遠くなる
数日後。
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昼。
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白瀬はコンビニにいた。
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飲み物を選ぶ。
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いつものこと。
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何も変わらない。
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はずだった。
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「……あ」
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声。
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小さい。
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でも聞こえた。
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白瀬が振り向く。
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高校生くらい。
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二人組。
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目が合う。
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「やっぱり」
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「本物だ」
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白瀬は少し固まる。
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「あ、どうも」
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ぎこちない。
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二人は嬉しそうに笑う。
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でも、
近づいてこない。
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遠慮。
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気遣い。
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その空気が、
少しだけ寂しい。
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「応援してます」
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それだけ言って、
去っていく。
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白瀬は立ったまま。
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飲み物を持ったまま。
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なんだろう。
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嬉しい。
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でも。
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少し違う。
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帰り道。
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スマホが鳴る。
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神谷。
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『今どこ?』
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『帰り道です』
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『見つかった?』
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白瀬が止まる。
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『なんで知ってるんですか』
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既読。
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すぐ返信。
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『顔に出るタイプだから』
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思わず笑う。
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『別に嫌じゃないです』
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送る。
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少し考えて、
もう一文。
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『でも変な感じです』
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数秒。
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返信。
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『それで正常』
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短い。
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でも、
少し救われる。
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夜。
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収録後。
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神谷が自販機の前にいる。
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白瀬も来る。
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缶コーヒー。
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お茶。
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いつもの。
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「慣れないな」
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神谷。
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「神谷さんもですか」
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「慣れるわけないだろ」
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即答。
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白瀬が少し笑う。
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神谷は缶を開ける。
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「でもさ」
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少しだけ真面目な声。
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「前より話しかけられなくなったやつとかいるだろ」
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白瀬の表情が止まる。
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いる。
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確かに。
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昔は普通だった。
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気軽だった。
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今は、
少し距離がある。
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神谷は続ける。
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「人気ってさ」
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缶を見ながら。
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「人を増やすけど、距離も増やす」
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静か。
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白瀬は答えない。
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答えられない。
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でも、
その言葉は残る。
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ずっと。




