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精霊は宿主の”体のどこか”にいるわけではない。故に精霊だけを封じるというのは難しい。宿主と区別をつけることが難しいのだ。
しかし霊力は別である。
宿主の記憶を糧に精霊が行使する力。それを封じれば魔力の通り道は消えるし、そもそも宿主が持つ力ではないので封じたところで影響は少ない。
故に、魔導具によって霊力を封じるという方法をとることにした。
「どう?」
「そうね、霊力は使えない・・・けど、既にある世界とのつながりを断つのには時間がかかると思うわ」
「すぐには消えない?」
「ええ。霊力でつながりを維持することができないから時間の問題だけどね」
霊力を封じてすぐに閉じてしまうほど、維持コストが高くはないということだろう。となればしばらくこのままこの試作品の魔導具はつけておくことにしよう。
「つながりが断たれたら教えてくれる?」
「お安い御用だわ!」
今回の魔導具づくりではレイが大活躍だ。
サンプルは多いにこしたことはないし、もう一つ試作品を作ってハルにもつけていてもらおう。魔力の供給を完全に断つまでの時間には個人差があるかもしれないし。ハルならば、レイと同様アキが精霊のコンディションについて教えてくれるはずだ。
レイから報せをきいたのはそれから3日後のことだった。これで私への魔力供給は断たれたことになる。はっきり言って実感はない。
ハルもまたアキからつながりを断たれたと報告を受けたようだが、それは2日半ほど経った頃のこと。これは記憶量の違いなのかもしれない。
折角なのでハルと一緒に他の魔導具の試運転をすることにした。
指輪型の魔力メーターを指にはめると、中央の霊石が正常範囲である緑の光を灯す。魔力が増えればより青く、減っていくと赤くなっていくように作ったのだ。
適当な魔法を使ってみる。とはいえここは研究室内。使える魔法は限られる。無駄に室内をふよふよと空中を移動してみたり、ハルと念話してみたり。
一時間ほどそうやって過ごしてみたが、魔力メーターの色に変化はない。
・・・失敗かしら?
ハルの顔を見ると、やはり彼の霊石の色も変わらないようで、困惑した顔で肩を竦めた。
「使用量が少なすぎるのかも?」
「そうだといいんですけど・・・」
室内で使えて魔力消費の多そうな魔法・・・
多分同じように考えたのだろう、ハルは部屋の端から端へと転移門で移動を始めた。空間をねじ曲げているわけだから、浮遊や念話に比べたら必要コストは高いはずだ。
転移門を作っては消し、それを3回ほど繰り返したところでハルの霊石が緑がかった黄色へと変わった。思いの外魔力というのはコスパがいいのかもしれない。まぁ短距離の転移門だからなのかもしれないが。
「もうちょっと手っ取り早く魔力を減らす方法ない?」
うーん。転移でこの程度ならば、外に出て攻撃魔法を使ってもたかが知れているような気がする。いっそ魔力供給の魔導具を先に使って青く変化する様子を観察するべきだろうか。
そこまで考えて、ふと思いついた。
私はもはや私物化した工房部屋(兼資料室)へと移る。ぱぱっと金属を成形し、私とハルがつけている魔導具と同じものをもう一つ作る。まだ試作段階なのであまり悩まず、先の2つと全く同じ機能を付与すると。
「完全に黄色くなりましたね」
「お、ほんとだ。
付与ってそんなに魔力使うの?」
「ええ、一度分不相応な霊石に付与をして気絶したことがありますし」
魔力を一気に吸い上げられるような感覚が、今回は強く感じられた気がした。
「・・・なんだかちょっと気怠いです」
「気絶するほどではないけど、ってこと?」
ハルに頷きを返す。
魔力を大量に使いすぎると気絶することはわかっていた。それについて深く考えたことはなかったが、魔力は生命維持とか身体機能とかに影響を与えているのかも知れない。
「そういえばレイが以前、魔力をずっと得られなければ消えるかもしれない、みたいなことを言っていたような」
「ふぅん・・・
長期間この魔導具を身につけるのは危険ってことか」
恐らく下手に魔法を連発したりしなければ大丈夫なのだろうけど。だって小さな子供は精霊を宿さずに過ごすのだ、精霊を宿すまでの期間に多少は魔導具に触れる機会もあるだろう。特にアルディアでは水道の魔導具が既に普及し始めていたし、しかし小さな子どもに異変があったという話は聞いていない。恐らく元々体にある程度の魔力を保有して生まれてくるのだと思う。それが枯渇するくらい魔力を使ってしまうと、恐らく何らかの影響が出るのだろう。
「魔力補充もしっかり機能してますね。
この魔導具一つで黄色から緑になる分くらいは回復するみたいです。
ついでに体のだるさもなくなりました」
「これで人数分揃えたら霧に突入できるね。
ただその前に」
「その前に?」
「魔導具に名前つけよう」
魔法もそうだが、魔導具もいちいち○○の魔導具、と称するのは確かに面倒くさい。
「じゃあハル、命名お願いします」
簡単に思いつかないから今までも悉く名前をつけていないのだ。
こういうときは丸投げするに限るのだ。




