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世界樹は夢を見る  作者: 深月
黒い霧
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結果として、精霊を宿さない動物は魔物化することはなかった。


卵を孵化させようとか色々準備に悩んだが、そんな悩みは無駄だった。翌日実験の概要を話して意見を聞いたところ、”生物研ならマウスとかいるんじゃないの”という考えてみれば当然のお言葉を頂き、早速生物系の研究室を当たった(ザルツが)。するとなんとまぁ簡単に4匹のサンプルを譲ってもらえたのである。

・・・そりゃ生物を研究しているところならマウスやラットくらいいるよね・・・しかも大量にね・・・

日本でも確か研究用のマウスの供養とか大学でやってたなぁ、とかそんな他愛ないことまで思い出しつつ、サンプルのうち2匹は精霊の泉の水を飲ませ、霊力感知に反応が出たことを確かめて実験に向かったのだった。


さてこの結果を踏まえて、いくつかの仮説が出るわけだが・・・

まず、魔物化のプロセスに精霊の有無は関係ない。けれども霊力は必要。

つまりは魔力の取り込みの原因は霊力にはないけれど、取り込む方法としては精霊を介在している。


つまり?

例えばあの霧によって魔力が枯渇していると錯覚している、とか。

あるいは単純に、体内に魔力を取り込めというシグナルをあの霧が発している、とか。

霊力に影響を及ぼしていない以上、生物の体そのものに作用しているのだと思うのだけど・・・


「うーん・・・どう魔導具化したものか」


思わず独り言が漏れる。

魔物化を防ぐだけなら現時点でも可能だと思うんだ。一時的に霊力を抑え込むとか、魔力の取り込みを完全に絶ってしまうとか。

ただ、問題はその場合、体内に残った魔力だけで魔法を使って活動することになるということだ。探索くらいならそれでもなんとかなるかもしれないが、場合によっては戦闘になるわけで、その時に魔力が足りなくて魔法が使えませんというのでは話にならないのである。最悪それは死に直結するわけだし。

そもそも魔物化とは・・・魔物とはなんなのか?

以前は負の感情に呼応して宿した精霊が変質したもの、そう思っていた。しかし精霊がいない時代にも魔物はいて、あの霧の観察で精霊の変質は魔物化の後にくるということははっきりした。魔力の取り込みの増大・・・ならば、魔物とは許容量を超えて魔力を吸収したもの、ということになるのだろうか。その負荷に耐えかねて肉体も変質し、理性も消え失せる。そう考えるのが自然ではないだろうか。


体内の魔力量の増減をはかる魔導具があれば役に立つかも知れない。それと霊石からそこにこめられた魔力を取り出す魔導具と霊力を抑える魔導具、その3つを併用することでなんとかならないだろうか。

霧の正体が明確になっていない今、1つの魔導具でなんとかしようと思うと行き詰まってしまう。取り敢えずの方向性としてはアリではなかろうか。


そんなコンセプトで、早速魔導具を作り始めた。

魔力量のモニターは魔力感知を応用して付与することで問題なくできた。感知の範囲を所有者の体に限定し、魔力量に応じて色を変える。これはすぐに確認できるように指輪型にした。

魔力タンクとなる、魔力補給用の魔導具も問題ない。これは使用した霊石に再び魔力を充填することで再利用できるようにしたのだが、問題は予備を含めどれくらい容易すべきかがよくわからないということだ。まあ多いに越したことはないだろう。霊石の許す限り作っておくことにする。


あとは肝心の、精霊を介した魔力供給を遮断する魔導具だが・・・


「レイ、精霊がどうやって魔力を受け取ってるのか教えてくれない?」


精霊のことは精霊に聞け、だ。


「どうやって・・・?

ええと、そうね、宿主の記憶を力に変えて、世界とつながりを作るわ!」


「そのつながりから魔力をもらってるんでしょ?」


「そうよ!

でも精霊がしているのはそのつながりを作って、維持することだけね」


つながりがあれば魔力供給は自動、ということか。


「そのつながりを切ることは出来るの?」


「やったことがないからわからないわね!

できそうな気はするけど。

でもあたしやアキにはできても、他の精霊にもできるとは思えないわ」


レイやアキは意思疎通ができるからこうしてお願いすることができるが、具現化していない精霊に人間の声が届いているかどうかわからない。この場合、できないと考えて対処すべきだろう。

しかしその方法が問題だ。精霊を眠らせる、とか?そんなことが可能だろうか。


魔法をかけて精霊に作用するのは恐らく難しくはない。ただ、道具に落とし込むとなると難易度は跳ね上がる。

直接魔法を使う分には術者の想像力、イメージといった補正がかかるが、魔導具は魔法ほど融通がきかないのだ。万人に一定の効果があるものとなると尚更である。

いきなり壁にぶちあたってしまったが、アプローチを変えて地道に試行錯誤するとしますか!

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