた」
「心を読むな」
顔に出てたみたいだ。
「それで貴方は何?」
男は首を傾げた。
「《永遠》?」
私の頭には何故か《永遠》という単語が浮かび、《婚約者》という言葉が聞こえた。
「違う」
即答した。
「勝ったから俺のもの。生殺与奪は勝者の権利。異論は?」
「後者に異論は無いけど前者にはある。負けたら結婚するなんて一言も言ってない」
世の中、都合が悪くなると約束を反故にする、感情的なバカで溢れているが、私は交わした約束は絶対に守る。
約束を守るというのは、公正ということ。
王族として、人として、魔術師として当たり前のこと。
魔神相手の契約を反故にすればどうなることか、三つの子供でも知っている。
感情的な人間の信用の無さは、詐欺師に匹敵する。
悪魔にも劣るのだ。
「そうだっけ」
「そうよ」
男は納得しかねて、腕を組んで考え込んだ。
「ふむ……では今度は、その条件で戦おう」
「いやよ」
「何故?」
男が然も不思議そうに尋ねる。
「一度負けた相手に同じ条件で賭けるバカなんていないわよ」
ギャンブルをする奴の気持ちなんて、知ってるけど知りたくも無い。
気分で賭ける人間に王族は務まらないのよ。
「ではどうすれば《悠久》の物になってくれる?」
「ならない」
男はまた首を傾げて考え込んだ。
「では代わりに、お前の望みを一つ叶えよう」
「は?」
こいつは何を言っているの?
「対等な契約だ。それなら問題はあるまい」
「あるわよ。…って、ちょっと待って」
私が制止を口にすると、男は素直に口を閉じた。
男が何者かは分からない。
しかし、少なくとも相当な実力を持っている。
その証拠に、男が契約と口にした時、力ある言葉を感じた。
魔術師である私には分かる。
それに話は通じないけど、私に好意を持ってるのも間違いない。
未だ、どうすれば世界を守れるのかは分からないけど、協力者として悪く無い相手かもしれない。
「…本当に何でも叶えてくれるの?」
古今東西、願い事を叶える悪魔の御伽噺は数知れず。
しかし、その全てが嘘と言う訳でも無い。
――魔神との契約。
何でもとはいかないが、人知の及ばぬ願いが叶うことも少なくない。
但し対価は必須。
必ずしも魂を求められるとは限らないけど、傭兵が金銭で命を懸けるように、求める側に不公平なのは必然。
それでも魔神との契約は絶対に破れないから、人間よりよっぽど信頼できる。
斯くいう私も、召喚契約を結んでいる魔神が居る。
相手は命を懸ける訳じゃないけど、それでも安い取引じゃない…。
「ああ、何でもだ」
凄い自信ね。
でも揚げ足は取らないであげる。
だって契約だもの。
願いの数を増やして、対価を踏み倒せばいい?
冗談!
それは願い一つに対価一つという、契約の大前提を無視した愚者の寝言。
そんなことを願えば、願いを増やした時点で契約は終了して、対価を支払う義務が発生する。
増やした願いは契約に縛られないから、相手にそれを叶える義理も義務も無い。
願いを先に叶えてとか、絶対に叶えてとか、対価を後回しにしてとか、そんな条件付けは複数の願いに該当するから論外。
言葉遊びで魔神を翻弄してお得な取引なんて、そんなのはお花畑の脳内にしか存在しないのよ。
「世界を救って」
だから面倒なことは一切言わない。
「漠然とし過ぎている。言葉遊びか?」
男に批難は見られない。
話が通じないなりに、理解しようとしてくれるのは助かる。
「違う。けど私にもよく分からないの」
「知る事が願いか?」
「んなわけあるか。…いや、解決方法が分かるならありかもしれないけど…」
世界の終わりと解決策が証明できるなら、後のことをアスフィア……はバカだから無理だけど、爺やに押し付ければ、私に何かあっても解決してくれるかもしれない。
「ふむ、詳しく」
「とある歴史書と魔術書から知ったの。遠くない未来、この世界が破滅するって」
「間違いかもしれないだろ」
悔しいけど正論だ。
私だって勘違いであって欲しい。
でも誰も理解してくれなくても、私にはそれが事実だと分かってしまった。
理解される程度の天才が羨ましい。
でも。
「貴方も意外と真面目ね。適当に騙せばいいのに」
目の前の男は魔神では無い。
失礼だけど魔神の方が話が通じる。
魔神は姿を変えられるのが多いけど、男が力ある言葉を以て契約を持ち出した以上、偽りの姿なんてことも無い。
だって本物の契約に嘘なんて持ち込んだら、永遠に世界にとっての価値を失うんだもの。
「意外は心外。《彼方》は常に真面目。真面目にお前が欲しい。続けろ」
「はぁー…」
男のブレない態度に、流石に溜め息が出た。
