帰り道
夜。
収録所を出る。
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人通りは少ない。
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神谷と白瀬は並んで歩く。
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いつもなら、
どうでもいい話をする。
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今日は違う。
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二人とも黙っている。
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信号が赤になる。
止まる。
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神谷が口を開く。
「……受けるのか」
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白瀬は少し考える。
「まだ決めてません」
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「そうか」
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また沈黙。
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青になる。
歩き出す。
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しばらくして、
白瀬がぽつりと言う。
「神谷さんは?」
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神谷は苦笑する。
「受けたいよ」
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即答だった。
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「でも」
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言葉が止まる。
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「……お前とやりたくねぇな」
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白瀬が足を止める。
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神谷も止まる。
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夜風だけが通る。
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神谷は笑う。
「変な意味じゃない」
「勝っても、たぶん素直に喜べない」
「負けても、悔しいだけじゃ終われない」
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白瀬は何も言えない。
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神谷は空を見上げる。
「だから、一番面倒くさい相手なんだよ」
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少し笑って、
白瀬を見る。
「……お前」
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白瀬は視線を落とす。
そして小さく言う。
「俺もです」
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神谷が少し驚く。
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「神谷さんじゃなかったら」
「こんなに迷ってません」
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静かになる。
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競争相手。
でも、
隣にいてほしい人。
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その矛盾を、
二人とも初めて認めた。
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神谷は息を吐く。
「じゃあ」
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白瀬を見る。
「受けよう」
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「どっちが受かっても」
「終わりじゃないように」
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白瀬はゆっくりとうなずく。
「はい」
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二人はまた歩き出す。
今度は、
少しだけ歩幅がそろっていた。




