プロローグ 残る代償
空港。
朝。
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人が多い。
音も多い。
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でも、
どこか遠い。
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白瀬は、立っている。
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スーツケース。
小さめ。
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変わらない。
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周りは、変わっているのに。
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「あれ、白瀬じゃない?」
小さな声。
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すぐに消える。
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でも、
残る。
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「時間、大丈夫か」
マネージャー。
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「……はい」
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短い。
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歩き出す。
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ゲートへ。
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機内。
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静か。
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シートに座る。
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目を閉じる。
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思い出す。
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最終話。
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自分の声。
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残った感覚。
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消えない。
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でも——
増えている。
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期待。
評価。
要求。
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「次も、お願いします」
「前より、もっと」
「同じ“あれ”で」
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――――
同じ?
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「……」
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目を開ける。
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窓の外。
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空。
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広い。
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でも、
逃げ場はない。
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「残る声ってさ」
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黒崎の声。
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『消えねえだけだろ』
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(……あいつなら、どうする)
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「……めんどくさいな」
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小さく呟く。
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でも、
嫌じゃない。
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到着。
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海外。
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空気が違う。
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言葉も違う。
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でも——
視線は同じ。
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「Welcome」
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握手。
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笑顔。
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でも、
目は真剣。
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「We heard about you.」
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知っている。
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“残る声”。
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ここでも。
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スタジオ。
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広い。
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機材。
人。
全部、違う。
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空気が、
重い。
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「This is the main role test.」
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主役テスト。
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また。
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でも——
違う。
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今度は、
最初から、
候補。
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逃げ場はない。
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台本を受け取る。
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開く。
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読む。
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違う。
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構造。
テンポ。
求められているもの。
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全部、
ズレない。
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「……」
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止まる。
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ズラせるか。
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間。
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あの“沈黙”。
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前は、それで残った。
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でも——
ここは、
それを許さない。
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「Ready?」
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声。
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現実に戻る。
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白瀬は、目を閉じる。
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息を吸う。
吐く。
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マイクの前。
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静か。
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「……」
――――
白瀬は、
“何も変えなかった”。
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——それでも。
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空気が、
変わった。
――――
第2章が、
始まる。




