選ばれない理由
会議室。
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静か。
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モニターには、白瀬の映像。
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さっきのテイク。
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何度も再生されている。
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「いいよね」
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誰かの声。
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「残る」
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「でもさ」
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間。
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「主役じゃないんだよな」
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白瀬は、部屋の外。
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扉の向こう。
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聞こえる。
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全部。
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「理由は?」
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「強すぎる」
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「強すぎる?」
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「印象が残りすぎる」
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沈黙。
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「作品が食われる」
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白瀬は、目を閉じる。
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食う。
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食われる。
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「でもあれは良かっただろ」
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別の声。
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「良かった。でも危ない」
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「バランスが崩れる」
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バランス。
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またそれ。
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「主役ってさ」
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誰かが言う。
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「中心にいるけど、突出しないことなんだよ」
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白瀬は、ゆっくり目を開ける。
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外。
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廊下。
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レオンがいる。
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壁にもたれている。
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「聞こえてた?」
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白瀬は、少しだけ頷く。
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「……はい」
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レオンは、少しだけ笑う。
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「だろうね」
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軽い。
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でも、
目は笑ってない。
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「で」
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続ける。
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「どう思った?」
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白瀬は、少しだけ考える。
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「……わかんねえです」
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正直。
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レオンは、頷く。
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「正解」
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即答。
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「でもさ」
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少しだけ間。
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「それ、ちょっと嬉しくない?」
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白瀬は、目を細める。
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「……何がですか」
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レオンは、少しだけ壁を見上げる。
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「作品が、君を怖がってる」
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沈黙。
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白瀬は、動かない。
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「主役にしづらい」
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「でも消せない」
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「扱いづらい」
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一つずつ。
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レオンは、言葉を落とす。
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「それってさ」
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一拍。
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「もう“中心”なんだよ」
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白瀬の呼吸が止まる。
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「……でも、選ばれてないです」
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レオンは、すぐに言う。
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「うん」
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「でも選ばれてない理由が、“強すぎるから”なら」
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間。
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「それ、欠点じゃない」
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白瀬は、目を閉じる。
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わからない。
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でも——
少しだけ、
理解してしまう。
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「……めんどくさいですね」
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小さく呟く。
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レオンは笑う。
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「でしょ」
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廊下の向こうで声。
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「次のキャスティングどうする?」
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「保留だな」
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白瀬は、立ち尽くす。
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選ばれていない。
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でも、
消されてもいない。
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レオンが、最後に言う。
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「君はさ」
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一拍。
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「“選ばれない理由”を持ってる側なんだよ」
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白瀬は、何も言えない。
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でも、
それが一番近い気がした。




