チェックメイト
名前は、澤井 キク。
プロゲーマーを夢見る高校生。
1つ、僕の記憶で印象深い話がある。
僕は小さいとき友達と上手く行かないときは公園で遊んでくれるお姉ちゃんがいた。
その遊ぶ内容は、チェスだ。
僕は、その人の事を本当の姉のように思ってたし彼女を尊敬してた。
「自分の事を、駒のように思っては駄目よ。どの駒にも当てはまらない唯一無二の存在じゃないと」
「えっ?でもそれは僕たちみたいな駒を動かすっていう?」
「そうじゃないわ、駒を動かされても良いから貴方はただのポーンじゃだめなの」
そんなことをふと思い出した。
彼女は僕が思ってるよりも凄い人だったみたいで、今は世界的に有名なアーティストである。
そんな彼女が、僕に1つ残してくれた言葉がある。
「私は、昔から1人でコマとして踊ってるつもりはないわ。困ったら頼ってね」
「じゃあ、僕は……」
自分がなんて言ったか、覚えていない。
1人で踊る……か。僕はどうなんだろうな?
僕は今もう少しで念願のVRのプロゲーマーチームになるんだ。
今回の内容で実力を示せたら、事務所側がプロチームとして取り扱ってくれるらしい。
「なぁ、キク。本当に俺達で良かったのか?」
「当たり前だろ、そんなことより目の前を見ろ」
「了解リーダー、全力を尽くすよ」
良い友人を持ったものだ。
友人のユウとアケだ。
アケは、真面目で戦場の判断が早い。
ユウはPSが物凄く高い、指示からのアドリブも上手だ。
我らがチーム「Night Core」は負けるつもりなど一切ない。
「よし、始めるよ」
僕は、冷静さを取り乱さないように。
出来るだけの精一杯を尽くすと決めたんだ。
「なぁ、キク。顔色悪いぞ」
「ユウ。平気だ……行くよ」
「了解……」
そこから、試合が始まる。
別のプロチーム志望の人たちがPVPで3vs3を行う。
全体的に、中距離のジョブを取るとキルしにくくなる。
逆に、キル目的のジョブは近距離だ。スナイパーに弱い。
スナイパーに対して、中距離が強い。
さっきから、エナドリを飲んでいるのだが何故かめまいがすごい。
こんな様子じゃ、試合にすらならない可能性がある。
イメージで言うと、無理やり自分を糸で引っ張っているような……
「次は、チームNC!チーム名Night Coreの選手の皆さんは舞台に上がってください」
「キク、休もうよ……」
「行こう、逃げたくないんだ」
相手も、同じくプロチーム志望のメンバーたちだ。
今日のために、練習を積み重ねてきた。
だからこそ、無駄にするなんてもったいない。
「なぁ、そっちのチームリーダーさんは死にそうっすね、こんなん勝ったわ!お疲れ様です」
「別に、ちょっと体調が悪いだけだ」
「知ってるよん、だって俺がお前の飲んでるエナドリ、俺たちが差し入れしたやつだもん」
「何を入れたわけ?ゲーマーとして常識を疑うぞ……」
ユウが、キレているのだろうか?
僕は、体が重すぎて話にならない。
鉛だ、もう今すぐにでも倒れそうな程不安定な鉛である。
「簡単だ、カフェインの量を増やしたんだ。優しさでね」
「もういい、分かったよ。早く終わらせる。アケ。準備しろ」
「ユウ、いくらなんでも落ち着こう?」
「俺は、今物凄く冷静だ。その上で、こいつらは許せない」
集中しないと、そろそろ始まる……
はぁ……僕はなんでこんな……
「えっと……では、そろそろ試合を始めましょう」
試合が始まると同時に、僕は最低限のプレイングをする。
そのプレイが、最低限なのか「最低な」プレイングなのかは目に見えていたけど。
ユウが、中距離メインでアケも中距離をメインにしている。
僕は、遠距離でエイムを合わせるが、ことごとく外していく。
このゲームは復活できないPVP、1人でもやられると人数差が出来て戦場が傾く。
「アケ、向こうはリーダーしか狙わないはずだ。そこを逆手にとって、俺たちはあえて固まって近距離を対策しながら遠距離を確実に倒す」
「了解。ユウ、そっちに1体スナイパー来てる」
「30秒でカタを付ける。」
そんな2人の会話を聴きながら、僕は何も抵抗できずに近距離でやられる。
「1キルしたぞ」
観客席が盛り上がる、こんなの見ていて楽しいのだろうか?
そのわずか、1:30秒後には、こっちのチームが1試合制した。
どうやら、2人できるキルしたようだ。
その後の僕のドブプレイは続き、1試合負けた。
この次のラウンドで勝利した方が、真の勝者なのだろう。
「僕、めっちゃ足引っ張てる。ごめん……」
「仕方ないよ、相手が悪いよ」
そんな時、1つの通知が僕を覚醒させる。
「ポーンは、死ぬ前提で行動する。貴方は?」
僕は、このメッセージの送り手は誰か一瞬で分かった。
だから、僕はようやく長かった眠りから起きた気分だった。
「皆。僕は大丈夫、ちゃんといつも通りの行動で勝てるよ」
そう皆に告げると、僕は1つの弾ごとに愛情をこめてぶつける。
全て、今までの恨みの感情を晴らすように確実に当てていく。
そこへ、僕のチームメイトが中距離で確実なキルへ持っていく。
何か、ふっきれたのか分からないがいつもの倍はエイムが正しかった。
「勝者!チームNight Core!」
僕は、この後の記憶はまるでない。
チームメイトに問い詰めると、死んだように眠っていたそうだ。
後々調べてわかったのだが、カフェインの摂取量が多すぎると睡眠導入剤のようになるそうだ。
でも、僕はそんなことより、久しぶりにあのお姉ちゃんと会える事になっている。
「やっぱ、メールちゃんとした時間に届いてよかった。タイムラグとか怖かったんだよね……」
「そういえば、名前を思い出せないんだ」
「白城 かすみ。もう忘れちゃ駄目よ。未来のクイーンなんだから」
「僕が、キングでもいい?」
「ふふっ、昔と全く一緒の回答をするのね」
夕焼けが赤く光る中、彼女の紫色の瞳は確かに未来を見ていた。
僕と彼女はキングとクイーンだ。でも、どんなに凄い人でもね。
人間である限り、感動するものなんだ。
こうして、僕の涙は太陽の光に照らされながら、あの頃を思い出すように滑り台のてっぺんでハグをした。




