仮保管簿の在処
兵士の給与停止まであと六日。
食料購入までは十四日。
立替金の受領証は、兵士給与の欄と一緒に鍵のかかる引き出しへ収められている。契約書の用途欄は給与だけであり、食料や別の支払いへ流す余地はない。
給与資金は守られている。だが、十四日後の食料購入まで守れたわけではなかった。
彼女は昨日写し取った収納記録を広げた。
返送済み・確認待ち。その末尾には、北部への移送記録と同じ系列の番号がある。
旧帳簿庫の棚位置、領主館内の収納控え、火事後の受領記録を並べていくと、番号の先頭だけが書き換えられた収納番号に行き当たった。
「この番号は、使われていない収納場所のものです」
ユリウスが控えを見た。
「場所まで書かれているのか」
「いいえ。箱の冊数と大きさ、それから棚番号の書き換え跡が残っているだけです」
収納控えには、古い帳簿箱が一つ、帳簿庫ではない場所へ移されたとある。受領者欄は空白だった。
しかし箱の冊数は、火事前に別扱いとされた帳簿束の記録と一致する。箱の大きさも、北部へ送られた特別文書一束の受領控えと同じだった。
セラフィーナは、棚番号の上から別の数字が重ね書きされていることに気づいた。
消された数字を、領主館の古い収納図と照らす。使われなくなった収納場所の奥に、その番号だけが残っていた。
「ここなら、火事の後に帳簿束を運んでも、帳簿庫の持ち出しとしては記録されません」
「確かめよう」
二人は閲覧台帳へ目的と時刻を記し、領主館の奥にある使われていない収納場所へ向かった。
扉を開ける前に、ユリウスは台帳の記載をもう一度確認した。
中には古い椅子や壊れた棚が置かれ、帳簿を探す場所には見えなかった。
セラフィーナは収納控えの冊数を思い出し、棚の奥へ目を凝らした。
褪せた布で二重に覆われた箱がある。表には古い備品の帳簿名が書かれていたが、その墨の下から、別の番号の末尾がのぞいていた。
「動かさないでください」
彼女は言った。
ユリウスは頷き、発見場所と時刻、箱の向き、布の重なり方を閲覧台帳へ記した。
セラフィーナは箱の外側を観察する。封の端は一度剥がされ、別の紙で継がれていた。火事で見つかった焦げた手形照合帳と同じ系列の末尾番号が、封の下に残っている。
備品帳簿という表書きの紙だけ、ほかの紙より新しかった。箱の角に残る古い糊の跡は、その下に別の題名が貼られていたことを示している。
隠すなら燃やすだけでよかったはずだ。わざわざ帳簿名を変え、使われない場所へ戻したのは、いつか取り出すつもりだったからかもしれない。
けれど、その目的までは紙の外側から読めない。セラフィーナは推測を台帳へ書かず、確認できた事実だけを記した。
彼女は発見時の状態を紙へ写し、箱の大きさと傷みも記録した。
原本をここから運び出せば、誰かに箱の状態を変えられたと言われるかもしれない。まず新しい封を準備し、写しの作り方と保管先を決めてから正式に開く。
「急いで中を見るより、先に箱がここにあったと残します」
「その判断で進めよう」
ユリウスは管理所へ、収納場所への出入りを記録するよう短い命令を送った。ただし、何が見つかったかは書かない。
人を疑うためではなく、箱が見つかった後に誰が触れたかを曖昧にしないためだった。
セラフィーナは写しを置く場所を二つに分け、開封時には箱の外側と頁の順を別紙へ残すことにした。
帳簿束は火事で失われたのではなかった。
別の帳簿名を与えられ、使われない収納場所の奥へ置かれていた。北部への移送記録と同じ番号、火事前日の別扱い指示、火事後の確認簿が、ようやく一つの箱に結びついた。
ユリウスは、発見を外へ知らせないと決めた。
「内容を照合するまで、知る者を増やさない」
「はい。原本はここにあった状態のまま、守ります」
この箱が残っていたこと自体が、誰かにとっては予定外だったはずだ。だからこそ開く前に、残っていた事実そのものを守らなければならない。それが財務官の役目だった。
午後、彼女は市場使用料の日次帳簿を確認した。
商人の受領証は領地側の控えと一致し、支払い理由も金額も残っている。過去の帳簿が隠されていても、今は支払った側の紙まで消すことはできない。
立替金の受領証も、商人側と領地側に同じ内容で残っている。
今日の記録を守ることが、過去の記録を取り戻す力にもなる。その確かさを、セラフィーナは一枚ずつ確かめた。
夕方、新しい封と閲覧記録の準備が整った。
ユリウスとともに箱を開く直前、セラフィーナは表紙の隙間に挟まれた紙を見つけた。
そこには、担保に付された権利の記録とともに、確認を行った者を記す別紙があると書かれていた。
消されたと思った帳簿は残っていた。そしてその奥には、帳簿を動かした手を示す記録まで眠っていた。