「…まあいいわ。それで空間に関わるっぽいことまで判明したから、そっちの魔術を研究しつつ、書物の解読をしたり、魔神から知識を集めてるとこなの」
なんで予言とか予見とかってああも遠回しな書き方ばかりするのかしら。
解読する方の身にもなって欲しいわ。
「なるほど」
「何が分かったの?」
こいつの言葉が信用できず、自然と目が細くなるのを感じる。
「つまり世界が滅びそうになったら止めるか、お前の妄想が間違っていると証明すればいいんだな?」
「…微妙に合ってるのが腹立つ」
鏡を見たくないくらい、眉毛が寄って口がへの字になるのを感じた。
「しかしそれだと時間が掛かるな。お前が老いてしまう」
意外と紳士的だ。
願いを叶えるまで手を出さないつもりらしい。
「それまで不老不死……なんて話は?」
「人は神にはなれない。変わるとは過去の否定。《永遠》に生きる屍と添い遂げる趣味は無い」
ゾンビなんてこっちだってお断り。
私だって本気で期待したわけじゃないけど、実は吸血鬼なんて話は無かった。
悪魔に蘇生を願って死体を繋ぎ合わせられた男や、永遠の若さを願って永久凍土に眠る女の話は、何も物語の中だけの話では無いのだ。
…それにしても誠実な男。
本当に騙す気が無い。
契約に嘘は持ち込めなくても、真実だけで騙す手段なんて幾らでもある。
だから魔神との取引は常に命懸けなのだ。
「アンデッド以外は無理なの?」
でも好奇心が勝る。
私は自分が理性的だと思ってるけど、こういった感情はどうしても抑え切れない。
「言った通りだ。お前では無くなる。泥水を蒸発させた霧を集めて土を混ぜたところで、元の泥水とは違う。そういうことだ」
「魂が同じでも?」
「魂か…。まあ魂でも、記憶でも、心でも何でも構わない。本人が同じと認識していても別物だ。同じことを考え、同じことを為しても、その本質は似て非なる物。《久遠》に紛い物を侍らせる趣味は無い」
…長い。
じゃなくて、話が噛み合わない理由がやっと分かった。
やっぱり魔神じゃないんだ。
こっちの世界に来るような魔神は、必ず言葉が通じる。
侵略先で、「俺の国の言葉が通じないから蛮族」なんてのは、ガチのキチしか言わないのと同じ。
最低限話の通じる連中しか、召喚に応じないのだ。
恐らく男はウィルハザードの言葉を知らない。
私も魔神の言葉は勉強したけど、遠い異国の言葉を全て話せるわけじゃない。
じゃあどうやって話しているのかと言うと……魔術だと思う。
でも通訳魔術なんてものは存在しない。
辞典も存在しない言語を通訳するなんて、全知全能の神様でも通訳奴隷にしないと不可能。
控えめに言って有り得ない。
だから現実の魔術は、通訳者を見つけて使役する支配魔術か、感情の変化を伝えて当人に理解させる共感魔術。
男が使っているのは多分後者。
だから私の理解が追い付いてきた。
男が人間の姿をしている以上、恐らく同じ世界の遠い国の住人。
同国人でさえ、少し生まれ育った気候が違うだけで体格が変わるのだ。
異世界に人間が居る可能性なんて、砂漠に落とした砂金一粒よりも希少。
もしそうだとしたら、吟遊詩人が好みそうなロマンチックな話だけど、今の私に必要なのはロマンじゃなくて現実。
男の出自では無く実力。
私の目的の力になるか否か。
…だから最も大切なのは信頼。
「なんで私にそこまで拘るの?」
チャンスを失うかもしれないとしても、避けては通れない質問。
誤魔化すという選択肢は無い。
私も大概、面倒臭い性格をしてる。
男は少し躊躇って左右に目を落とした後、私を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「…彼女に似ている」
「どんな人だったの?」
ここまで聞いておいて、今更謝ったり聞かなかったりの方が失礼。
薬は苦くても全部飲まないと飲み損。
こっちは嫌がっても最後まで聞く覚悟が完了してるのよ。
その程度で引くと思ったら大間違い。
貴方も覚悟しなさい。
「…緩やかに波打つ長い黒髪」
「ん?」
私は途中から波打つ長髪だけど銀髪だ。
「豊満な乳房」
私はお母様並に大きい。
宮廷に仕えるメイドたちの大半より大きかった。
胸の大きさは豊かさの象徴。
王族で貧相だとバカにされるから、コルセットで腰を絞り、ドレスと合わせて形の良い胸を育てるのは常識。
でも同じことをやったアスフィアが倍以上大きくて、それが民意の半分以上を占めるなんて、単なる下世話な噂。
私は信じない。
絶対にだ。
「切れ長の蒼い美しい瞳」
私は切れ長だけど翠だ。
自分でも少し目付きが良くないと思うので、その女性には共感できなくもない。
「柔らかく豊かな乳房」
…胸のことはさっき言わなかった?
