イベント
イベント当日。
朝。
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会場裏。
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スタッフが走っている。
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音。
声。
足音。
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慌ただしい。
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白瀬は、壁際に立っている。
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台本確認。
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いつも通り。
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でも、
少しだけ落ち着かない。
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「緊張してる?」
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レオンが来る。
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白瀬は少し考える。
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「……人、多そうなんで」
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レオンが笑う。
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「他人事だね」
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白瀬は首を傾げる。
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「え?」
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その時。
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扉の向こうから声。
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歓声。
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大きい。
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白瀬が止まる。
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「……え?」
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レオンはスマホを見る。
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「満員だって」
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神谷が横を通る。
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イヤモニを直しながら。
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「すごいな」
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白瀬はまだ理解していない。
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「こんな来るもんなんですか?」
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神谷が少し笑う。
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「お前が思ってるより来る」
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スタッフの声。
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「5分前です!」
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空気が締まる。
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黒崎が来る。
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飲み物片手。
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「顔死んでんな」
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白瀬。
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「いや、普通に怖いです」
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黒崎、笑う。
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「やっと人間っぽいな」
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神谷が吹き出す。
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白瀬は不満そう。
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「ずっと人間ですけど」
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その時。
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再び歓声。
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今度は近い。
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名前が聞こえる。
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「白瀬ー!」
「神谷ー!」
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白瀬の動きが止まる。
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自分の名前。
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現実感がない。
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神谷は、それを見る。
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少しだけ静かに。
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「……やっと聞こえたか」
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白瀬が見る。
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神谷は前を向いたまま。
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「お前、ずっと自覚ないから」
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白瀬は何も言えない。
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スタッフ。
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「お願いします!」
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扉が開く。
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光。
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歓声。
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一気に来る。
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白瀬、一瞬だけ止まる。
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でも。
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神谷が先に歩く。
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迷わず。
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「行くぞ」
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短く。
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白瀬は、小さく息を吐く。
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「……はい」
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歩き出す。
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並んで。
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歓声が大きくなる。
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前とは違う。
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“作品の中”じゃない。
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現実。
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でも。
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二人とも、
まだ少しだけ慣れていない。




