ご指名
収録終了後。
夜。
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スタジオ。
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人はほとんど残っていない。
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神谷は台本を閉じる。
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白瀬は飲みかけのお茶を持っている。
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いつもの光景。
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そのはずだった。
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「二人とも、少しいいか」
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ディレクター。
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珍しく真面目な顔。
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神谷が眉を上げる。
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「なんかやらかしました?」
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「違う」
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即答。
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ディレクターは一枚の資料を机に置く。
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厚い。
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かなり。
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白瀬が見る。
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タイトル。
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見たことがある。
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いや、
知らない人の方が少ない。
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今期最大級。
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話題作。
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アニメ化前から騒がれている作品。
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神谷の表情が変わる。
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初めて。
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「……嘘だろ」
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ディレクター。
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「オーディションの話が来た」
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静か。
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白瀬はまだ分かっていない。
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神谷は資料を見る。
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ページをめくる。
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止まる。
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主役。
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応募条件。
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“一名”
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神谷が顔を上げる。
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ディレクターを見る。
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ディレクターは言う。
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「先方からの指名だ」
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沈黙。
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そして、
次の言葉。
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「神谷と白瀬」
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「二人に受けてほしいらしい」
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空気が止まる。
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白瀬が、
初めて意味を理解する。
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二人。
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でも、
席は一つ。
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神谷も気づく。
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今までとは違う。
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並ぶ話じゃない。
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共存でもない。
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どちらかが選ばれる。
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白瀬は資料を見る。
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神谷も見る。
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誰も何も言わない。
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レオンが遅れて部屋に入る。
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資料を見る。
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一瞬で理解する。
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「……あー」
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苦笑い。
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「始まるね」
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黒崎も入ってくる。
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資料を見る。
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黙る。
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珍しく。
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そして、
小さく言う。
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「これは、負けた方が傷つくな」
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誰も否定できない。
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神谷は資料を閉じる。
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白瀬を見る。
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白瀬も見る。
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初めて。
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本当に初めて。
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同じ場所を見ていた。




