番外編2 最初から、知っていた
夜。
コンビニ前。
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缶コーヒー。
開ける。
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黒崎は、壁にもたれている。
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スマホ。
再生。
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例の最終話。
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流れる。
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神谷の声。
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上手い。
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黒崎は、何も言わない。
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ただ、
聞いてる。
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白瀬の声。
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一瞬。
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黒崎の目が、わずかに細くなる。
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「……やっぱりな」
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小さく笑う。
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巻き戻す。
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もう一回。
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同じところ。
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「……ズレてる」
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間。
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「でも、外してない」
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矛盾。
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でも、
それを言い切る。
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黒崎は、缶を傾ける。
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少しだけ、視線を落とす。
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「普通、怖くてやめるけどな」
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誰もいないのに、
呟く。
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でも——
声は、どこか柔らかい。
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「……やめなかったか」
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少しだけ、笑う。
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懐かしむみたいに。
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足音。
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誰かが近づく。
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ファン。
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気づく。
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「あ、黒崎さん…!」
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少しだけ緊張した声。
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黒崎は、顔を上げる。
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「ん?」
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それだけ。
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でも——
距離が、一瞬で近くなる。
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「いつも見てます!」
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まっすぐな言葉。
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黒崎は、少しだけ考える。
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数秒。
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「……ありがと」
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短い。
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でも、
ちゃんと届く。
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ファンが、少しだけ戸惑う。
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想像より、
軽い。
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でも——
離れない。
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黒崎は、スマホを軽く見せる。
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「今さ」
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少しだけ、角度を変える。
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「これ見てた」
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画面。
白瀬のシーン。
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ファンが、覗く。
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「……ああ」
黒崎、少しだけ笑う。
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「いいだろ、これ」
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断言。
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迷いなし。
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ファンは、一瞬止まる。
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でも、
すぐに頷く。
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「……はい」
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黒崎は、満足そうに頷く。
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「だよな」
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それだけ。
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押さない。
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でも、
離さない。
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少しだけ、間。
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ファンが、思い切って聞く。
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「黒崎さんは…どう思ってるんですか?」
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白瀬のこと。
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黒崎は、少しだけ空を見る。
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夜。
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変わらない。
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でも——
声は、少しだけ落ちる。
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「……最初から」
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間。
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「残ると思ってた」
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シンプル。
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でも、
逃げない。
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ファンの呼吸が、少しだけ変わる。
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「なんでですか?」
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黒崎は、少しだけ笑う。
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「……なんか」
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間。
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「消えなかったから」
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それだけ。
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説明しない。
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でも、
一番伝わる。
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風。
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少しだけ吹く。
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黒崎は、缶を捨てる。
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歩き出す。
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「……あいつさ」
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振り返らない。
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でも、
声だけ残す。
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「主役じゃなくても、主役だから」
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止まらない。
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去る。
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ファンは、動けない。
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言葉が、
残る。
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消えない。
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「……ずる」
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小さく呟く。
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理由は、
わからない。
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でも——
落ちてる。




