揺れ始める評価
スタジオ。
外。
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空気が、少し違う。
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白瀬は、廊下に立っている。
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さっきのテイク。
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その結果が、まだ整理されていない。
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「良かったよ」
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スタッフの一言。
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軽い。
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でも、
軽くない。
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「でもさ」
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別の声。
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「ちょっと怖くない?」
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沈黙。
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白瀬は、何も言わない。
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その言葉だけが、
残る。
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「安定してないよね」
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「でも、残るんだよな」
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「前より記憶に残る」
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「でも作品としては…」
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割れている。
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評価が。
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明確じゃない。
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「……」
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白瀬は、壁にもたれる。
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初めて。
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結果が“揺れている”。
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成功でもない。
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失敗でもない。
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「面白いね」
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声。
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レオン。
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いつの間にか、隣。
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「評価割れてる」
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軽く言う。
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でも、
楽しそう。
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白瀬は、横を見る。
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「……良いんですか、これ」
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レオンは、少しだけ考える。
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「うん」
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即答。
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「むしろ正しい」
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白瀬は、眉をひそめる。
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「正しい?」
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レオンは、少しだけ笑う。
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「全部が揃ってると、終わるでしょ」
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静か。
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白瀬は、何も言えない。
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レオンは続ける。
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「でも今は」
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一拍。
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「気持ち悪いって人もいるし」
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「残るって人もいる」
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混ざっている。
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矛盾している。
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でも——
生きている。
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「……」
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白瀬は、ゆっくり息を吐く。
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「それって、成功なんですか」
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レオンは、少しだけ首を傾ける。
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「知らない」
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即答。
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「でも」
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続ける。
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「死んでない」
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白瀬は、少しだけ目を閉じる。
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死んでない。
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その言葉が、
一番しっくりくる。
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遠くで声。
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「次の企画どうする?」
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「この路線、続ける?」
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判断が揺れている。
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上も。
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現場も。
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白瀬は、立ち上がる。
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「……」
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何も言わず、
歩き出す。
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レオンが、後ろから見る。
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「どこ行くの」
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白瀬は止まらない。
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「……わかんねえです」
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短く。
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レオンは、少しだけ笑う。
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「いいね」
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そのまま、
白瀬は消えるように歩く。
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でも、
足は止まらない。
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“正しいもの”が崩れていく中で。
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初めて、
“生きている評価”が始まっている。