「なだらかに締まった優雅な曲線を描くお腹」
私はゆったりとした、裾が足元まであるドレスを着てる。
出奔する際、適当に持って来た服の一つだ。
胸元や腕は出てるけど、肩や背中は出ていない。
腰はベルトで締めてるけど、アスフィアに勝っていると密かに自慢の曲線を見せた覚えは無い。
「片方で顔くらいある大きな乳房」
「おい待てこらぁっ!」
気付いたら叫んでいた。
「どうした?」
男が不思議そうに首を傾げた。
「どうしたじゃない! どこが私に似てるってのよ! 髪は銀髪じゃないし、目は翠色じゃないし、おっぱいが顔面サイズって、一体どこのうちの妹よっ!?」
「そう言えばアス…」
バキッ
私の渾身のパンチが男の顔に決まって、最後まで言わせなかった。
お互い座ったままなので力は入らなかったけど、避けなかったのだけは褒めてやる。
「悪かった。だが胸の大きさを除けば、印象はよく似ている」
まだ言うか。
「努力を惜しまず、それを噯にも出さず、公平に考えるのに、自分には厳しく、他人のせいにせず、目的に真っ直ぐで、他人にどう思われても諦めない、でも心の何処かで信じて貰えることを信じている……そんなお前だから惹かれた。何か違ったか?」
「――っ」
胸を打たれた。
強くじゃない。
そっと心臓に手を置かれた。
そんな感覚。
間違っていない。
何一つ間違っていない。
言っていないことまで合っている。
アスフィアや爺やに聞いても返ってくるはずの無い答え。
私だって魔術師の端くれだ。
自慢では無いけど、近隣諸国に私以上の魔術師なんていない。
何かされた訳では無い。
ううん、違う。
理解をされただけ。
それが余りにも合っているから、少しこそばゆい。
似ていると言われて悪い気もしない。
どんな人だったのか想像も出来る。
自ら答えを求めておきながら、「他の女と比較するな」とか、「私は代わりじゃない」なんて言うのは、余りにも傲慢が過ぎるというもの。
その場に居ない女に嫉妬するなど、見苦しいにもほどがある。
チクリッ
…理性はそう言っているけど、胸の奥に刺す痛みは無視できなかった。
「それで、その人は今?」
「死んだ」
男は相変わらず表情も変えず、事も無げに言った。
けど違う。
さっきまでの私なら分からなかった。
でも今、男の中には深い邂逅を感じた。
私がお父様を思い出す時と同じ……ううん、それよりももっと大きな何か。
「…ごめんなさい」
王族は謝らない。
傲慢だからではない。
下々を安心させるためだ。
それは私が躾以外に対して、初めて口にした謝罪の言葉だった。
「寿命だ」
男は小さく首を横に振った。
「生き返らせようとは思わなかったの?」
蘇生の神術は存在する。
使い手も存在する。
命の理に反すると分かっていても、複雑な儀式や触媒が必要だとしても、それでも試したいと思うのが人の性。
しかし確実では無い。
王妃たる母が望んでも、国王たる父は蘇らなかった。
「終わりを否定することは、その過程を変えるに等しい。彼女はそれを望まなかった」
男は再び首を横に振った。
目線が先程よりも少し低い。
チクリッ
胸を刺すような痛みが大きくなる。
羨ましい。
もう自分を誤魔化し切れない。
私は嫉妬している。
目の前の男にそれほど愛されている、もういない女に。
男が視線を上げて、目が合う。
トクンッ
心臓が小さく跳ね上がる。
代償行為……そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
言い訳だ。
恋人の死を尊重する男が、拙い言葉を重ねて求めている。
そこにあるのが、単なる代償行為だとしたら、世の中に一途な想いなんてものは何処にも無い。
トクンッ
胸の奥が疼く。
多分、もう惹かれてる。
言葉は通じないし、感性も違うし、何なら人間かどうかすら怪しい。
でも仕方ないじゃない。
愛しいと思っちゃったんだから。
自分が思ってた以上に俗物なことはショックだけど、それ以上に嬉しくもある。
刺客を送ったアスフィアへの当て付けとか、世界平和のためとかじゃなくて、私にもまだ普通の女の子らしい感情があったんだから。
心の何処かで警告をする自分がいるのは気のせい。
だって私に諦めるなんて言葉は無い。
「優しくしないと許さないわよ」
男に手の甲を差し出す。
「善処する」
男が私の手を取り、ほんの少し強く引き寄せ…。
チュッ
自然に唇が重なる。
朝も夜も分からない異界の迷宮の奥深く、光源の分からない明かりの下、二人の陰が重なるのだった…。




