決まってしまった形
スタジオ。
収録前。
――――
空気が、軽い。
――――
いや、正確には違う。
――――
“軽くなってしまっている”。
――――
――――
白瀬がいる。
――――
それが前提になっている。
――――
誰も言わない。
――――
でも、全員が理解している。
――――
――――
「台本、これで最後です」
スタッフが渡す。
――――
神谷は受け取る。
――――
ページをめくる。
――――
――――
違和感はない。
――――
でも、違う。
――――
――――
自分のセリフが、
“説明されている”。
――――
――――
白瀬のセリフが、
“流れを作っている”。
――――
――――
神谷は止まる。
――――
――――
「……これ、もう決まってるじゃないですか」
――――
小さく。
――――
――――
誰も答えない。
――――
――――
ディレクターが言う。
――――
「決めたわけじゃない」
――――
一拍。
――――
「こうなってるだけだ」
――――
――――
沈黙。
――――
――――
レオンが、壁にもたれたまま言う。
――――
「選択ってさ」
――――
「だいたい後付けなんだよね」
――――
――――
神谷が見る。
――――
――――
「もう形があるなら、それは選択じゃない」
――――
――――
――――
黒崎が笑う。
――――
「決まったことに理由つけてるだけ」
――――
――――
――――
神谷は、台本を握る。
――――
――――
「じゃあ俺たちは何してるんですか」
――――
――――
その問いに、
誰もすぐ答えない。
――――
――――
そして収録。
――――
――――
神谷が入る。
――――
完璧。
――――
でも、流れが“作られない”。
――――
――――
白瀬が入る。
――――
一言。
――――
「……来たのか」
――――
――――
その瞬間。
――――
空気が、完成する。
――――
――――
誰かが作ったわけじゃない。
――――
“そうなるようにしかならない”。
――――
――――
ディレクターが止める。
――――
「今のでOK」
――――
即答。
――――
――――
神谷は、笑えない。
――――
――――
自分がいなくても成立する。
――――
でも、
自分がいると歪む。
――――
――――
「……俺、必要なんですか」
――――
――――
誰も否定しない。
――――
――――
その代わり、
白瀬も何も言わない。
――――
――――
ただそこにいる。
――――
――――
それだけで、
全部が決まる。




