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世界樹は夢を見る  作者: 深月
黒い霧
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ハルによって、3つの魔導具にはそれぞれ名前がつけられた。


霊力を封じる魔導具・・・タリスマン。これは腕輪型になっている。

体内魔力量を測る魔導具・・・モニター。指輪型。

魔力補充用の魔導具・・・MPタンク。MPという明確な数値はないのだけど。


「今回はボクがつけたけど、今後は開発のときに名前も考えてよね・・・

汎用魔法にもちゃんと名前つけてよ?」


「・・・ハル先生、お願いします」


「・・・・・・」


簡単に思い浮かぶならいままでだって命名してたよ・・・?

まぁ、今までの魔法で私が多用してるのは転移門と飛翔、あとは加速と加重くらいのものだ。この辺りは別に名前をつけるまでもないだろう。今後増えた分は・・・善処します、としか言えない。

何はともあれ3つの魔導具は問題なく機能した。霧に突入する数日前からタリスマンを身につけ、MPタンクの数を増やせば霧の中での行動に支障は出ないだろう。




結局、人数分魔導具3点セットを準備するのにおよそ1ヶ月を要した。MPタンクの数を用意するのに時間がかかったのだ。なにせ霊石を作るスピードには限界がある。今まで作ってきた経験から、霊石が割れないギリギリの速度で魔力を原石に充填しているつもりではある。


「目的は大きく分けて2つですね。

1つは”鬼”の封印の確認。

もし解けているようならばここに捜索とできれば討伐が加わります。

もう1つは”病”の捜索、できれば討伐・・・ですね」


ミーティングルームに集まった遠征組を前に、ザルツが作戦の確認を行っていく。あまり長時間タリスマンをつけたままにしておくのも不安があるので、今回は長くても5日間の予定だ。第一目標は”鬼”について、余力があれば”病”の捜索も行う。

もう一人の”幻惑”については今回の作戦には入っていない。恐らくアイゼストにはいないと考えられるからだ。

その根拠は、ミュールに潜入調査を行っていたリッドとサイファの報告である。

曰く、ミュールでは突然議員達が開戦を訴え始め、反対派の者もある日突然に賛成派に変わっていったらしい。そして、王の傍にはいつの間にか妖艶な女性が控えるようになった。その瞳の色が赤かったという話は聞かないが、王はその女性にご執心だったようだ。

私たちはその女性こそが”幻惑”と呼ばれる魔人ではないかと考えている。つまりは戦争そのものが”幻惑”により操られたものだったのではないかということだ。

リッドとサイファのこの報告は勿論アルディアにも届いているらしい。そしてサイファによると、この報告をしたことでヴォイドは降伏を考え始めたのではないか、とのことだった。

操られているのだとしたら、ミュールの民は被害者。ヴォイド王がそう考えたとしてもおかしくはないでしょう、と。


そもそも戦争という物自体、特に今回のような明確な理由がない戦争なんてものでは、実際に戦場に駆り出される兵士たちは一部の上層部の決定に翻弄された被害者であると私は思う。仮に上層部が操られて戦争を始めたのだとすれば、末端の人間は不運としか言いようがない。ヴォイドがそう言った人々を守るために、そしてそんな不運に自国の民が巻き込まれないように降伏という手段を取った可能性は否定できない。

勿論最悪の可能性は、ヴォイドもまた操られているというものなわけだけど。


話が逸れたが、”幻惑”は恐らくミュールか旧アルディアにいると考えている。故に、霧の中の探索では目標は”鬼”と”病”に限定している。


「まずは”鬼”の封印の確認のために北西の遺跡に転移で向かいます。

解けていなければよし、解けている場合はティエラの魔力探知と霊力探知で捜索に向かいます」


「封印が維持されてた場合、その場で”鬼”の討伐をしたほうがいいんじゃない?」


「そこが悩みどころですよねぇ・・・

魔人が魔力を補充する手段を得る前に倒してしまうというのもアリだとは思います。

少なくともギィの魔導具で魔力の充填をし終わるまでは復活していないわけですし、使った霊石の数を考えれば封印が維持されている可能性はそれなりに高いんじゃないかと思いますし。

問題は、霧の中でティエラとハルのコンディションに悪化がないかどうかということですかね」


そこでサイファが小さく手を挙げる。遠征組に今回はリッドとサイファが加わるため、このミーティングにも参加してもらっているのだ。

ザルツがサイファに視線を送り、どうぞ、と促した。


「お言葉ですが、姫様とハル殿以外魔人とは戦わないんですかね?

俺としてはやる気満々なんですが」


リッドとサイファは、直接魔人と対峙したことがない。その強さについても人伝に聞いているだけだ。


魔人が精霊を得ていないならば、リッドとサイファも十分に戦力たりえるだろう。しかし・・・


「正直な感想だけど、魔人が本来の力を発揮できる状況だとするなら、ボクとカナデ以外は身を守ることに専念してほしいね」


「しかしハル殿、我々としては主君を前線に出して自分は隠れていろというのは」


「じゃあついてこないで?」


一刀両断である。だがハルの言い分に理があると思う。それほどに魔力を得た魔人は強力だ。魔法の力だけでなく、その肉体の異常な発達も脅威なのだ。普通の剣士ならばその肉体に阻まれて傷を負わせることも難しいかもしれないのだから。

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